Column

家・住宅購入コラム

鉄骨と鉄筋のどっちがいい?違いや特徴、選び方について解説

私たちの住んでいる街には、住宅・マンション・工場・ビルなどさまざまな建築物が多数存在します。時代がすすむにつれて建築技術や建物性能が向上し続け、私たちの快適な生活や社会活動を支えています。

鉄骨や鉄筋を使った建築物は木造よりも頑丈で火に強いとか長持ちするなどと思っている人もいることでしょう。実際に鉄骨や鉄筋は木造よりも償却期間が長く耐用年数も長いです。

以上、鉄骨・鉄筋の違いやそれぞれ適している建築物などについて正しい知識を深めていきましょう。
 

鉄骨・鉄筋の基礎知識

鉄骨と鉄筋は同じ鉄でできているのにどのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、鉄骨と鉄筋の基礎知識について解説します。
 

鉄骨の基礎知識

鉄骨造とはS造(Steel)とも呼ばれ、H型の形状の柱や梁などといった建築物の主要となる部分に使用されており、住宅などに使われる軽量鉄骨造と中高層ビルなどに使われる重量鉄骨造の2種類があります。

なお、鉄骨造には各部材が負担する力を軸方向となるように組むトラス構造と部材接合部(節点)を強剛に接合し、柱や梁などが一体化するように構成されたラーメン構造があります。
 

軽量鉄骨造

軽量鉄骨造は、文字通り軽くて薄い鉄骨で建築された建築物です。

鋼材の厚みが6mm未満と軽量ですので強度は重量鉄骨造にくらべ大きく劣ります。したがって、一般住宅や2階建程度のアパートなどで利用されています。

安価で扱いが比較的容易ですが、遮音性が低く上下階や隣室の音が漏れてしまうのが難点です。
 

重量鉄骨造

重量鉄骨造は、鋼材の厚みが6mm以上の鉄骨を使用し建築された建築物をいいます。

耐震性に優れ大スパンの建物(工場・倉庫等)、高層マンションなどによく利用されています。

転じて、軽量鉄骨造よりもコストが高くついてしまうのが難点です。遮音性については高スペックの吸音材を使用することで担保可能です。
 

鉄筋の基礎知識

H型の形状をしている鉄骨に対し、鉄筋はI型の形状で断面も鉄骨にくらべて小さいです。人体にたとえると、鉄骨が骨で鉄筋が筋肉部分となります。

鉄筋は直径がおおむね10〜30mmほどの棒をいい、コンクリートと鉄筋を組み合わせたのが鉄筋コンクリート造(RC造)です。

また、鉄骨と鉄筋を組み合わせたのが鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)です。鉄骨と鉄筋を組み合わせることで、鉄骨の強さと鉄筋のしなやかさを併せ持ったコンクリートで、耐久性・耐震性は鉄筋コンクリート造(RC造)より優れています。

なお、鉄筋コンクリートには柱や梁を剛に接合した骨組みによって荷重を負担するラーメン構造、板状の壁体が鉛直荷重を支える壁式構造、屋根や壁に薄い曲面板を用いることで、柱や梁のない大屋根や大空間をつくる事ができるシェル構造があります。
 

鉄筋コンクリート

鉄筋はコンクリートと組み合わせることにより、それぞれの欠点を補っています。

鉄筋には以下の性質があります。

 ●引張り力に強い

 ●圧縮力に弱く、座屈を起こす

 ●熱に弱い(500℃で強度半減)

 ●錆びやすい

そして、コンクリートの性能は引張り力に弱い一方で、圧縮力に強いです。また、熱容量が大きく耐火性能が高いことも特徴です。

鉄筋は引張り力に強いのでコンクリートを引張りから守り、コンクリートは圧縮や耐火性能が高いので鉄筋を圧縮や熱などから守っています。

つまり、互いの長所を活かしつつ短所を補い合うのが鉄筋コンクリートの大きな特徴といえるでしょう。
 

 鉄骨鉄筋コンクリート

鉄筋コンクリートの芯部に鉄骨を内蔵した構造を鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)といいます。

上記の構造から鉄筋コンクリートよりさらに耐震性などが強化されているため、さしずめ鉄筋コンクリートの強化版といったところです。

主な特徴は以下のとおりです。

 ●多量の鋼材を配置することで、鉄筋コンクリート造より柱や梁の断面寸法をより小さくできる

 ●鋼材がコンクリートに覆われているため、鉄骨造より座屈耐久力および耐火性能が増している

 ●鉄骨造や鉄筋コンクリート造より変形性能が高く、耐震性能も増している

 ●煩雑な施工内容であり、工期が長くなる傾向にある

 ●建築コストが鉄骨造や鉄筋コンクリート造より割高となる

つまり、建築コストや工期が長くなりますが、頑強な構造の建築物を建築することができます。

 

鉄骨・鉄筋コンクリートのメリットとデメリット

主に高層ビルや工場・倉庫などに使用されている鉄骨・鉄筋コンクリートにはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。これから新築される人はそれぞれのメリットとデメリットをしっかりと把握しておかなければなりません。

以下に鉄骨・鉄筋コンクリート双方のメリットとデメリットを解説します。
 

鉄骨のメリットとデメリット

まずは鉄骨のメリットについて見てみましょう。

 【鉄骨のメリット】

 ●強度が大きいので、部材の断面を小さくできる

 ●引張、曲げ、圧縮いずれの耐力もほぼ同程度

 ●品質が均一で製品ごとの強度のバラつきが少なく、切断や接合等の加工性が良く、寸法精度が高い

 ●変形能力が高い(変形しても破壊しにくい)

 ●接合部分の強度を大きくすることができる(各部材を一体にできる)

 ●間取りの自由度が高い

鉄骨は工場で製造された製品が現場に届きますので、工期が短くできるというメリットもあります。

転じて、鉄骨のデメリットは以下のとおりです。

 【鉄骨のデメリット】

 ●高温になると強度が低下する(500℃で強度半減し、1,000℃で強度0となる)
 ●低温になるともろくなる(変形能力が小さくなり破壊しやすくなる)
 ●圧縮力に対し座屈を起こす
 ●錆に弱く、薬品にもおかされやすい(塗装などの防錆処理が必要となる)

鉄骨造は一見耐火性能が高いと思われるかもしれませんが、熱で強度が低下してしまいますので耐火被覆をしなければ熱から躯体を守ることができません。
 

鉄筋コンクリートのメリットとデメリット

次は鉄筋コンクリートのメリットとデメリットについて解説します。

鉄筋コンクリートのメリットは以下のとおりです。

 【鉄筋コンクリートのメリット】

 ●耐火・耐久性が大きい

 ●遮音性・気密性に優れている

 ●適切な設計施工により、耐震性を高くすることが可能

 ●型枠の造り方でいろいろな形ができるので、設計の自由度が高い

転じて、鉄筋コンクリートのデメリットは以下の点です。

 【鉄筋コンクリートのデメリット】

 ●部材断面が大きくなるので、自重が大きくなる

 ●施工の良否が強度に影響し、工期が長くなる

 ●解体・移築が困難

また、高重量のため地盤の強度も満たしていないと重量に耐えられず地盤沈下してしまいますので、軟弱地盤の場合は地盤補強工事からしなければなりません。
 

鉄骨・鉄筋コンクリートに適している建築物

鉄骨や鉄筋コンクリートでできている建築物は私たちの住んでいる街を見渡すといくらでも目にすることでしょう。ここでは鉄骨・鉄筋コンクリートに適している建築物を以下にそれぞれ解説していきます。
 

鉄骨造に適している建築物

先ほども述べたとおり、鉄骨造は鋼材の厚さが6mm未満の軽量鉄骨造と6mm以上の重量鉄骨造があり、同じ鉄骨でもそれぞれ適している建築物は異なっています。

以下にそれぞれ適している建築物を解説します。
 

軽量鉄骨造に適している建築物

軽量鉄骨造は厚さ6mm未満の鉄骨を使用していることから、以下の建築物に適しています。

 ●一般住宅

 ●アパートなどの共同住宅

 ●プレハブ

工期が鉄筋コンクリート造にくらべ短く、大規模な地盤改良工事も必要としないので建築コストも安価です。アパートなどの共同住宅の家賃相場も木造並みとなっておりますので借りやすいでしょう。
 

重量鉄骨造に適している建築物

重量鉄骨造は厚さ6mm以上の鉄骨を使用し、以下の建築物に適しています。

 ●工場

 ●倉庫

 ●超高層ビル

 ●体育館

重量鉄骨造は柱を少なくすることができるので、広い空間にしたり自由な間取り設計をしたりすることが可能です。耐火被覆や防錆処理を施せばさらに強度を増し、木造建築よりも火災保険料を抑えることもできます。
 

鉄筋コンクリート造に適している建築物

鉄筋コンクリートとは、引張りに強く圧縮に弱い鉄筋と引張りに弱く圧縮に強いコンクリートを組み合わせた構造です。

 ●ビル

 ●高層マンション

 ●学校

なお、鉄筋コンクリート造の建築物は耐火建築物ですので防火地域に指定されている場合、原則として鉄筋コンクリート造の耐火建築物でなければ建築できません。また防火地域のほか、準防火地域に指定されている地域でも条件次第で耐火建築物でなければ建築できません。
 

防火地域と準防火地域とは

少し脱線しますが、防火地域と準防火地域についても大まかに説明します。

建物の構造に関しての集団規定として、防火地域と準防火地域における制限があげられます。

【防火地域】

防火地域で3階以上または延べ面積100㎡を超える場合は耐火建築物でなければ建築できません。

上記以外の場合でも耐火建築物または準耐火建築物でなければならず、木造住宅などの建築はできません。

なお、防火地域の場合、一定の条件を満たしていれば建ぺい率の影響を受けず敷地いっぱいに建築することができます。

【準防火地域】

地階を除く4階以上または延べ面積が1,500㎡を超える場合は耐火建築物でなければ建築できません。

延べ面積が500㎡を超え1,500㎡以下の場合は耐火建築物または準耐火建築物でなければ建築できません。準防火地域にて耐火建築物または準耐火建築物以外の構造の建築物を建築する場合は、延焼のおそれのある部分の外壁や軒裏に防火構造を設けるなどの条件がつきます。
 

鉄骨造・鉄筋コンクリート造の選び方

鉄骨・鉄筋はどのように選べばよいのでしょうか。これまで解説した内容を以下にまとめてみましたので参照ください。
 

鉄骨・鉄筋の違いを比較

鉄骨と鉄筋の違いを下表に比較してみました。

ステータス 軽量鉄骨造 重量鉄骨造 SRC造
用途 住宅など 倉庫・工場など 高層ビルなど
強度 弱い 倉庫・工場など 強い
コスト 安価 やや高価 高価
工期 短い 短い 長い
耐火性能 低い 低い 高い
耐震性能 普通 高い 高い

耐火性能の低い鉄骨造でも耐火被覆をすることにより耐火性能の低さをカバーすることができます。耐震性能については安い軽量鉄骨造であっても現行の建築基準法を遵守し建築されますので、必要最低限の耐震性能は保っていますので心配いりません。

ただし先述したとおり、防火地域のため耐火建築物でなければ建築できない場合は原則として鉄骨造は選ぶことができず鉄筋コンクリート造(SRC造)となってしまいます。 詳細は工事業者と打ち合わせして決めましょう。
 

まとめ

ここまで鉄骨と鉄筋の種類やメリットデメリットなどについて解説してきました。鉄骨造はS造ともいわれ6mm未満の鉄骨で建築された構造は軽量鉄骨造、6mm以上の鉄骨で建築された構造は重量鉄骨造といいます。

住宅やアパートなどによく利用されている軽量鉄骨造はコストが安く工期も短期間で済みますが、強度はやや劣ります。転じて強度が高い重量鉄骨造は大スパンの空間が必要な工場や倉庫などでよく利用されていますが、錆びや熱に弱く防錆処理や耐火被覆が必要です。

対して鉄筋はコンクリートと組み合わせて利用されており引張りに弱いコンクリートを守り、座屈や錆びなどから守ってもらっています。互いのデメリットを補い合っている構造です。

鉄骨と違い、現場での施工となりますので工期は長くなり仕上がりによって強度に影響してきます。

また、防火地域に指定されている場合は原則鉄筋コンクリート造などの耐火建築物でなければ建築することができませんので詳細は工事業者と打ち合わせ時に確認しましょう。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

営業電は0!住宅購入のプロに相談しよう

×

ページの一番上へ