建売住宅の寿命は20年って本当?実は長い建売住宅の寿命!!
建売住宅は注文住宅に比べ質が悪いと思われ、建売住宅の寿命は20年ほどと言われることがあります。
しかし、建売住宅と同じ在来工法の木造家屋で50年以上生活できる住宅もあります。
それにもかかわらず、建売住宅の寿命は短いとされています。
その理由は何故でしょうか。
本記事では、建売住宅の寿命が20年ほどと言われている理由は何か、寿命を延ばすためにはどうしたら良いのか、注文住宅と寿命の差はあるのかなどについて解説します。
建売住宅の寿命が20年くらいと言われる理由
建売住宅の寿命が20年くらいと言われる理由はいくつかあります。
ここからは建売住宅の寿命が20年くらいと言われる理由を3つ紹介していきます。
木造の法定耐用年数
建売住宅の寿命が20年くらいと言われる理由の1つ目は「木造の法定耐用年数」が影響しています。
法定耐用年数とは税法で定められている年数で、税法上建物の価値は何年で無くなるという指標を示したものです。
この法定耐用年数の木造建築物は22年で価値がゼロになると決められています。
そのため、法定耐用年数くらいしか建売住宅の寿命はないと思われ、法定耐用年数である22年くらいと言われるようになりました。
なお、建物の構造により耐用年数は異なります。
構造による法定耐用年数の違いは次のとおりです。
構造による法定耐用年数の違い
構造 | 事業用 | 自己居住用 | |
---|---|---|---|
木造 | 22年 | 33年 | |
鉄骨造 | 骨格材厚 3mm以下 | 19年 | 28年 |
骨格材厚 3mm~4mm | 27年 | 40年 | |
骨格材厚 4mm超え | 34年 | 51年 | |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 47年 | 70年 |
売買の相場
建売住宅の寿命が20年くらいと言われる理由の2つ目は「売買の相場」が影響しています。
建物の不動産相場は古くなるほど相場としての価値が下がっていきます。
木造建築物の場合、20年~30年くらい経過すると建物価値ゼロとして取引することが多くなっていきます。
建物価値ゼロになるということには理由がありますが、築30年近くなってくると不動産購入時に課税される税金の減税措置が受けられなくなることや、日本の中古不動産市場の流通性の低さが大きな理由です。
そのため、不動産相場の価値から見ると木造建築物の寿命は20年~30年ということになります。
ただ、不動産相場は周辺状況や建物のデザイン・質などで決まるため一概には20年~30年で木造建築物の価値が無くなるとは言えません。
必要最低限の建築方法
建売住宅の寿命が20年くらいと言われる理由の3つ目は「必要最低限の建築方法」が影響しています。
建売住宅は建築基準法に定める必要最低限の建築方法で建築されています。
一方、注文住宅は建築基準法の建築方法に加え、ハウスメーカー独自の建築方法を採用しており頑丈な住宅を建築しています。
この差があるため、一般的には建売住宅の寿命は短くなると言われています。
しかし、建売住宅が必要最低限の建築方法で建築されていると言っても、震度7の巨大地震が起きても崩壊せず、震度6や震度5では損傷しないような住宅建築方法です。
そのため、建売住宅の質が低いということはなく、ただ単に注文住宅の質が建売住宅より高いだけの話です。
また、建売住宅と注文住宅では保証の日数が異なることも寿命が短いという話に影響しています。
注文住宅は各ハウスメーカーが長期保証をしており、長い保証で有償点検を続けると60年保証を付けるハウスメーカーがあります。
一方、建売住宅の保証は短いか法律で定める最低限の保証しか付けていないケースがほとんどです。
しかし、保証も品確法という法律で建物の主要構造部分などの保証は10年しなければならないと決められているため、建売住宅の保証内容や期間が決して悪いわけではありません。
実際には寿命を決めるのは難しい
法定耐用年数や不動産相場、建築方法などで建売住宅の寿命がどのくらいなのか見てきましたがいかがでしたでしょうか。
各項目を見る限り建売住宅の寿命の寿命が20年くらいとは言えないことがわかります。
法定耐用年数は22年と良く言われますが、22年なのは事業用であり、居住用の木造は33年です。
このことから法定年数で寿命を測るのはおかしいことがわかります。
不動産相場は築年数の影響を大きく受けますが、その他にも周辺環境や建物のデザイン・質が影響し一概に20年~30年で価値がゼロになるとは限りません。
また、建売住宅と注文住宅との建築方法の差があり、建売住宅は劣っているから寿命が短いとも言われますが建築基準法の建築条件は厳しく、その厳しい条件を守って建築されています。
そのため、建築方法から言っても建売住宅の寿命が短いとは言えません。
それでは建売住宅の寿命はどのくらいなのでしょうか。
これに関しては建物のメンテナンスをしているかどうかが影響してきます。
メンテナンス次第では50年持ちますし、メンテナンスを一切しなければ30年くらいで傷み始める可能性があります。
つまり、建物の寿命を決めるのはメンテナンスをするかどうかということになります。
建売住宅の寿命を延ばすためにはメンテナンスが重要
住宅の寿命を延ばすためには定期的なメンテナンスが必要です。
一般社団法人 住宅性能評価・表示協会によると、次の表のような定期メンテナンスが必要とされています。
なお、このメンテナンス表は災害などで建物が損傷せず、経年変化だけの場合のメンテナンス時期を表しています。
災害などで損傷が発生した場合は、早期にメンテナンスを行う必要があります。
一戸建てのメンテナンス時期の目安
建物部位 | 点検が必要な項目 | メンテナンス時期 | |
---|---|---|---|
屋根 | 瓦ふき | ずれ、はがれ、浮きなど | 20年で全面ふき変え |
外壁 | サイディング | 割れ、欠損、はがれなど | 15年で全面補修 |
雨どい | 破損、つまり、はずれなど | 7年で全面取り替え | |
軒裏 | 軒裏天井 | 腐朽、雨漏り、はがれなど | 15年で全面取り替え |
開口部 | 屋外に面する開口部 | 建具周辺周辺のすき間など | 20年で全面取り替え |
配管設備 |
給水管 | 漏水、赤水など | 20年で全面取り替え |
排水管 | 漏水、つまりなど | 20年で全面取り替え |
各メンテナンスには費用が発生するため、参考にメンテナンスの目安費用を紹介します。
一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会によると一戸建てのメンテナンスは、次の表のとおりの金額が目安とされています。
一戸建てのメンテナンス費用の目安
部位 | メンテナンス |
|||
10年後 | 20年後 | 30年後 | ||
屋根 | スレート | 表面塗装
40~50万円 |
表面塗装
40~50万円 |
葺き替え
100~150万円 |
樋 | ー | 部品交換
30~40万円
|
ー | |
外壁 | サイディング | 表面塗装
60~80万円 |
表面塗装
60~80万円 |
張り替え
200~300万円 |
目地 | 打ち替え
30~40万円 |
打ち替え
30~40万円 |
打ち替え
30~40万円 |
|
バルコニー | 防水パン | 部品交換
5~10万円 |
部品交換
5~10万円 |
本体交換
40~50万円 |
防水シート | 張り替え
15~35万円 |
張り替え
15~35万円 |
張り替え
15~35万円 |
また、ハウスメーカーではよくメンテナンスフリーや30年メンテナンス不要という表示をすることがありますが、基本的にはメンテナンスをすることをおすすめします。
ハウスメーカーの実験では紫外線を照射したり、地震と同様の揺れを発生させる機械などを用いる方法しか取っていないケースがあり、実際に起きた台風や地震、塩害などは考慮していないことがあります。
メンテナンスフリーなどの言葉に左右されないよう、定期的なメンテナンスを行うことが大切です。
注文住宅と建売住宅では寿命の差がある?
メンテナンスさえしっかり行っていれば、注文住宅と建売住宅の寿命の差はほとんどないと言えます。
建物の寿命を決めるのはメンテナンスがかなり大きな影響を与えます。
しかし、建売住宅は注文住宅のように長期保証がなく、基本的に所有者が自らメンテナンス計画を立て、計画に基づいた費用を貯めメンテナンス工事を実施しなければなりません。
メンテナンス計画立案から貯蓄、実行まで行っている人はほぼいないことでしょう。
そのため、メンテナンス不足による結果、建売住宅の寿命のほうが短くなってしまいます。
建売住宅の寿命が注文住宅より短くなると言われるのは、所有者のメンテナンス不足が原因と言えます。
建物のメンテナンスは不動産価値にも影響を与える
建物のメンテナンスをすることは、寿命を延ばすこと以外にも不動産の価値に影響します。
メンテナンスした不動産はリフォームした不動産と同じく、建物価値が上昇します。
また、メンテナンスをして建物寿命が延びた場合は、不動産価値が20年以上経過しても価値が無くなりづらくなります。
また、定期的にメンテナンスをしていれば、インスペクション(住宅診断)を受け、建物に不具合がないことを証明できるようになります。
建築士などのプロが安全な住宅と診断することにより、住宅価格下落を抑えるどころか付加価値を付けることも可能になります。
メンテナンス工事以外にも寿命を延ばす方法がある
建物の定期的なメンテナンスは必須ですが、その他にも建物寿命を延ばす方法があります。
ここからはメンテナンス工事以外で建物寿命を延ばす方法を紹介します。
清掃をする
建物の不具合が起こりやすい場所として、樋と配管があります。
樋は汚泥や落ち葉などで詰まりやすく、詰まった樋はかなり早く不具合が出てきてしまいます。
また、配管も髪の毛や固形物のせいで詰まってしまうことが多くあります。
樋や配管が詰まってしまうと、ひび割れを起こしやすくなり水漏れが発生してしまいます。
水漏れはなかなか発生箇所を特定することができず、水漏れが酷くなった場合には修復困難という状況になることもあります。
そのため、水回りで不具合を起こさないためにも樋や配管の定期的な清掃を行うことが大切です。
定期点検を受ける
建物の定期点検を受けることも建物の寿命を延ばすことにつながります。
建物の不具合は小さいものからどんどん大きくなってしまうケースがあります。
前述した水漏れや、木材の腐食などは初期段階で発見できれば改修工事がしやすいですが、発見が遅れると大規模工事を行わないといけなくなってしまいます。
そのようなことが起きないよう定期点検を行い、小さな不具合のうちに改修工事を行います。
定期点検は建売住宅を建築した会社やリフォーム会社などが行ってくれます。
定期点検には費用が発生しますが、不具合が大きくなってから工事をするより安く済むはずです。
まとめ
建売住宅の寿命は20年くらいと言われることがあります。
しかし、寿命が20年というのは、木造の法定耐用年数が22年であること、建物の築年数が20年以上経過すると不動産の価値が無くなること、必要最低限の方法で建築されいていることから言われるようになったと考えられます。
しかし、これらの話は建物寿命の話に直結しないため、建売住宅の寿命が20年ということはありません。
住宅は建売住宅と注文住宅との差はなく、メンテナンスをしっかり行っているかどうかで寿命が決まります。
メンテナンス計画を立て、メンテナンスを定期的に行っていれば、50年以上住宅として使用できることもあります。
建物寿命を気にするのであれば、メンテナンスを適切に行っていくことで寿命は延びていきます。
住宅メンテナンスには大きな金額が必要になるため、住宅を購入してからメンテナンス費用を毎月積み立てるなどを行っていくようにしましょう。
ブログ:
皆の笑顔に我が笑顔あり
徳本 友一郎
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- 所属会社のWEBSITE:
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- 保有資格:
- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書:
- 初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント
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