家を建てるのは年収いくらから?住宅ローン借入金額の決め方とコストダウンのコツ
「人生の3大支出」と言われる大きな支出のうち、住宅購入にかかる費用は特に高額です。そのため、「マイホームを持つことは夢だけど、自分の収入でも建てられるのだろうか?」と不安に感じている人も少なくありません。
しかし、そのような不安を感じながらも、毎年多くの人が理想のマイホームを手に入れています。家を建てるときのお金に関する不安は、住宅ローンをいくら借りるのか・返済金額をいくらに設定するのか・住宅取得費をどのように抑えるかなど、さまざまなポイントを慎重に検討していくことで、少しずつ解消していくことが可能です。
本記事ではこれまで家を建てた人のデータをもとに、マイホームを購入するにあたってのお金の不安を解消するコツを解説します。
1.年収いくらから家を建てられる?
まずは注文住宅を建てた人の年収と、注文住宅を建てるためにはいくら必要なのかを、住宅ローン【フラット35】を提供する、住宅金融支援機構が公開しているデータをもとに解説していきます。
1)家を建てた人の平均世帯年収
住宅金融支援機構によると、2021年度に新築の戸建てを取得した家庭の世帯年収の平均を、下記のとおり発表しています。
年収区分 | 注文住宅 | 土地付き注文住宅 |
400万円未満 | 22.20% | 12.40% |
400万円以上600万円未満 | 40.70% | 43.70% |
600万円以上800万円未満 | 20.70% | 24.30% |
800万円以上1000万円未満 | 8.40% | 10.90% |
1000万円以上1200万円未満 | 3.50% | 4.30% |
1200万円以上 | 4.50% | 4.50% |
(住宅金融支援機構『2021年度フラット35利用者調査』p.9 Ⅰ調査結果の概要 4-2最多年収(融資区分別)より抜粋https://www.jhf.go.jp/files/400361622.pdf)
注文住宅を購入した家庭の世帯年収の全国平均は602万円、土地付き注文住宅の場合で639万円です。
上記の数字からわかるように、年収600万円未満の世帯が半数以上を占めており、また注文住宅に関しては、5世帯中1世帯は年収400万円未満という結果になっています。
注文住宅は高価で、年収が高くないと手が届かないというイメージを持っている人も少なくないでしょうが、年収400万円程度であってもマイホームを建てることは不可能ではないことがわかります。
2)注文住宅を建てるためにいくら必要?
次に、注文住宅を建てるためには、どれくらいの資金を用意する必要があるかも見ておきましょう
2021年度における住宅取得のための資金と、フラット35を利用した融資金の全国平均は下記のとおりです。
項目 | 注文住宅 | 土地付き注文住宅 |
建設費 | 3,569.7万円 | 3,010.6万円 |
土地取得費 | 2.7万円 | 1,444.9万円 |
住宅取得費
(建設費+土地取得費) |
3,572.4万円 | 4,455.5万円 |
融資金 | 2,874.4万円 | 3,840.6万円 |
融資金の住宅取得費に占める割合 | 80.5% | 86.2% |
(参照:住宅金融支援機構『2021年度フラット35利用者調査』p.10 Ⅰ調査結果の概要 5-1所要資金(注文住宅・土地付き注文住宅)、p.26・p.27主要指標https://www.jhf.go.jp/files/400361622.pdf)
住宅ローンを利用してマイホームの購入資金を確保する場合、住宅取得費用は注文住宅の場合で約3,600万円、土地付き注文住宅の場合で約4,500万円が全国平均ということがわかります。
住宅取得費のうち、住宅ローンによる融資が80〜85%程度におさまっているのは、住宅購入時に頭金を手持ち金から準備するケースが多いためです。頭金が多いほど住宅ローンでの借入金額が少なくなりますが、近年では頭金を準備せず、住宅取得費の100%を住宅ローンでまかなうケースもあります。
3)家を建てるなら年収400万円が目安
では、平均的な注文住宅を建てようとした場合に、目安となる世帯年収はいくらになるのでしょうか。
住宅金融支援機構の【フラット35】では、年収・金利・返済期間を入力することで、借入金額をシミュレーションできるページを公開されています。
これを利用して、年収ごとの借入可能額を計算すると下記のようになります。
年収 | 借入可能額 |
300万円 | 2,433万円 |
400万円 | 3,786万円 |
500万円 | 4,732万円 |
600万円 | 5,679万円 |
700万円 | 6,625万円 |
800万円 | 7,572万円 |
※固定金利1.54%(融資率90%以下)、元利均等、35年返済(2022年11月時点)
2)で解説したとおり、平均的な注文住宅を建てる場合の住宅取得費用は約3,600万円。つまり、年収400万円程度あれば家が建つということになります。
なお、1本の住宅ローンにおける借入可能額の条件は、金融機関ごとに定められています。今回計算に使用した【フラット35】の場合は借入上限額8,000万円、民間の金融機関の場合は、借入上限額1億円としているところもあります。
【フラット35】での借入可能額をより詳細に計算したい場合は、下記のサイトをご利用ください。
【フラット35】ローンシミュレーション『年収から借入可能額を計算』 https://www.flat35.com/simulation/simu_03_2.html |
2.借りられる金額=返済できる金額ではない
上記では、住宅ローンで借り入れられる金額の上限額を算出しましたが、ここで注意したいのが「借り入れられる金額=返済できる金額ではない」ということです。
ローンの返済プランを考える際に必ず考慮しなくてはいけないのが「返済負担率」です。
「返済負担率」とは、年収に占めるローン返済の割合のことを指します。返済負担率を考える際の「ローン」には、住宅ローンのほかにも自動車ローンや教育ローンなどを全て含みます。
住宅金融支援機構のデータによると、住宅ローンを組んでいる人の返済負担率は下記のようになっています。
返済負担率 | 割合 |
10%未満 | 4.5% |
10%以上15%未満 | 10.9% |
15%以上20%未満 | 19.2% |
20%以上25%未満 | 23.3% |
25%以上30%未満 | 28.2% |
30%以上 | 13.9% |
(住宅金融支援機構『2021年度フラット35利用者調査』p.18 Ⅰ調査結果の概要 7-1総返済負担率(時系列・全体)より抜粋https://www.jhf.go.jp/files/400361622.pdf)
住宅ローンを組む場合、一般的には返済負担率を20〜25%までにおさめると、無理なく完済できるとされています。
実際上記の表を見てわかるとおり、2021年度にフラット35で借入を行った人の半数以上が、25%以下の返済負担率で住宅ローンの融資を受けており、返済負担率の全国平均は22.7%となっています。
また、マイホームを購入する時には、建物の購入費や土地代、住宅ローンの手数料などに意識が向きがちですが、住宅購入後もランニングコストがかかるということも忘れてはいけません。戸建ての場合は毎年かかる固定資産税・都市計画税のほか、建物の定期点検やメンテナンスにかかる費用も自分で準備しておかなくてはなりません。定期的にまとまった出費が発生することを考慮しても、単に年収をもとにシミュレーションした借入可能額の上限ではなく、返済負担率を抑えた借入を検討することが大切です。
3.年収に不安があっても家を建てるコツ
高価な買い物というイメージの強い注文住宅ですが、工夫次第では建築費用を抑えることも難しくありません。
家の間取りや仕様を考える段階だけでなく、利用できる補助金制度や税金の優遇制度もあり、「マイホームが欲しい」と思ったタイミングで調べておくとスムーズです。
1)シンプルな間取りにする
注文住宅の建築費用を抑えるためには、できるだけシンプルな間取りにすることをおすすめします。
1階と2階の面積が違う家や、凹凸の多い家、室内に間仕切りが多い家は、建てるために多くの建材が必要になるため、建築費用がアップする傾向にあります。
家づくりのなかでも、基礎・外壁・屋根といった基本構造は特にお金がかかる部分のため、使用する建材を減らし、設置工程をシンプルにするだけでも、大幅なコストカットになります。
2)ローコスト住宅を検討する
各ハウスメーカーでは、一般的な注文住宅よりも安い価格帯で建てられるプランを用意している場合があります。このようなプランで建てられる住宅を「ローコスト住宅」と呼びます。
一般的な注文住宅の場合、建築費用だけでも3,000万円近くかかるということは解説したとおりですが、ローコスト住宅の場合は1,000万円台で家が建つことを売りにしているハウスメーカーがほとんどです。
これほど安く家が建つとなると、耐震性に不安を感じる人もいるかもしれません。しかし、一般的な注文住宅同様、ローコスト住宅も現在の建築基準法が定める耐震性を満たすよう設計・建築されるため、ローコスト住宅だからといって地震に弱いというわけではありません。ただし、あくまでも最低限の耐震性を満たしているにすぎず、高い耐震性能を持つほかの注文住宅と比較してしまうと、不安を感じる場合もあるかもしれません。
また、ローコスト住宅で家を建てる場合は、ハウスメーカーがあらかじめ準備した標準仕様の間取りやデザインのなかから選ぶため、自由の高さという観点では物足りなさがあるでしょう。設備や仕様をグレードの高いものに変更したり、オプションを追加したりすることで、理想の住まいに近づけることは可能ですが、あれもこれもと追加してしまうと、結局は自由設計の注文住宅と変わらない価格になってしまう可能性がある点には注意が必要です。
3)補助金制度を活用する
新しく家を購入する際、国や自治体が用意している補助金制度や減税制度を活用できる場合があります。条件によっては100万円近くの恩恵を受けられる可能性もあるため、家を建てる予定のある人は必ず知っておきましょう。
2022年11月時点で利用できる補助金制度・減税制度については、次の章で詳しく解説します。
4.家を建てる際に活用できる補助金制度・減税制度
年収に不安はあるけどマイホームは欲しいという人は、住宅購入時に活用できる補助金制度や減税制度も必ずチェックしておきましょう。
ここでは特に知っておきたい3つの制度について解説します。
1)こどもみらい住宅支援事業
子育て世帯や若者夫婦世帯が家を建てる際に活用したいのが、「こどもみらい住宅支援事業」です。
「こどもみらい住宅支援事業」は、国土交通省主体のもとで2022年に本格始動した補助金制度で、子育て世帯・若者夫婦世帯のマイホーム購入支援と、2050年のカーボンニュートラル実現を目的としています。
本事業で補助金を受けられる主な条件を下記にまとめました。
対象となる人 | ・子育て世帯
・若者夫婦世帯 |
対象となる住宅 | ・ZEH住宅
・高い省エネ性能を有する住宅 (認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・性能向上計画認定住宅) |
補助金 | 60万~最大100万円(住宅の性能による) |
契約期限 | 2023年3月31日までに工事請負契約または売買契約を締結 |
交付申請期限 | 2023年3月31日 |
引渡し・入居時期 | 2023年5月31日までに引渡し・入居 |
※2022年11月時点
なお、本事業の補助金交付申請期限は2023年3月31日とされていますが、補助金申請額が国土交通省の予算上限に達した時点で、交付申請・交付申請の予約の受付は終了となります。
家を建てることを検討しており、本制度への申請を予定している人は、早めに行動することをおすすめします。
事業概要や詳細な申請方法などは、下記の公式ホームページにてご確認ください。
こどもみらい住宅支援事業 https://kodomo-mirai.mlit.go.jp/new-house/?tab=1 |
2)地域型住宅グリーン化事業
「地域型住宅グリーン化事業」とは、長期優良住宅や低炭素住宅をはじめとする、優れた省エネ性能・耐久性の木造住宅を対象とした補助金制度です。本事業で補助金を受けるのは、国土交通省の採択を受けた木造住宅関連事業者の「グループ」で、条件を満たす木造住宅を手掛ける際に、発注者(住宅取得者)が間接的に恩恵を受けられるという仕組みになっています。
地域型住宅グリーン化事業では、住宅のタイプ別に補助金の上限額が異なります。
対象の住宅のタイプ | 補助額上限 |
認定長期優良住宅 | 140万円/戸 |
ZEH住宅 | 140万円/戸 |
認定低炭素住宅 | 90万円/戸 |
(地域型住宅グリーン化事業グループ募集要項【令和4年度】より抜粋 http://chiiki-grn.jp/home/application/tabid/287/index.php)
また、条件次第では補助金額が上乗せされる場合もあります。詳細は地域型住宅グリーン化事業の公式ページを確認してください。
地域型住宅グリーン化事業(評価)
http://chiiki-grn.jp/ |
3)住宅ローン控除(住宅ローン減税)
一定の基準を満たす家を建てる際に住宅ローンを利用する場合、住宅ローン控除という減税措置を受けられます。
「住宅ローン控除」は、年末の住宅ローン残高の0.7%にあたる金額が、新築の場合で最大13年の間、所得税等から控除されるというものです。
対象となる新築住宅の種類と控除額は下記のとおりです。
住宅の種類・性能 | 借入限度額 | 年間最大控除額 | |
2022年
・2023年入居 |
2024年
・2025年入居 |
||
長期優良住宅
低炭素住宅 |
5,000万円 | 4,500万円 | 35万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | 31.5万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | 28万円 |
住宅ローン控除を受けるためには、ほかにもいくつか満たすべき要件があります。詳しくは国土交通省のホームページをご確認ください。
国土交通省『住宅ローン減税』
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000017.html |
年収400万円でも家は建つ!まずは不動産会社に相談しよう
人生で最も大きな買い物と言われるマイホーム。もっと収入が上がってからでないと建てられないと考えている人も多いかもしれませんが、自分の年収に不安を感じながらも、大きな一歩を踏み出した人はたくさんいます。
家を建てる際に大切なのは、現在の自分のライフスタイルや収支、将来的に発生する出費を考慮して、いくらであれば無理なく返済を続けられるかを考えることです。
注文住宅を扱っている不動産会社のなかには、依頼主にあった住宅ローンを紹介してくれるだけでなく、ライフプランの作成や返済プランの提案をしてくれる、ファイナンシャルプランナーが在籍する業者もあります。
建築コストを抑える工夫をしたり、補助金制度・減税制度を活用したりしながら、賢くマイホームを立てましょう。
ブログ:
皆の笑顔に我が笑顔あり
徳本 友一郎
- 所属会社:
- 株式会社スタイルシステム
- 所属会社のWEBSITE:
- http://www.style-system.net
- 保有資格:
- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書:
- 初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント
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