家を建てるときの基礎知識!かかる期間と完成までの流れを知ろう
これから家を建てようと考えている人にとって、どのような流れで、どれくらいの期間でマイホームが完成するかは、気になるポイントではないでしょうか。
家の完成時期がわからないと、現在住んでいる家をいつ引き払ったらいいのか、役所関係の手続きをいつごろする必要があるのかなど、スケジュールを立てられず、引越しギリギリになってから、焦って準備することになってしまいます。
スムーズに家づくりを進めるために、押さえておきたいポイントを解説します。
1.注文住宅が完成するまでの平均期間
家のプランを立て始めてから完成までには、8〜15ヶ月ほどかかるのが一般的です。
注文住宅の場合は家の間取りや設備だけでなく、家を建てるための土地探しや住宅ローンの契約なども、自分たちで進める必要があります。
そのため、マイホームの取得方法のなかでも特に長い期間がかかります。
2.家を建てる流れと必要な期間
注文住宅を建てる際、下記のような手順で進めていきます。
1)家を建てるための事前準備
2)土地の契約
3)住宅プランの決定
4)建築工事
5)完成立会い・引き渡し
それぞれどれくらいの期間が必要かもあわせて見ていきましょう。
1)家を建てるための事前準備(1ヶ月~6ヶ月)
家を建てるためには、理想のマイホームの予算やイメージを決めたうえで、建築を依頼するハウスメーカーや工務店を探すところから始めます。
(1)家を建てるための予算を決める
どんな家を建てたいのかをイメージする前に、マイホームづくりにどれくらいの予算をかけられるのかを、シミュレーションしておく必要があります。
家を建てる際には、多くの人が住宅ローンを利用して住宅資金を調達します。ところが、住宅ローンは返済期間が長期にわたることもあり、あらかじめ入念な返済計画を立てておかなくては、返済不能に陥ってしまう可能性も否定できません。
今の手持ち資金がどれほどあるのか、現在の収入はいくらあるのか、大きな出費の予定はあるかを確認し、毎月いくらであれば無理なく返済できるのかを計算しましょう。
自分で資金計画表を作成してもいいですが、お金のプロであるファイナンシャルプランナーに相談し、第三者視点からライフプランを作成してもらうのもひとつの手です。
(2)建てたい家をイメージする
家を建てるために使える予算がわかったら、建てたい家をイメージしていきます。
住宅メーカーのホームページやカタログを見たり、住宅雑誌を読んでみたりと、どんな間取りにしたいか、どんな設備を導入したいかを大まかに決めていきます。
また、モデルハウスやホームギャラリーを見学するのもおすすめです。部屋の数や広さを決めたり、生活動線をイメージしたりする参考になります。
(3)ハウスメーカーを比較・決定する
建てたい家をイメージするのとあわせて、設計や建築を依頼するハウスメーカーを比較検討します。
さまざまなモデルルームやホームギャラリーを回っていると、理想とする間取りに近い家が見つかったり、使いたい設備や機能に出会ったりすることがあります。気になる仕様があった際には、実際に取り入れる場合どれくらいの費用がかかるかを、ハウスメーカーの担当者に聞いておくのもおすすめ。
最初のうちはできるだけ多くのハウスメーカーを比較し、こだわりのポイントや、ほかの業者にはない個性などを見比べてみましょう。
そのなかで、最初に決めた予算内で希望の家が建ちそうなハウスメーカーや、自分たちが不安に思っていること・疑問に思っていることに真摯に対応してくれる担当者を見極めて、最終的に家づくりを依頼する業者を決めます。
(4)土地探し
家を建てる過程で、多くの期間が必要になるステップのひとつに「土地探し」があります。
建物の場合は、リフォームしたり設備を追加したりすることで、住み心地や利便性を高めることが可能ですが、土地は一度決めてしまうと動かせないため、慎重に決める必要があります。
生活必需品を購入するためのスーパーやコンビニ、病院や役所といった公共施設があるかどうかのほかに、子供がいる家庭の場合は、学校や図書館といった教育施設からの距離も見ておくといいでしょう。
土地は「探せば必ず理想の場所が見つかる」というわけでもなく、タイミングに左右される部分が大いにあります。土地探しに半年以上かける人も少なくなく、希望条件やこだわりの強さによっては、決定するまでに数年かかることもあるという点には注意が必要です。
注文住宅を建てる場合、自分で土地を探したのちに、ハウスメーカーに家づくりを依頼するのが一般的です。しかし、なかには土地探しからサポートしてくれる不動産会社もあるため、自分で探すことに不安がある場合は利用してみることをおすすめします。
2)土地の契約(1週間~1ヶ月)
希望条件に近い立地・広さの土地が見つかったら、土地を購入します。
土地を購入する前に必ずやっておきたいのが、ハウスメーカーや建築士に現場を確認してもらうということです。
その理由は、土地によって建てられる住居に制限がある場合や、土地の形状によっては希望の家が建てられない場合があるためです。
気に入った土地が見つかったら、ハウスメーカーの担当者に依頼して、検討中のプランをもとにした、現地調査と見積書の作成をしてもらいます。
場合によっては、家を建てるための土地改良工事や、水道管・ガス管の引込工事が必要になる場合も。そうすると、当初予定していた予算を大幅にオーバーしてしまうことになるため注意しましょう。
また、家の建築費用だけでなく、土地の購入費用も住宅ローンでまかなう予定であれば、あらかじめ金融機関に相談しておくことをおすすめします。住宅ローンの融資は、建物の引き渡しと同時に行われるのが一般的ですが、金融機関によっては実行条件が異なる場合もあるためです。
3)住宅プランの決定(1ヶ月~6ヶ月)
土地の購入と同時に、最終的にどのような家を建てるかを決めていきましょう。
(1)間取りの決定
注文住宅の間取りを決める際は、部屋の数や広さ・配置以外にも、購入する土地に対してどの向きに家を建てるのかも考慮することが重要です。
理想とする住まいのイメージによって、日当たりをどう活用するか、玄関をどの向きに配置するか、駐車場の広さや向きはどうするかなどが変わってきます。希望をハウスメーカーの担当者に伝え、少しずつ調整しながら、最終的な住宅プランを決定しましょう。
(2)設備や仕様を決定する
間取りが決まってきたら、窓やコンセント・証明はどこにいくつ欲しいのか、キッチンやトイレはどの仕様にするのかなど、設備と仕様の打ち合わせがあります。
モデルルームやメーカーのショールームに展示されているものであれば、実際に触りながら、設備の特徴や使い方の説明を受けておきましょう。建物の外壁の色や屋根の素材、壁紙などを決めるのもこのタイミングです。
家の個性が出る部分であり、生活の利便性にもかかわるため、平均的には決定するまでに2ヵ月〜3ヶ月程度かかりますが、家の規模やこだわりによっては、さらに期間が必要になるケースもあります。
当初想定していた予算をオーバーしてしまうことも少なくないため、見積書をもらっておくと安心です。
(3)住宅ローンの事前審査申し込み
設備や仕様が決定し、家を建てるために必要な費用の見積もりが出たら、住宅ローンの「事前審査」に申し込みます。
住宅ローンは「事前審査」と「本審査」の2段階で構成されており、事前審査は工事請負契約前、本審査は契約後に申し込むものです。
事前審査では、申込者に十分な支払い能力があるかを確認します。審査内容や審査基準は金融機関によっても異なりますが、ローン申込者の年収や職業、建築予定の物件の資産価値などを総合的に判断して、将来的に返済不能に陥る可能性がないかが判断対象です。
本審査と比較すると提出書類が少なく、申込書に記載する内容も自己申告の部分も多いですが、事実と異なる申告をしてしまうと、のちの本審査で審査落ちする確率が高まるため注意が必要です。
事前審査に要する期間は3日〜1週間程度。近年ではインターネット上で、即日結果を受け取れる住宅ローン商品もあります。
(4)工事請負契約の締結
住宅ローンの事前審査通過後に、施工会社と工事請負契約を締結します。
契約時には多くの書類を取り交わすほか、依頼主が事前に準備しておく書類もあります。スムーズに契約手続きが完了するように、早めに取得しておくことをおすすめします。
(5)住宅ローンの本審査申込・ローン契約
工事請負契約書の締結が完了後に、住宅ローンの本審査へと進みます。
本審査は金融機関の本部と信用保証会社が行うもので、事前審査の内容をもとに、さらに厳しく申込者の支払能力を確認します。
厳しい審査が行われるぶん、提出書類も多いのが本審査の特徴。申込者の源泉徴収票や課税証明書などに加え、工事請負契約書をはじめとする物件に関する書類もそろえなくてはなりません。
本審査にかかる期間は1週間〜2週間程度。ただし、信用保証会社による審査は、審査書類がすべて揃うまで始まらないことがほとんどです。提出書類に不備があると、審査に1ヶ月以上かかるケースもあります。審査が完了しないと建築工事も着工できないため、必要な書類はあらかじめ入念に確認しておくことをおすすめします。
4)建築工事(3ヶ月~6ヶ月)
工事請負契約・住宅ローン審査が無事に完了したら、いよいよ家の建築工事が開始されます。
建築工事中に施工現場に足を運ぶことで、完成後に入居するマイホームが作られる過程を実際に見られます。特に建物の耐久性に大きくかかわる基礎・柱・梁の部分がしっかりと作られているかを、目で見て確かめるだけでも、これから建つマイホームへの安心感は高まるためおすすめです。
なお、工事中は騒音が出たり、人や車が多く出入りしたりするため、工事が開始される前に近隣住民に挨拶に行っておくと安心です。
5)完成立会い・引渡し
マイホームが完成したら、引渡し前に「完成立会い」を行います。
完成立会いとは、現場監督から完成した住宅に関しての説明を受けることを言います。玄関や浴室、台所に設置した設備を入居してすぐに使用できるように、大まかな使用方法や注意点について確認しておきましょう。
また、予定どおりに工事されているか、傷や汚れがないかといった「施主検査」をするのも、完成立会いの目的です。注文住宅は引き渡しが完了した時点で、管理者が住宅メーカーから施主(依頼主)に移ります。つまり、傷や汚れ・不具合に気付いたのが引き渡し後だった場合、その補修や修繕の費用を依頼主自身が負担しなくてはならなくなるということです。
施主検査では多くのポイントを確認する必要がありますが、引き渡し後のトラブルや負担をなくすためにも、チェック項目を事前に調べておくことが大切です。
完成立会いも問題なく終了したら、物件の鍵を受け取って、引き渡し完了になります。住宅ローンの融資実行も、引き渡しと同時に行われます。
引き渡しの際にはアフターメンテナンスの内容・連絡先を聞くのを忘れないようにしましょう。
3.スムーズに家を建てるポイント3選
すでに解説したとおり、注文住宅で家づくりをする場合、平均で8〜15ヶ月という長い期間がかかります。しかしこれはあくまでも平均で、土地探しや業者の選定、プランの決定や住宅ローン審査など、それぞれの段階をスムーズかつ計画的に進めていかなくては、想定以上に期間がかかってしまうことも考えられます。
ここでは家づくりをスムーズに進めるために、押さえておきたいポイント3選を紹介します。
1)土地探しは期限を決めて行う
注文住宅を建てる流れのなかでも、土地探しは特に難航しやすいポイントです。その理由は、理想の土地が売り出されるタイミングに出会うこと自体が、そもそも難しいという点が挙げられます。
そのため、計画的に家を建てるためには、希望の条件に100%マッチした土地を見つけることはほぼ不可能であることを理解することが大切です。
土地探しにかける期間を決めておくほか、候補のエリアも複数考えておくことをおすすめします。
2)こだわりポイントの優先順位を決めておく
注文住宅の完成までに時間がかかってしまう要因の1つに、「設備や仕様にこだわりすぎてなかなか決まらない」ことが挙げられます。
せっかくマイホームを建てるのであれば、デザイン性も利便性もこだわりたいところですが、憧れの設備を導入してしまうと予算が足りなくなってしまったり、予算を分散させると理想の生活空間にならなかったりと、いつまで経ってもプランが確定しないということが起こります。
限られた予算内で家を建てるためには、あらかじめ優先順位を決めておくことが重要。システムキッチンを絶対に導入したい、空調効率をアップさせるために断熱性・気密性を重視したい、プライバシーを大切にするために個室は多く用意したいなど、「絶対に譲れないポイント」を決めておけば、取捨選択に無駄な時間をかけずに済みます。
3)住宅ローンの審査に確実に通るようにする
万が一、住宅ローンの本審査に落ちてしまった場合、申し込み条件を変更して再審査に申し込んだり、ほかの金融機関の住宅ローンに申し込んだりする必要があり、当初予定していたより審査期間がかかってしまいます。
審査に期間がかかると工事着工が遅れ、全体の工期も後ろ倒しになってしまうため、住宅ローンの審査をスムーズに通過することも、計画どおりに家づくりを進めるために重要なポイントです。
住宅ローンの審査基準は金融機関によって異なり、審査落ちの理由も開示されません。しかし一方で、年収に対して無理な返済計画を立てている・転職直後にローンを組んでいる・ほかにもローンを組んでいる・滞納履歴があるなど、住宅ローンの審査に落ちる人には一定の共通点もあります。
自身の信用情報に不安はないかをあらかじめ確認しておき、不安がある場合は金融機関に相談のうえ、返済計画の見直しをしておくことも大切です。
計画的な家づくりのためには業者選びが最重要ポイント
本記事では、注文住宅を建てるためにかかる期間と流れ、スムーズに家づくりを進めるために意識したいポイントについて解説しました。
注文住宅は理想の住まいを一から作れるというメリットがある半面、土地探しや間取り・設備・仕様の決定に非常に時間がかかり、こだわればこだわるほど完成までに長い期間がかかってしまいます。
そのため、計画的に家を建てて新生活をスタートさせるためには、それをサポートしてくれる業者選びも重要です。注文住宅の販売実績が多い業者であれば、希望する住宅のプランは完成までにどれくらいの期間かかるか、スムーズに家づくりを進めるためにはどうすればいいかを、詳細にアドバイス・フォローしてくれる体制が整っています。業者によっては土地探しから相談に乗ってもらえる場合もあるため、親身にアドバイスしてくれる営業担当者のいるハウスメーカーを探すようにしましょう。
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徳本 友一郎
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- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書:
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