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家・住宅購入コラム

瑕疵保険とは? メリットや種類、費用、保証対象などを解説

住宅の購入や、リフォームを検討する際によく聞く瑕疵保険。瑕疵(かし)とは本来、キズや欠点を指す言葉です。住宅においては、建築基準法で定められている基準に反した、大きな欠陥がある状態をいいます。

瑕疵保険は、住宅に大きな欠陥があったとき、購入者が高額な補修費用を負担しなくて済むよう定められた保険です。新築住宅・既存住宅(中古住宅)・リフォームの各ケースにあわせて、保証期間や保険金額が定められています。

本記事では瑕疵保険のメリットや種類、費用、保証対象などをわかりやすく解説します。住宅を安心して購入できるよう、チェックしておきましょう。

 

瑕疵保険とは?

瑕疵保険とは、住宅の品質検査と、欠陥への保証を定めた保険制度です。すべての欠陥が保証対象となるわけではなく、柱・壁・屋根・土台など住宅の構造耐力上、重要な部分に欠陥が見つかった場合に保険金が支払われます。

新築住宅・既存住宅(中古住宅)ともに加入対象です。加入するのは、住宅を購入する人ではなく、建設業者などの住宅事業者と定められています。

また、保険を提供するのは、国土交通大臣が指定した保険法人に限られています。

  • 株式会社住宅あんしん保証
  • 住宅保証機構株式会社
  • 株式会社日本住宅保証検査機構
  • 株式会社ハウスジーメン
  • ハウスプラス住宅保証株式会社

住宅事業者は上記5社のなかから、契約先を自由に選べます。瑕疵保険における事業者・購入者・保険法人の関係性は、以下の図の通りです。

 

引用:国土交通省「住宅瑕疵担保責任保険について」

事業者は瑕疵保険へ加入し、保険料を支払います。その後、住宅に瑕疵が見つかり、購入者が事業者へ補修を請求すると、保険法人から事業者へ保険金が支払われます。事業者はその保険金をもとに、住宅の補修を行うのです。

また万が一、事業者が倒産などにより補修不可能となった場合は、購入者が保険法人へ保険金を直接請求できるようになっています。つまり、事業者が保険へ加入することで、購入者が守られる仕組みとなっているのです。

 

 

瑕疵保険のメリットとデメリット

瑕疵保険のメリットは、住宅を取得後に構造耐力上の欠陥が見つかった場合でも、無償で補修を受けられる点です。住宅購入者が、物件の欠陥により、不当に金銭的な負担を抱えなくて済む仕組みとなっています。

また瑕疵保険は、専門家による検査に合格しないと加入できません。そのため購入者にとっては、瑕疵保険に入っている物件を取得した方が、安全性が高いといえるでしょう。任意加入ではありますが、中古住宅も対象なので、建設から時間が経過したことによる品質への不安を払拭できます。

事業者にとっては、保険料を納めなくてはいけない点がデメリットといえるでしょう。品質検査で不合格だった場合、加入基準をクリアするために追加で工事をしなくてはいけない可能性もあります。

しかし、瑕疵保険に入っておけば、事業者は購入者への瑕疵担保責任(欠陥品を販売した際に負う責任)を自社が倒産しても果たせるようになります。そのため、保険料はかかりますが、事業者にとってもメリットがある保険だといえるでしょう。

 

 

瑕疵保険が必要な理由

もともと2000年には、「新築住宅において重大な欠陥が見つかった場合、売主が10年間、瑕疵担保責任を負う」と定められた「住宅品質確保促進法」が施行されていました。

しかし2005年に「姉歯事件」と呼ばれるマンションの耐震偽装事件が起こったのを機に、法律が見直されたのです。姉歯事件は、一級建築士が構造計算書を偽造し、耐震基準に満たないマンションを販売した事件です。

事業者が倒産したため補修費用が支払われず、マンションの住人が理不尽なダメージを負うと発覚し、大きなニュースになりました。姉歯事件を受けて、建物に重大な瑕疵があった場合、事業者が補修費用を用意するよう定めた法律「住宅瑕疵担保履行法」が制定されることとなったのです。

現在、新築住宅は加入必須ですが、中古住宅は任意加入とされています。中古住宅を購入するときは、瑕疵保険に加入している物件かどうか、確認しておくのがおすすめです。

 

 

瑕疵保険の種類・費用・保証対象など

瑕疵保険は、新築住宅と既存住宅(中古住宅)で種類が変わります。

<新築住宅>

  • 住宅瑕疵担保責任保険

<既存住宅(中古住宅)>

  • 既存住宅売買瑕疵保険
  • 既存住宅個人間売買瑕疵保険
  • リフォーム瑕疵保険
  • 大規模修繕瑕疵保険
  • 延長保証保険

それぞれの特徴を見ていきましょう。 

 

 

新築住宅の場合

引用:国土交通省「住宅瑕疵担保責任保険」

「住宅瑕疵担保責任保険」は、下の図のように、柱や壁など構造耐力上の主要な部分に瑕疵が発見されたとき、保険法人から事業者へ保険金が支払われます。雨水の侵入を防ぐ部分に瑕疵があった場合も同様です。

引用:一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会「瑕疵担保責任の範囲」

また、倒産などで事業者が補修を行えない場合は、保険法人から買主へ保険金が直接支払われます。売買契約書や請負契約書などに、どの保険法人と契約しているか記載してあるので、確認してみましょう。

保険期間などのおおまかな条件は、以下の通りです。保険法人ごとに細かい規約は異なります。

保険期間 10年
保険料等 保険法人により異なる。通常、戸建て住宅で7~8万円程度。
保険金額 原則2,000万円。

オプションで2,000万円以上の保険金が下りる場合もある。

保険金の支払い対象 ①補修費用 ②調査費用 ③仮住居・転居費用など
免責金額 原則10万円
填補率 事業者の場合:80%

住宅取得者の場合:100%(事業者が倒産したとき)

 

 

既存住宅(中古住宅)の場合

既存住宅(中古住宅)の場合、売主が宅建業者なのか、個人なのかによって種類が変わります。売主が宅建業者の場合は「既存住宅売買瑕疵保険」、個人の場合は「既存住宅個人間売買瑕疵保険」です。

さらに、リフォームした際に適用される「リフォーム瑕疵保険」、マンションの大規模修繕を行った際に適用される「大規模修繕瑕疵保険」もあります。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

 

 

既存住宅売買瑕疵保険:宅建業者販売タイプ

引用:国土交通省「既存住宅売買瑕疵保険(宅建業者販売タイプ)」

既存住宅(中古住宅)で、売主が宅建業者だった場合は、「既存住宅売買瑕疵保険」が適用されます。

既存住宅の場合は、建物の構造部分と雨水を防ぐ部分の瑕疵に加え、特約で給排水管路や電気設備の瑕疵なども保証対象とした商品があります。また、新築の瑕疵保険とは、期間や金額が異なるので注意しましょう。

保険期間 2年または5年。商品により異なる。
保険料等 保険法人により異なる。通常、戸建て住宅で5万円程度。
保険金額

500万円または1,000万円。商品により異なる。

保険金の支払い対象 ①補修費用 ②調査費用 ③仮住居・転居費用など
免責金額 原則10万円
填補率 事業者の場合:80%

住宅取得者の場合:100%(事業者が倒産したとき)

 

 

既存住宅売買瑕疵保険:個人間売買タイプ

 

引用:国土交通省「既存住宅売買瑕疵保険(個人間売買タイプ、仲介事業者保証型)」

 

既存住宅(中古住宅)で、売主が個人だった場合は、「検査事業者保証型」または「仲介事業者保証型」のどちらかが適用されます。

名前のとおり、既存住宅の検査事業者または仲介事業者が保険に入る形式です。保険金の支払い対象は、売主が宅建業者だった場合と同様です。

保険期間 1年、2年または5年。商品により異なる。
保険料等 保険法人により異なる。通常、戸建て住宅で5万円程度。
保険金額 200万円、500万円または1,000万円。商品により異なる。
保険金の支払い対象 ①補修費用 ②調査費用 ③仮住居・転居費用など
免責金額 原則5万円
填補率 100%

 

リフォーム瑕疵保険

引用:国土交通省「リフォーム瑕疵保険」

既存住宅をリフォームした場合は、登録事業者(リフォーム業者)が保険に加入します。リフォーム中または完了後に専門家が品質検査を行い、瑕疵が発覚した場合は、保険法人から登録事業者へ保険金が支払われます。

また倒産などにより、登録事業者が補修不可能な場合は、保険法人からリフォーム発注者へ保険金が直接支払われる仕組みです。

基本的には、リフォーム工事をしたすべての部分にかかわる瑕疵が、保証対象と定められています。しかし、設置した機器や設備自体に欠陥がある場合は、保証対象外となるので注意しましょう。

保険期間 1年~10年。商品により異なる。
保険料等 保険法人により異なる。請負金額400万円のリフォームで3万円程度が目安。
保険金額 100万円~2,000万円。商品・請負金額などにより異なる。
保険金の支払い対象 ①補修費用 ②調査費用 ③仮住居・転居費用など
免責金額 原則10万円
填補率 事業者の場合:80%

住宅取得者の場合:100%(事業者が倒産したとき)

 

大規模修繕工事瑕疵保険

引用:国土交通省「大規模修繕瑕疵保険」

マンションなどの共同住宅を大規模修繕した場合は、「大規模修繕瑕疵保険」が適用されます。大規模修繕工事は、マンションの管理組合などが工事業者へ発注するものです。そのため基本的に、消費者が個人でかかわるケースはないでしょう。

保険金の支払い対象は、大規模修繕工事をした部分のうち、構造上の主要な部分・雨水の侵入を防ぐ部分・給排水管路・電気設備など多岐にわたります。しかし、商品により対象範囲が異なるため確認が必要です。

保険期間 1年~10年。商品・対象部分などにより異なる。
保険料等 保険法人・請負金額などにより異なる。
保険金額

1,000万円~5億円。商品・請負金額などにより異なる。

保険金の支払い対象 ①補修費用 ②調査費用 ③仮住居・転居費用など
免責金額 原則10万円
填補率 事業者の場合:80%

住宅取得者の場合:100%(事業者が倒産したとき)

 

延長保証保険

引用:国土交通省「延長保証保険」

新築住宅を引渡し後、10年が経過すると、瑕疵担保責任保険の適用期間が終了します。期間終了後に住宅を検査・補修した場合は「延長保証保険」が適用されます。

対象となる住宅は戸建て住宅、延床面積500㎡未満かつ3階以下の小規模共同住宅です。そのほか、延長保証保険の契約時に、メンテナンス工事を必ず実施するなどの加入条件があります。

保険期間 5年・10年など。商品により異なる。
保険料等 保険法人・期間などにより異なる。

120㎡の戸建て住宅かつ、保険期間5年で3万円程度が目安。

保険金額

500万円・1,000万円・2,000万円など。商品により異なる。

保険金の支払い対象 ①補修費用 ②調査費用 ③仮住居・転居費用など
免責金額 原則10万円
填補率 事業者の場合:80%

住宅取得者の場合:100%(事業者が倒産したとき)

おもな特約 リフォーム特約・給排水管路特約・給排水設備特約など。

 

瑕疵保険が使えないケース

瑕疵保険は、住まいで発生したすべての不具合に保険金が支払われるわけではありません。

基本的に、「構造耐力上の主要な部分・雨水の侵入を防ぐ部分」に瑕疵が見つかったときに適用されるので、構造に関係がない部分の瑕疵や、災害・事故・経年変化などにより生じた不具合は保証対象外となります。

  • 構造に関係がない部分のひび割れ
  • 結露による窓枠の腐食
  • 自然災害による雨漏り

たとえば上記のようなケースは、瑕疵保険の対象外となる可能性が高いでしょう。

また瑕疵保険は、事業者が住宅を建設またはリフォームなどした際に、専門家の品質検査を受けて合格することが加入条件となっています。そのため、そもそも検査基準を満たしておらず、瑕疵保険に加入していない物件は、保証対象となりません。

新築住宅は加入が義務づけられていますが、中古住宅は任意加入です。とくに売主が個人の場合は、瑕疵保険に加入していない物件もあるので、購入前にチェックしておいた方がよいでしょう。

 

 

瑕疵保険を利用するための流れ

瑕疵保険は、住宅事業者が加入する保険です。そのため、加入の際に購入者側が行う手続きはありません。

購入者は物件引渡し時に、事業者から保険の説明を受け、保険契約書類を受け取ります。契約書類には、瑕疵保険を提供する保険法人名が書かれているため、大切に保管しておきましょう。

引渡し後に瑕疵が見つかった場合、購入者は事業者へ連絡を入れて、補修工事を依頼します。事業者が倒産した場合、購入者は保険法人へ直接連絡し、補修費用を請求することも可能です。

いずれのケースも連絡を入れると、まず現場調査が入ります。瑕疵の状況を調査し、保証対象であると認められたら、補修工事もしくは保険金の支払いが行われる流れとなります。

 

 

まとめ

瑕疵保険とは、住宅の品質検査と、欠陥への保証が定められた保険制度です。構造耐力上の主要な部分や、雨水の侵入を防ぐ部分に欠陥が見つかったとき、保険金が支払われます。

保険に加入するのは、住宅購入者ではなく事業者です。保険を提供するのは、国土交通大臣に指定された保険法人に限られています。

瑕疵保険は、専門家による品質検査に合格しないと加入できません。そのため、瑕疵保険に入っている物件を購入した方が、安全性が高いといえます。住宅を購入する際は、保険についてもよく確認し、安心できる住まいを選びましょう。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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