住宅ローンを借りない選択肢はあり?現金一括購入のメリットやデメリットを解説!
不動産は住宅ローンを借り入れて購入せず、現金一括購入をする人もいます。
しかし、住宅ローンを借り入れて不動産を購入した場合と現金一括購入した場合とでは諸経費や手続きに大きな違いが出てきます。
住宅ローンを借り入れて不動産を購入するときと、現金一括購入をするときの違いにはそれぞれメリットがあれば、デメリットもあります。
そのため、不動産購入をするときには、住宅ローンを借り入れて購入するときと現金一括購入するとき、それぞれのメリットやデメリットを知っておくことが重要です。
本記事では、住宅ローンを借り入れて不動産購入したときと現金一括購入したときの違いやそれぞれのメリットやデメリットなどを解説します。
住宅ローンを借り入れて不動産を購入した場合と現金一括購入した場合の違い
不動産を購入するときに住宅ローンを借り入れた場合と、現金で一括購入した場合では諸経費や手続きに違いが出ます。
その違いが簡単に分かるよう表にまとめました。
住宅ローンを借り入れる場合と現金一括購入する場合の主な違い
住宅ローンを借り入れる場合 | 現金一括購入をする場合 | |
---|---|---|
住宅ローン借入諸経費 | かかる | かからない |
住宅ローンの金利支払い | ある | ない |
住宅ローンの手続き | ある | ない |
住宅ローン控除の利用 | 可 | 不可 |
不動産を現金一括購入するときのメリット
不動産を現金一括購入する場合には、さまざまなメリットがあります。
不動産を現金一括購入する場合の主なメリットは、次のとおりです。
・不動産購入申込時に他の買主との競争に勝ちやすい
・不動産探しから引渡しまでのスケジュールが短くなる
・金利や事務手数料など金融機関に支払う諸経費などがかからない
・カーローンなどのローンが借りやすい
・差押えや競売などの心配がない
不動産を現金一括購入するときのメリットを、それぞれの項目に分けて解説していきます。
不動産購入申込時に他の買主との競争に勝ちやすい
不動産はこの世に1つしかない商品であり、どれだけ似ている物件でもまったく同じ不動産は存在しません。そのため、条件の良い不動産には多くの不動産購入申込が殺到するときがあります。
不動産購入申込書が何通も届いた場合、条件の良い不動産購入申込書が優先されます。
住宅ローンを利用する条件が付いている不動産購入申込は、住宅ローンを利用しないという不動産購入申込のほうが優先される傾向があります。
現金一括購入の不動産購入申込が優先される理由は、住宅ローンが通らなかったときには契約を白紙にされてしまう、現金の人よりも引き渡しまで時間がかかってしまうなどのデメリットが多いからです。不動産購入申込が優先されやすくなれば、自分の購入したい不動産を手に入れられる確率が上がります。
不動産探しから引渡しまでのスケジュールが短くなる
住宅ローンを借りようとすると、住宅ローンを借りる手続きや融資の審査・実行などに時間がかかります。
住宅ローンを借りる場合に時間がかかってしまう事項は、次の表のとおりです。
住宅ローンを借りることにより時間がかかる主な項目
住宅ローン仮審査 | 約3~10営業日(即日回答の金融機関もある) |
住宅ローン本審査 | 約10~20営業日 |
金銭消費貸借契約締結から引き渡しまで | 約7営業日 |
※金銭消費貸借契約とは、住宅ローンを借りるため金融機関と締結する契約のことです。
この表のほかにも、住宅ローンを借りるための手続きや、金融機関からの郵送物到着待ちの期間などを合わせると、40日~60日ほど現金一括購入よりも時間がかかるといわれています。
金利や事務手数料など金融機関に支払う諸経費がかからない
住宅ローンを借り入れる場合には、住宅ローンの事務手数料や保証料などの諸経費、借り入れした後に支払う金利などが発生します。
まず、住宅ローンを借り入れたときに必要になる諸経費から説明します。
住宅ローンを借りるときに必要になる主な諸経費は、次の表のとおりです。
住宅ローンを借りるときに必要となる主な諸経費
融資事務手数料 | 金額固定で約3万円~5万円としている場合や、借入金額の2.2%などの割合になっている場合があります。金融機関により融資事務手数料がどのくらいかかるのか異なります。 |
ローン保証料 | 借入金額の割合になっている場合や、保証料は徴収しないというケースがあります。 金融機関により内容が異なります。 |
団体信用 生命保険料 |
基本的には金利に含まれるため無料です。 金利に団体信用生命保険が含まれない場合、別途10万円前後支払う場合もあります。 |
抵当権設定費用 | 住宅ローンを利用すると、購入した不動産に抵当権を設定しなければなりません。 この抵当権設定をするには、登録免許税の納税と司法書士への報酬などが発生します。 |
住宅ローンには借りるときの諸経費のほかに、金利が発生します。
例えば、住宅ローンを35年、3,000万円を金利2%で借り、35年間かけ返済した場合は、おおよそ1,170万円の金利を支払う必要があります。
同条件で金利だけ1.5%にして計算した場合は、おおよそ850万円の金利を支払うことになります。
住宅ローンを借り入れしないことにより、これらの諸経費や金利支払いがなくなるため、金銭的な負担が減ります。
カーローンなどのローンが借りやすい
住宅ローンを借り入れてしまうと、カーローンやカードローン借り入れ、クレジットカード発行が難しくなります。
なぜなら、これらローンなどは年収を基にどれくらいまで貸すかを決めており、住宅ローンを借りることにより他のローンが借り入れする余力を圧迫してしまうためです。
現金一括購入をした場合には、他のローンを借り入れる余力が残るため、他のローンが借りやすくなります。
差押えや競売などの心配がない
住宅ローンの返済を滞納すると不動産を差し押さえられ、最悪の場合は競売にかけられ強制退去ということにもなりかねません。
現金一括購入していれば、住宅ローンでの差押えの可能性はないため、競売になるという心配をしなくて済みます。
不動産を現金一括購入するときのデメリット
不動産を現金一括購入する場合には、さまざまなデメリットがあります。
不動産を現金一括購入する場合の主なデメリットは、次のとおりです。
・住宅ローン控除を利用できない
・税務署からお尋ねがきたり税務調査されたりする可能性がある
・手持ちの現金がなくなる
・火災保険に入り忘れることがある
ここからは、不動産を現金一括購入するときのデメリットを、それぞれの項目に分けて解説していきます。
住宅ローン控除を利用できない
住宅ローン控除とは、住宅ローンを借りた人を対象に住宅ローン借入年末残高の割合に応じて所得税や住民税を控除する制度です。
つまり、住宅ローン控除を利用するためには、住宅ローンを借り入れることが条件ということです。
住宅ローン控除は年収が多ければ多いほど、住宅ローンの借入額が多ければ多いほど効果を発揮するため、高額な不動産を購入する場合には所得税や住民税を節税できる有用な制度です。
税務署からお尋ねがきたり税務調査されたりする可能性がある
不動産を現金一括購入する場合には相当量の現金が必要となり、年齢や年収にあっていないような現金を使用したと判断されると税務署からお尋ねがきます。
これは贈与を受けたのに申告していないのではないか、収入を隠していないかなど脱税行為をしていないかの確認です。
疑いをかけられるのは気持ちの良いことではないですが、お尋ねがきたときにはしっかりと対応をするようにしましょう。
お尋ねの内容に不備があったり、お尋ねを無視すると税務調査をされるおそれがあります。
手持ちの現金がなくなる
不動産を現金一括購入すると、数千万単位の現金がなくなりますが、不動産はメンテナンスや固定資産税などのランニングコストがかかるため、一定の現金を残しておかなければなりません。
また、生活費や老後の資金などを考えると多くの現金を貯蓄しておく必要があります。
そのため、不動産購入で現金を使い切ってしまうような資金計画を立ててしまうと、後悔する可能性もあります。
火災保険に入り忘れることがある
住宅ローンを借り入れるときには、火災保険に加入することが条件となるため、火災保険に入り忘れることはありません。
しかし、現金で不動産を購入する場合は保険に入ることが必須ではないため、買主自身が火災保険の手続きをする必要があります。
このことにより火災保険に入り忘れている人が出てきてしまいます。
災害などで住宅が破損するなどの被害が出てから火災保険に加入しては遅いため、不動産の引渡し日から火災保険に加入する手続きをしておきましょう。
住宅ローン控除を利用しないともったいないというのは本当?
不動産を現金で一括購入できる人でも住宅ローン控除を受けるため、わざと住宅ローンを借り入れるというような話を聞いた人もいることでしょう。
ここからは、例を挙げてこの話が本当なのかシミュレーションをしていきます。
シミュレーションを行う諸条件
住宅ローン借入額 | 3,000万円 |
住宅ローン返済期間 | 35年 |
金利 | 0.475%(借入期間中の金利変動なし) |
返済方法 | 元利均等、ボーナス返済なし |
住宅ローン控除算出条件 | 控除対象配偶者あり、16才未満の子ども2人、入居日2022年8月、 住宅ローン借入額3,000万円、借入金利0.475%、借入期間35年、年収600万円 |
購入物件 | 新築住宅、長期優良住宅などではない一般住宅 |
現金一括購入と住宅ローン購入との金額差
現金購入 | 住宅ローン購入 | |
---|---|---|
物件代金 | 3,000万円 | 3,000万円 |
金利(変動0.457%) | - | 約250万円 |
融資事務手数料 | - | 約3万円 |
保証料 (借入額100万円あたり20,610円(税込)~) |
- | 約61万円 |
団体信用生命保険料 | - | 不要 |
合計金額 | 3,000万円 | 約3,314万円 |
※抵当権設定費用は別途
※共通して必要な諸経費については別途
現金一括購入した場合と住宅ローン借り入れして購入した場合とでは、諸経費と金利を含めおおよそ314万円の差が出ました。
住宅ローンの諸経費と金利だけを考えれば、現金一括購入の方がお得に感じます。
しかし、上記条件を基に住宅ローン控除の所得税減税額を計算すると、所得税が総額で約218万円控除されます。
つまり、現金一括購入した場合と住宅ローン控除を利用した場合とでは、約96万円の差と縮まります。
このシミュレーション例の場合、金額だけの比較であれば現金一括購入したほうが支出は少なくなりました。
しかし、住宅ローンを借り入れて不動産を購入した場合、手持ちの現金は減りません。
手持ちの現金が残っていれば急な出費にも対応することができ、日々の生活が安定します。
不動産購入関連費用を減らすほうが優先なのか、安定した生活を優先するのかは人により異なるため、自分に合った不動産購入方法を選択していくのが良いでしょう。
また、今回のシミュレーション例では現金一括購入した場合と、住宅ローンを借り入れた場合との差は大きくなりませんでした。
しかし、借り入れ条件次第では、現金一括購入した場合のほうが有利になるケース、住宅ローンを借り入れたほうが有利になるケースもあります。
まとめ
不動産を現金一括購入した場合と住宅ローンを借り入れて購入した場合とでは、不動産を現金一括購入した場合のほうが諸経費は安くなります。
しかし、住宅ローンを借り入れて不動産を購入した場合、住宅ローン控除を利用できるため、所得税などを控除した結果ほとんど金額的な差がなくなるケースがあります。
金額的な差が少なくなるのか大きくなるのかは、購入する住宅の内容や住宅ローンの借入内容により異なってきます。
例えば、中古住宅を購入する場合は、一括購入と住宅ローン借入購入とで金額的な差が大きくなります。
また、住宅ローンの借り入れが大きくなるほど不動産購入関連費用の金額差が大きくなります。
購入する不動産や住宅ローンの借入内容は不動産を購入する人によって異なるため、自分の不動産購入計画では現金一括購入したほうが良いのか、住宅ローンを借り入れたほうが良いのか確認する必要があります。
現金を残しておいたほうが良いのかについては不動産購入者の生活内容にもよるため、計画を立てる際にはファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、ライフプランから診断してもらうことをおすすめします。
自分に合った資金計画を立てて不動産購入をし、余裕のある生活を送ることができるよう準備をしっかりとしておきましょう。
小野 信一
- 所属会社:
- ネクスト・アイズ株式会社
- 所属会社のWEBSITE:
- https://www.nexteyes.co.jp/
- 保有資格:
- ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、不動産コンサルティング技能登録者、2級建築施工管理技士
- 著書:
- NHK出版「家づくり必勝法」
ハウスメーカーがいわない8つの鉄則
リフォームで失敗しない6つの秘訣
家と土地と相続・贈与の税金「24のお得な話」
監修:ダイヤモンド社「はじめて家を建てました」あべかよこ著
監修:西東社「失敗しない!後悔しない!マイホームの建て方・買い方」
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