中古住宅購入時の注意点とは?優良物件を見極めるコツとトラブル回避のポイント
少子高齢化に伴う空き家の増加や、新型コロナウイルス感染拡大による資材の高騰などにより、マイホームとして中古住宅が選択されるケースが増えてきました。
中古住宅は購入費用を抑えられるという点が最大の魅力ですが、新築住宅を購入するときとは異なるポイントに注意して売買を進める必要があります。築年数が経っているからこそつきまとう不安要素は、購入後にトラブルに発展する可能性もあるため、あらかじめ払拭しておく必要があります。
そこで本記事では、中古住宅購入時に着目すべきポイントを、物件探し・内覧・売買契約締結時・購入資金という4つの観点から解説します。
1.中古住宅購入時の注意点:物件探し
購入する中古住宅を探す際に、特に注意して確認しておきたいポイントは下記のとおり。
1)新耐震基準への適合有無
2)将来を見据えた間取り選び
3)周辺の生活環境と防犯性
4)優先順位を決めておく
1つずつ詳しく解説していきます。
1)新耐震基準への適合有無
地震大国と呼ばれる日本において、大規模な地震にも耐えられるほどの強度を備えた物件に入居できるかは重要なポイントです。中古住宅を購入する際は、その物件が「新耐震基準」に適合しているかどうかを確認しましょう。
「新耐震基準」とは、1981年の建築基準法改正により施行された基準で、それまでの「旧耐震基準」よりもさらに高い耐震性を備えた住宅を建てることが求められています。1981年6月1日以降に確認申請を取得・建設された物件は新耐震基準に適合しており、大規模な地震が発生しても倒壊をまぬがれるものとされているのです。
ただし、それよりも前に建てられた物件だからといって、耐震性が低い・地震に弱いということではありません。1981年6月より前に確認申請を取得した物件であっても、新耐震基準を上回る耐震性を有している場合もあります。旧耐震基準で建設された物件の耐震性は、耐震診断を受けている場合は「耐震診断報告書」によって確認可能です。
2)将来を見据えた間取り選び
購入後何年・何十年と暮らすことになる住まい。購入時点での生活のしやすさだけでなく、将来の生活も考慮して間取りを選ぶことをおすすめします。
例えば、今一緒に暮らしている子供が独立したら、子供部屋として使っていた部屋は不要になるかもしれませんし、年齢を重ねて足腰が悪くなったら、バリアフリーな家のほうが暮らしやすいかもしれません。
ライフスタイルが変化したときにそのまま住み続けるのか、引越しをするのかもイメージしながら選ぶようにしましょう。
3)周辺の生活環境と防犯性
中古住宅購入後、住宅の間取りや設備はリフォームなどで変更できますが、周辺環境は変えられません。生活に必要なスーパーやコンビニ、病院や役所、子育てをする場合は公園や教育施設などがあるかどうかを確認し、その土地でどのような生活ができるかをイメージしてみましょう。
交通の便に関しても、細かくチェックしておくことが大切。駅まで歩いてどれくらいかかるかだけでなく、主要な駅まで何回乗り換える必要があるのか、バスは1日何本来るかなども見ておくと、「思っていたよりも通勤・通学が大変」ということを避けられます。
また、実際に現地を訪れる際には、防犯面も確認しておく必要があります。家の玄関の向きや、面している道路の人の往来・交通量によっても防犯性が変化します。さらに、昼の時間帯だけでなく、夜の時間帯にも周辺を歩いてみることで、街灯や周辺の民家の明かりの具合も確認できます。
4)優先順位を決めておく
すべての理想をかなえる完ぺきな家に住みたいという願いは誰もが抱くものですが、実際はすべての条件を満たすことは難しく、どこかで妥協しなくてはいけないというのが事実。
そのため住まいを選ぶ際は、「ここは絶対に譲れない」というポイントを決めて、優先順位をつけておくことをおすすめします。
2.中古住宅購入時の注意点:内覧
中古住宅を購入する場合、新築住宅や賃貸物件を購入する場合よりも、建物全体を慎重にチェックする必要があります。あらかじめチェックポイントや注意点を知っておかないと、快適で安全な生活が送れなくなるだけでなく、地震などの災害が起きたときに家が住めない状態になる可能性も否定できません。目に見えない部分の確認のためには、専門家の力を借りる必要があるという点も押さえておきましょう。
1)外観から家の耐久性をチェック
中古住宅は竣工から時間が経っているぶん、十分な耐久性が備わっているかを確認することが重要です。その際にまず確認したいのが、外観に劣化や損傷がないかということです。
【外壁で確認しておきたい部分】
・屋根:瓦や屋根板に破損がないか
・外壁:ひび割れがないか
・軒天:雨の染み、亀裂がないか
・基礎:ひび割れがないか
特に基礎部分に0.5mm以上のひび割れが確認できた場合、家の耐久性に問題がある可能性が高いため注意が必要です。
2)シロアリ被害の有無
中古住宅を購入する際、家の耐久性と同様、シロアリによる被害を受けていないかも重要なチェックポイントです。
シロアリ被害は建物に大きなダメージを与え、建物自体の寿命が短くなるだけでなく、地震が発生した際の倒壊の原因にもなり得るのです。特に風通しや日当たりの悪い家は、シロアリの被害を受けやすいという特徴があります。床に柔らかい部分や、きしみがある場合には要注意。また、湿気の多い水回りも入念に確認しましょう。
3)土地の境界線
中古住宅と土地を合わせて購入する際は、隣の土地との境界線も必ず確認するようにしましょう。土地の境界線が明確にされている場合には、「境界標」と呼ばれる杭が埋められています。年月が経過していると土や草に埋もれていることも少なくないため、境界標の所在を確認するために地面を掘り起こしたり、境界標を設置した際に合わせて作製する「確定測量図」の有無を売主に確認したりする必要があります。
土地の境界線が明確になっていない状態で購入してしまうと、のちに隣地所有者とのトラブルに発展する場合もあります。境界線が確認できない場合は売主に確定測量を求めるなどして、「ここまでが私の土地」ということが明確な状態で購入するようにしましょう。
4)再建築不可物件でないかどうか
中古住宅を購入する際に必ず確認しておきたいのが、建て替えや増築ができるかどうかという点です。都市計画道路の予定地や高架線下、防火地域の土地は、建てられる建物の種類や高さなどに制限があります。特に中古住宅は、リフォームや増改築を前提として購入する人も少なくなく、建築制限について確認しておかないと、予定していた工事ができないということにもなりかねません。
希望する中古住宅のある土地に建築制限があるかどうかは、あらかじめ不動産会社を通じて確認しておくようにしましょう。
5)売却理由
中古住宅を購入時に忘れがちなのが、売主に売却理由を確認するということです。売却金額が安い物件は魅力的ですが、周辺相場よりも安く売りだされている場合には、売主が手放すことを決断した本当の理由が裏に隠されている可能性があります。
近くに高い建物が建ったことにより日当たりが悪くなったのかもしれませんし、建物自体に不具合が発生しているのかもしれません。
売主の売却理由によっては、どんなに条件のいい中古住宅であっても購入を見送ったほうがいい可能性もあります。
6)見えない部分はプロに確認してもらう(ホームインスペクション)
内覧時に外観や内観を細かくチェックしていても、本当に安心して暮らせる家なのか不安に感じる人も多いのではないでしょうか。その場合は「ホームインスペクション」と呼ばれる住宅診断を受けるのもおすすめです。
ホームインスペクションは、雨漏りやシロアリ被害、建物の傾きなどの劣化状況について、ホームインスペクターという専門家が診断するサービス。診断だけでなく、改修すべき箇所がある場合は、いつのタイミングでの改修が必要か、どのくらいの費用がかかるかについてもトータルでアドバイスを受けられます。
特に中古住宅購入の場合は、購入時の建物の劣化状況を正確に把握し、将来的にどれほどの改修・リフォームが必要かも視野に入れて検討しなくてはいけません。ホームインスペクション実施の相場は5万円程度で、一般的には買主が負担しますが、中古住宅を安心して購入できるという点で、実施するだけの価値はあると言えるでしょう。
3.中古住宅購入時の注意点:売買契約締結時
中古住宅を購入する際に多くの人が懸念する要素として、「入居後に瑕疵(欠陥)が見つかったらどうしよう」ということです。売買契約においては、万が一引き渡しのあとに瑕疵が見つかった場合に、売主が責任をとるとすることを定めたり、見つかった瑕疵に対して補償金を受け取れる保険に加入したりすることで、入居後のリスクへ対処します。
1)契約不適合責任の内容を確認
売買契約を締結する際によく確認しておきたいのが、「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」の内容です。
「契約不適合責任」とは、購入して引き渡しを受けた不動産が、契約時に説明を受けた内容と異なっていた場合に、売主が買主に対して責任を負うというもの。中古住宅の場合は、入居後に雨漏りが発覚したり、配管の不具合が発覚したりといったことが該当します。このような場合には、買主は売主に対して、修繕・補修費用を請求することができるとされています。
売買契約書においては、契約不適合責任の範囲や通知期限などを設定します。契約締結までに必ず内容を確認し、心配される事項があれば契約書への条文追加を依頼しましょう。
2)既存住宅売買瑕疵保険も検討
売買契約締結前にどんなに入念に確認していても、入居後に欠陥が見つかることへの不安をなかなかぬぐえないのが中古住宅購入です。
「既存住宅売買瑕疵保険」は、中古住宅の購入後に、構造上の不具合や雨漏りといった問題が発覚した場合に、保険会社から調査費用や補償費用が支払われるというものです。既存住宅売買瑕疵保険には原則として売主が加入しますが、売主が個人の場合は、売主と買主の間で費用負担の割合を決定する場合もあります。
既存住宅売買瑕疵保険に加入するためには、売買対象になる物件が、住宅専門の保険会社による建物検査に合格しなくてはいけません。つまり、この保険に加入することで、売買契約後に瑕疵(欠陥)が見つかった場合への対処だけでなく、長く安心して暮らせる住宅であるという安心感も得られるのです。
4.中古住宅購入時の注意点:購入資金
中古住宅は新築住宅と比較して、住宅購入費用は安くなる傾向にあります。しかし一方で、入居前にリフォームを行うことも少なくなく、工事内容によっては新築住宅と同じか、それ以上の費用が必要になる場合もあります。
中古住宅を購入する際には、あらかじめ費用の全体像を把握するだけでなく、活用できる補助金制度や税金の優遇制度なども知っておき、損をすることがないようにしましょう。
1)購入時にかかる費用の全体像を正しく把握する
中古住宅を購入する際には、物件自体の購入代金以外にもさまざまな費用がかかります。どれくらいの費用がかかるかを事前に知っておくことで、余裕をもって購入資金を準備できるようになります。
中古住宅を購入する際にかかる費用の一部を紹介します。
・仲介手数料
・登記費用
・売買契約書に貼り付ける印紙代
・住宅ローン事務手数料(住宅ローンを利用する場合)
・保険料(地震保険、火災保険)
など
さらに、不動産の所有者には固定資産税や都市計画税といった税金も課税されます。年度内に売買が行われる場合は、買主から売主に対して日割で支払う場合もあるということを覚えておきましょう。
2)リフォームにかかる費用も把握する
リフォームを前提として中古住宅を購入する場合、住宅の購入費用だけでなく、リフォームにかかる費用の全体像も把握しておく必要があります。特に築年数が経っている中古住宅の場合は、塗装がはがれている箇所があったり、水回りの設備が古くなっていたりすることも多いため、すべて一新してから入居することを検討する人も多くいます。
リフォーム工事は入居後に行うこともできますが、費用がかかる大規模な水回りなどの工事は、中古住宅購入と同時に行うことをおすすめします。
その理由は、「リフォーム一体型ローン」を利用できる可能性があるためです。
「リフォーム一体型ローン」とは、住宅の購入資金とリフォームにかかる費用を、まとめて借り入れることができるタイプの住宅ローン。リフォーム費用だけを借り入れる「リフォームローン」というものも存在しますが、住宅ローンと比較して返済期間が短い・金利が高い・住宅ローンとの二重ローン状態になってしまうため、月々の返済にかかる負担が大きくなってしまいます。
その点「リフォーム一体型ローン」を利用すれば、リフォーム費用を住宅ローンと同じ返済期間・金利で借りられるため、毎月の返済額を抑えることが可能になるのです。
ただし、リフォーム一体型ローンは取り扱っている金融機関が限られているだけでなく、中古住宅の購入と同時進行でリフォームの計画も進める必要があるため、かなりタイトスケジュールで動く必要があります。あらかじめ申し込めそうな金融機関の目星をつけておくと安心でしょう。
3)中古住宅購入時に活用できる補助金制度を知っておく
中古住宅購入やリフォーム工事を行うことにより、補助金を受け取れたり税金の優遇を受けられたりする制度も存在します。上手に活用することで全体の費用を大きく節約することにもつながるため、あらかじめどのような制度があるのかを調べておくことをおすすめします。
参考までに、中古住宅購入・リフォーム工事によって利用できる制度を、一部紹介します。
住宅ローン減税
返済期間10年以上の住宅ローンを利用して、中古住宅を購入した場合に、中古住宅を購入した年の所得税が控除されるという制度。控除額は毎年12月31日時点の住宅ローン残高×0.7%、控除期間は既存住宅購入の場合で10年、買取再販(不動産会社が既存住宅を購入・リフォームして再度売り出すこと)の場合で13年です。
(参照元:国税庁『住宅ローン減税の概要について(令和4年度税制改正後)』https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000017.html)
こどもみらい住宅支援事業
「こどもみらい住宅支援事業」では、中古住宅を購入したのちに対象のリフォーム工事を行うことで、リフォーム箇所に応じた補助を受けられます。「こどもみらい」という名称ですが、若者夫婦世帯や子育て世帯以外の人でも補助の対象になるのが特徴。
この事業では、住宅・建築物におけるカーボンニュートラルを実現することを目的としているため、中古住宅の省エネ性能を向上させるリフォーム工事が対象となっています。具体的には「開口部の断熱改修」「外壁、屋根・天井又は床の断熱改修」「エコ住宅設備の設置」のいずれかが必須です。
申請期限が2023年3月31日までとなっており、補助金の交付状況によっては早めに締め切られる可能性もあるため注意しましょう。
(参照元:こどもみらい住宅新事業『リフォーム』https://kodomo-mirai.mlit.go.jp/reform/?tab=1)
まとめ
かつては「マイホーム=新築一戸建」というイメージが強く、「一世代で建てて壊す」ことが主流だった日本の住宅市場。近年ではライフスタイルの多様化や、優良な性能を備えた住宅に長く居住することを促進する事業の後押しもあり、中古住宅を購入して居住するケースも増えてきました。
中古住宅であっても十分な耐震性を備えており、少し手を加えることで安全かつ快適に暮らせる物件が多く存在します。しかし一方で、建物の劣化具合を正しく見極めたり、建築制限や土地の境界線を正しく把握・理解したりせずにいると、入居後に大きなトラブルに発展する可能性も否めません。
不動産の売買は不動産会社を介さずにも行えますが、中古住宅購入時は必ず不動産会社に仲介を依頼しましょう。中古住宅の売買を得意とする不動産会社であれば、最新の売り出し情報を受け取れるだけでなく、どのようなトラブルが想定されるか、どのような制度を活用できるかについてアドバイスをもらえる場合もあります。専門家の力を上手に活用しながら、中古住宅購入によって理想的な暮らしを手に入れましょう。
加藤 利光
- 所属会社:
- 株式会社デニム
- 所属会社のWEBSITE:
- http://www.denim1126.co.jp/
- 保有資格:
- AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士 住宅ローンアドバイザー、認知症サポーター
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