投資用不動産を購入する場合はキャッシュフロー表の作成が必要
不動産投資するときには、どの不動産を購入するのかによって投資が成功するか失敗するのかが決まってきます。
投資用不動産は一般的に利回りを確認し購入を判断していきますが、利回りを確認するだけでは投資に失敗する可能性があります。利回りはあくまで投資用不動産購入の指標の1つであり、利回りを確認するだけでは不十分だからです。
それでは利回りのほかに何を確認すればよいのでしょうか。確認すべきもう1つの指標とは、キャッシュフローです。
不動産投資を行うには、キャッシュフローを確認しキャッシュフロー表を作成して、投資計画を立案していきます。本記事では、投資用不動産を購入する際に確認しなければならないキャッシュフローについて、キャッシュフローの重要性や計算シミュレーションなどを紹介します。
キャッシュフローとは
キャッシュフローとは、お金の流れのことを言います。投資用不動産では、家賃から必要経費を差し引いた月額収入や投資用不動産を売却したときの売却益など合計した「手元に残るお金」を指します。
このキャッシュフローをわかりやすくまとめたものがキャッシュフロー表です。賃貸経営を行うときには、キャッシュフロー表を作成し賃貸経営が上手くいくのか想定します。
キャッシュフローの計算方法は、次のとおりです。
家賃収入 – 諸経費 = キャッシュフロー
または
税引き後利益 + 減価償却費 - 返済元金 = キャッシュフロー
この諸経費とは、管理会社への委託料やローン返済に必要な金銭、固定資産税、宣伝広告費などの物件を運用するための費用です。月額・年額のキャッシュフローを計算し、最終的に不動産を売却した後の売却益まで考慮してキャッシュフロー表を作成します。
不動産投資をするときには利回りだけを見てはいけない
投資用不動産を購入するかどうかの判断の1つとして、投資用不動産の物件情報には利回り表示が掲載されています。この利回りは、お金の流れを表記したものではないため、利回りとあわせてキャッシュフローを確認する必要があります。
利回りとは、年間に得ることができる収入から諸経費を差し引き、投資用不動産の購入価格で割ったもので、支出に対しての割合を示しています。一方、キャッシュフローは実際に使用できるお金を示すものです。両者とも無関係というわけではありませんが、利回りとキャッシュフローは違うものということです。高利回りの投資用不動産でもキャッシュフローが高いとは言い切れません。
キャッシュフローが重要な理由
不動産投資を行うときには、キャッシュフローが重要になってきます。キャッシュフローが重要なのには、さまざまな理由があります。その重要な理由ごとに説明していきます。
手持ち資金がなければ不動産運用は難しい
不動産投資を行う際には、必ず空き家になる、修繕が必要という問題が発生します。空き家になってしまったり、修繕が必要となってしまったりした場合、ローン返済があれば手持ち資金から支払わなければなりませんし、修繕が発生したときも手持ち資金から支払わなければなりません。
このときに手持ち資金がなければ、運用を続けることはできず投資用不動産を売却しなくてはならなくなります。最悪の場合は、任意売却や競売、自己破産なども起こりえます。そのため、不動産投資をする場合にはキャッシュフローを把握し、手持ち資金を確保しておく必要があります。
キャッシュフローに余裕があれば不動産収入だけで運用できる
不動産に投資して運用している人は、兼業で不動産投資を行っているサラリーマンなども多くいます。もしキャッシュフローがマイナスになったときには、手持ち資金として給与所得や生活費などを出さないといけないということが出てきてしまいます。
このような状態にならないよう、不動産運用だけで資金が回っていくようにする必要があります。不動産に投資することにより、生活が苦しくなってしまっては投資する意味がありません。また、さまざまな資金で不動産運用をしていくと、キャッシュフローが複雑化してしまい賃貸経営が難しくなってしまいます。
また、キャッシュフローに余裕があると資金が貯まりやすくなるため、ローンの一括返済を行うことができ好循環になっていきます。
売却のときに有利になる
余裕のあるキャッシュフローを維持し続けることにより、投資用不動産の価値が評価されるため売却金額が上がる可能性があります。キャッシュフローでは売却益まで考慮するため、余裕のあるキャッシュフローを維持すれば、出口戦略を立てやすくなります。
ただし、キャッシュフローが投資用不動産購入初期のころは余裕があったが、売却する寸前にはキャッシュフローが悪化していた場合は、売却に有利にはなりません。家賃収入の低下を防いだり、支出を抑えたりして、余裕のあるキャッシュフローを維持することが大切になります。
金融機関の評価が上がるなど事業拡大がしやすい
余裕のあるキャッシュフローを維持することにより、投資用不動産の価値が上がると紹介しましたが、それと同時に事業主としての評価も上がり実績となります。
この実績が積み重なっていくと、金融機関からの評価が上がり、融資を受けるときに有利となったり、金利を減少させてくれたりする可能性が上がっていきます。金融機関からの融資が好条件になってくると、投資用不動産の購入が容易となり事業拡大、事業の安定化を図ることもできます。
キャッシュフローの有効的な活用方法
キャッシュフローに余裕が出てきたときに、貯まった資金を上手く活用することにより、さらにキャッシュフローを良くしていくことができます。さらにキャッシュフローを良くする方法を紹介します。
空き家になったときのローン返済
空き家になった場合には、収入がなくなるため資金があればローンを無理なく返済していくことができます。
不動産投資を行っている場合は、空き家の問題を解決しなくてはなりません。空き家の問題を解決するには、空き家が何年ごとに発生するのか、空き家になると居住者を見つけるのにどのくらいの日数がかかるのかを、あらかじめ予測しておくことが大切です。このことがわかると、残しておかないといけない資金がどの程度なのか、予測できるようになっていきます。
金利上昇リスクに備える
投資用不動産を購入する場合、投資用ローンを利用することになりますが、投資用ローンは変動金利や短期固定金利が多く、金利自体も住宅ローンと比べて高い傾向があります。そのため、金利が上昇してしまうと、返済金額の上昇や、元本の返済期間の延長が見込まれます。
このような事態になった場合は、投資計画の見直しや投資用ローンの借り換えをすることになります。どちらの方法を取るにも、万が一の金利上昇リスクの被害を最小限にするために資金を貯蓄しておく必要があります。
建物維持修繕工事費用に利用
備え付けの設備が壊れた場合や、空き家になり次の入居者を募集する前には維持修繕工事を行わなければなりません。
維持修繕工事は突然発生することが多く、資金が貯蓄できていないと、工事ごとに給与などから手出しをしなければならなくなります。そのようなことにならないよう、資金を貯蓄しておく必要があります。
固定資産税などの経費に利用
不動産を所有していると毎年固定資産税が課税されます。ほかにも所有している投資用不動産が区分所有マンションの場合は、月々の管理費や修繕積立金などが経費として必要になります。
この経費についてもローンと同じく、空き家になった場合でもかかってくる費用です。そのため、空き家になったときのことを考え、経費のことまで考慮して資金を貯蓄しておくことが必要です。
キャッシュフローの計算シミュレーション例
不動産投資をする場合は、キャッシュフローを計算することが大切です。どのようにキャッシュフローを計算するのか、具体的にシミュレーション例を挙げ計算していきます。キャッシュフローの計算とともに利回り計算も行っていきます。
【例】
(1)投資用不動産購入価格:3,000万円
(2)家賃:20万円/月
(3)融資年間返済額:100万円
(4)年間諸経費:50万円(固定資産税など)
(5)空室:0.5ヶ月で想定
【表面利回り計算】
年間の家賃収入:(2)20万円 × 12ヶ月 = (6)240万円(年間収入)
表面利回り:(6)240万円 ÷ (1)3,000万 × 100 = 8%
【キャッシュフロー計算】
ここでは、家賃収入 – 諸経費 = キャッシュフローを計算式とします。
先に空室損を計算します。
(5)0.5ヶ月 × (2)20万円 = (7)10万円(空室損)
キャッシュフロー:(6)240万円 − ((3)100万円 + (4)50万円 + (7)10万円)= 80万円(キャッシュフロー)
この場合は年間80万円のキャッシュフローを生み出す投資用不動産ということになります。
この投資用不動産を10年運用し、1,000万円で売却した場合
80万円 × 10年 + 1,000万円 = 1,800万円
つまり、1,800万円のキャッシュフローがあるということです。
※築年数経過による空室率増加、家賃下落、売却諸経費・税金などは計算を簡易化するため考慮していません。詳しい金額を計算する場合は、不動産会社などの専門家に計算をしてもらうようにしてください。
キャッシュフローの利益を大きくする方法
キャッシュフローをより良くしていくことが、不動産投資を成功に導くためのカギとなります。それでは、キャッシュフローの利益を大きくするためには、どのようなことをしたらよいのでしょうか。
投資用不動産のキャッシュフローの利益を大きくするための方法がいくつかあるため、ここからはその方法を紹介していきます。
ローン対策を行う
キャッシュフローの改善にはローン返済額をどれだけ圧縮できるかが重要です。ローン返済額の圧縮方法については、何種類かあるためそれぞれの方法ごとに説明します。
投資用不動産購入時に頭金を多く入れる
投資用ローンを借り入れる場合には、不動産購入代金の1割程度は頭金に入れてほしいと金融機関から言われるケースが多くあります。しかし、1割以上であれば良いため、できる限り多く頭金を入れておきます。
頭金を多く入れ、ローン返済期間を短くするのではなく、ローン返済額を減らすようにしましょう。不動産に投資する場合、売却までが計画のため、いずれ売却金額でローン残高を返します。そのため、ローンを返済するのは売却時にして、月々のキャッシュフローを良くし資金を貯蓄することを優先します。
各金融機関の金利を比較する
投資用ローンの金利は高い傾向にあるため、できる限り金利の安い金融機関を選択することがキャッシュフローを良くしていく方法になります。
ただし、金利はキャッシュフローを低下させる大きな要因ですが、ローンを借りるための経費も低下させる要因になるため、総合的にどの金融機関からローンを借りるのが良いのか検討することが必要です。
ローンの借り換えや繰り上げ返済まで考慮する
ローンはキャッシュフローを圧迫するため、急な出費に備えることができるほどの資金が貯蓄できたときには、ローンの一括返済をするようにします。
また、ローンの借り換えの費用を支払っても、返済額や返済総額が減る場合は、ローンの借り換えも検討します。ローンの内容1つでキャッシュフローが大幅に変わるため、少しでもローンの負担を減らしてくことを行っていきます。
投資用不動産購入は中古を選ぶ
新築の投資用不動産よりも中古の投資用不動産を購入したほうが、キャッシュフローが出やすい傾向にあります。新築の不動産は分譲会社などの利益が売却金額に乗っており販売価格が高く、キャッシュフローに余裕がでないことが多いからです。
ただし、中古不動産はローンを借り入れする場合、頭金が多く必要になるなどのローン借り入れ条件が付くことがあること、借入期間が短くなる可能性があることには注意が必要です。
家賃維持を意識する
投資用不動産を購入するときには、年数が経過しても家賃が維持できる不動産を選ぶようにします。利回りやキャッシュフローが高い不動産でも、年数経過により家賃が大幅に下落してしまうと、のちのち運用が難しくなってしまいます。
また、購入した後も清掃をこまめにするなど、家賃が下落しないような管理を行うことも重要です。
実績のある管理会社を選ぶ
管理会社の質の高さにより入居率が大幅に変わるため、管理会社選びも大切なことです。管理会社を選択するときは、入居率の実績や、委託料が適正なのかを確認しましょう。
管理会社は賃貸仲介も行っていることが多く、もしワンストップで管理から空き家になったときの入居者募集まで行ってくれる管理会社があれば、管理が楽になります。
まとめ
投資用不動産を購入するときの指標として、利回りがあります。利回りを確認することは大切ですが、あわせてキャッシュフローも確認する必要があります。
利回りは支出に対しての割合を示しており、キャッシュフローは実際に使用できるお金を示すものなので両者は違う指標です。そのため、両者を確認して投資用不動産を購入することが大切です。
キャッシュフローは不動産投資をスムーズに行うために重要で、いかにキャッシュフローを良くしていくかがカギになります。キャッシュフローを改善していく方法も多数あるため、キャッシュフローの改善に取り組みながら不動産投資を行い、事業を拡大していくようにしましょう。
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