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家・住宅購入コラム

住宅借入金等特別控除とは?その制度の内容や申請方法まで徹底解説!

住宅を建築したり、購入したりしたときには、住宅ローン控除を利用すると良い、と聞くことでしょう。実はこの住宅ローン控除は正式な名称ではなく、「住宅借入金等特別控除」と呼びます。
 
住宅借入金等特別控除は、所得税や住民税の税額を減らすことができる制度です。特に所得税を大きく減らすことができるため、住宅購入者のほとんどが利用しています。
 
しかし、住宅借入金等特別控除を利用するには、多くの条件をクリアしなければなりません。また、住宅借入金等特別控除は、2022年の税制改正により内容に変更がありました。そのため、最新の情報を正確に把握しておく必要があります。
 
本記事では、住宅借入金等特別控除とは何か、利用する条件や具体的な手続き方法など、住宅借入金等特別控除を徹底解説していきます。
 

住宅借入金等特別控除とは

 

 
住宅借入金等特別控除とは、住宅ローン控除とも呼ばれ、自宅を購入するときに住宅ローンを借り入れた場合に、住宅ローンの年末残高の一定割合を所得税額から控除できるという制度です。所得税を控除してもまだ控除が余る場合は、住民税も控除の余ったぶんを差し引くことができます。ただし、住民税を控除できる金額には上限が設けられています。
 
所得税や住民税が控除できる期間は、原則13年間です。13年もの間、住宅ローン年末残高の一定割合、所得税や住民税を控除することができます。
 
また、住宅借入金等特別控除には利用可能期限が設定されており、2022年7月27日現在、住宅借入金等特別控除が利用できるのは、2025年12月31日までに建築・購入した自宅に入居できることが条件になります。そのため、住宅借入金等特別控除が再度延長されなければ、2025年12月31日より後の入居日になった場合は、住宅借入金等特別控除が利用できないということになります。
 

住宅借入金等特別控除を利用するために必要な条件

 

 
住宅借入金等特別控除を利用する場合は、建物の条件、借りる人の条件などをクリアする必要があります。住宅借入金等特別控除の利用条件は、新築住宅を建築・購入したときと、中古住宅を購入したときでは利用条件が異なります。
 
ここからは、住宅借入金等特別控除を利用するための主な利用条件を、新築住宅と中古住宅で利用する場合に分けて紹介します。
 

新築住宅を建築・購入する場合の利用条件

 
新築住宅を建築・購入する場合の住宅借入金等特別控除の主な利用条件は、次のとおりです。
 
・購入者が自身の自宅として利用する住宅であること
・購入する住宅の床面積が50㎡以上であること(注1)
・住宅借入金等特別控除を利用する人の合計所得金額が2,000万円以下であること(注1)
・住宅の引き渡しまたは工事完了から6ヶ月以内に自宅として住み始めること
・店舗併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が自宅であること
・住宅ローンの借入金の返済期間が10年以上であること
 
注1:2023年末までに建築確認を受けた新築住宅で40㎡以上50㎡未満の場合は、合計所得金額が1,000万円以下であること。この場合の収入は所得のことであり、年収のことではありません。
 

中古住宅を購入する場合の利用条件

 
中古住宅を購入する場合の住宅借入金等特別控除の主な利用条件は、次のとおりです。
 
新築住宅を購入・建築した場合の要件に加え、次の要件を満たす必要があります。
 
・1982年1月1日以降に建築された住宅
 
・建築後に一度でも使用されたことのある住宅で、地震の安全性が高いとして、次のいずれかにより証明されたもの
1.耐震基準適合証明書(注1)
2.建設住宅性能評価書の写し(注2)
3.既存住宅売買瑕疵保険付保証明書(注3)
 
・一定の条件を満たした不動産業者が住宅を買取して再度売り出す住宅の場合、および一定の増改築などの工事を実施した場合、自宅として使用する住宅について行う増改築などが、一定の工事に該当することが「増改築等工事証明書」により証明されたものであること
 
・一定の増改築などの工事を実施した場合、増改築などの工事に要した費用の額が100万円を超えること
注1:自宅を取得した日から2年以内にその証明のための家屋の調査が終了したものに限ります
注2:自宅を取得した日から2年以内に評価されたもので、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)に係る評価が等級1、等級2、等級3であるものに限ります
注3:自宅を取得した日から2年以内に締結されたものに限ります
 

住宅借入金等特別控除の概要

 

 
住宅借入金等特別控除の利用条件をクリアした場合、所得税控除が利用できますが、どのような住宅を建築・購入するかにより利用できる控除額や控除年数などが異なります。
また、新築なのか中古なのかによっても内容が違います。
ここからは、住宅借入金等特別控除が利用できる場合、どのような建物を建築・購入するとどのような恩恵が受けられるのか解説します。
 

新築住宅を建築・購入した場合の計算方法

 
新築住宅を建築・購入した場合の所得控除の計算は、次の表を利用して計算します。
 

居住年月日 住宅の種別 限度額 控除額割合 控除期間
令和4年1月1日~
令和5年12月31日
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
5,000万円 0.7% 13年間
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円
その他の住宅 3,000万円
令和6年1月1日~
令和7年12月31日
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
4,500万円 0.7% 13年間
ZEH水準省エネ住宅 4,000万円
省エネ基準適合住宅 3,000万円
その他の住宅 2,000万円 10年間

 
入居する日付や建築する建物の性能により、所得税控除ができる金額が変わってきます。
計算例を挙げて、所得税控除を計算してみます。
 
【例】
入居年月日:令和6年10月1日
建築した建物:認定長期優良住宅
住宅ローン年末残高:5,000万円
 
まず、入居年月日が令和6年1月1日以降の認定長期優良住宅は、限度額が4,500万円と決まっているため、住宅ローン年末残高が5,000万円あっても、4,500万円で計算されます。
 
4,500万円(年末残高) × 0.7% = 31万5,000円(所得税控除の額)
 
この場合は、1年分の所得税から31万5,000円を控除できることになります。所得税から31万5,000円を引いても、まだ控除額が余る場合は、9.75万円を上限に住民税からも控除することができます。
 
また、この場合、年末残高が13年間、4,500万円以上ある場合には、31万5,000円 × 13年 =409万5,000円もの所得税を控除できることになります。
 

中古住宅を購入した場合の所得控除の計算方法

 
中古住宅を購入した場合の所得控除の計算は、次の表を利用して計算します。
 

居住年月日 住宅の種別 限度額 控除額割合 控除期間
令和4年1月1日~
令和7年12月31日
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000万円 0.7% 10年間
その他の住宅 2,000万円

 
中古住宅は新築住宅に比べて、所得税控除額を算出するための数字が抑えられています。
 
先ほど新築住宅の場合としてシミュレーションした計算と同じ条件で、中古住宅の控除額を計算してみましょう。
 
【例】
入居年月日:令和6年10月1日
建築した建物:認定長期優良住宅
住宅ローン年末残高:5,000万円
 
まず、入居年月日が令和4年1月1日以降の認定長期優良住宅は、限度額が3,000万円と決まっているため、住宅ローン年末残高が5,000万円あっても、3,000万円で計算されます。
 
3,000万円(年末残高) × 0.7% = 21万円(所得税控除の額)
 
年末残高が13年間、3,000万円以上ある場合には、21万円 × 10年 =210万円の所得税を控除できることになります。
 
このシミュレーション例の場合、新築住宅と比べ中古住宅は、年間約10万円、総額約200万円も控除額が少ないことになります。
 

2022年の税制改正による住宅借入金等特別控除の変更点

 
まとめ
 
借入金等特別控除は2022年の税制改正により、制度の内容が変更されています。2022年の税制改正により変更になったところを、表にまとめました。
 

改正前(2021年) 改正後(2022年・2023年)
控除期間 原則10年(特例で13年) 原則13年
控除率 1.0% 0.7%
借入限度額 長期優良住宅・低炭素住宅は5,000万円
それ以外の住宅は4,000万円
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅などにより借入限度額が異なり、 新築住宅・買取再販は3,000〜5,000万円、既存住宅は2,000〜3,000万円
所得上限 3,000万円以下 2,000万円以下
床面積 50㎡以上 原則50㎡以上
年間所得1,000万円未満の場合は
40㎡以上50㎡未満も可
住民税の
控除額上限
所得税の課税総所得金額等の7%
(最高13.65万円)
所得税の課税総所得金額等の5%
(最高9.75万円)

 
新しい住宅借入金等特別控除制度では、控除期間が延びたもののその他の事項については、条件内容が悪くなっています。また、新築住宅に関しては入居年月日により、一段と条件が悪くなるため、住宅借入金等特別控除を利用して新築住宅を建築・購入を考えている人は、早めに住宅建築・購入の検討を開始したほうが良いでしょう。
 

住宅借入金等特別控除の確定申告の申請方法や必要書類

 
書類
 
住宅借入金等特別控除を利用する場合、1回目の申請は確定申告により行わなければなりません。
 
これは、個人事業主などのフリーランスだけではなく、給与所得者である会社員でも1回目は確定申告をする必要があります。2回目以降の手続きは、給与所得のみの人に限り、会社が年末調整にて住宅借入金等特別控除の手続きを行ってくれます。
 
ここからは、1回目の住宅借入金等特別控除の確定申告の方法や、確定申告するのに必要な書類などを紹介していきます。
 
まず、確定申告は申告できる期間が決まっており、令和4年分の確定申告は令和5年2月16日~令和5年3月15日までです。
 
確定申告を行う方法は多くあり、自身が希望する方法により確定申告を行います。
確定申告ができる主な方法は、次のとおりです。
 
・税務署から確定申告書を入手、記載し税務署に持参する方法
・税務署から確定申告書を入手、記載し税務署に郵送する方法
・税務署に行き、税務署の確定申告書作成コーナーでe-taxを使用し確定申告書を作成・申告する方法
・国税庁のサイトから確定申告書を入手、記載し税務署に郵送する方法
・国税庁のサイトで確定申告書を作成、印刷し税務署に郵送する方法
・国税庁のサイトで確定申告書を作成、インターネット(e-tax)で申告する方法
 
方法はさまざまありますが、どのように記載したらいいのかわからないなど、疑問・質問があれば税務署に相談にいき、アドバイスを受けてから必要書類を作成し提出しましょう。わからないまま自己流で作成すると、税務署からの更生などの手続きを受けてしまう可能性が高くなります。
 
また、住宅借入金等特別控除の申請に必要な書類は、次のとおりです。
 

書類名 書類入手方法
確定申告書(A)
(確定申告書には「A」と「B」がありますが、会社員は「A」を使用)
税務署から入手や国税庁のサイトから入手
(特定増改築等)
住宅借入金等特別控除額の計算明細書
税務署から入手や国税庁のサイトから入手
本人確認書類(aまたはb)の写し
a マイナンバーカード
b マイナンバー通知カードまたはマイナンバーが記載されている住民票

運転免許証やパスポートなどの本人確認書類
市町村などの自治体や警察署、運転免許センター、旅券センターで取得
建物・土地の登記事項証明書 法務局で入手
建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)
のコピー
不動産売買契約書は、売主と締結したもの
請負契約書は住宅建築する建築会社と締結したもの
源泉徴収票 勤務先から入手
住宅ローンの残高を証明する「残高証明書」 住宅ローン借り入れした金融機関から入手
毎年金融機関から郵送されてきます
(一定の耐震基準を満たす中古住宅の場合)
耐震基準適合証明書または住宅性能評価書の写し
住宅建築・購入した不動産会社から入手
(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合)
認定通知書の写し
住宅建築・購入した不動産会社から入手

 

住宅借入金等特別控除の年末調整の申請方法や必要書類

 

 
会社員の場合、住宅借入金等特別控除の2回目以降は年末調整で住宅借入金等特別控除の申請を行います。
 
この年末調整で必要な書類は、次のとおりです。
 
・給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
 
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書(以下、控除申告書)とは、確定申告をした年の9月~10月くらいに税務署より郵送されてきます。
 
控除申告書は、毎年年末調整で1枚使用し、控除期間が13年であれば13枚必要です。この期間により必要な枚数分、税務署より一括して郵送されてきます。
 
なお、この控除申告書には税務署で印字してある部分があるため、もし紛失してしまった場合には、税務署に再交付の依頼を行わなければなりません。
 
住宅取得資金にかかる借入金の年末残高等証明書(以下、残高証明書)とは、毎年10月前後に住宅ローンを借り入れている金融機関から郵送されてくる書類で、金融機関により名称が違っていたりします。また、1回目の残高証明書は、10月前後に郵送されてこないケースがあります。2回目以降は、年末調整に間に合うような時期に金融機関から郵送されてきます。
 

まとめ

 

 
住宅借入金等特別控除は、一般的に「住宅ローン控除」と言われ、住宅ローンを借り入れて自宅を購入した場合、一定条件を満たすことにより所得税や住民税が控除できる制度のことです。
 
住宅借入金等特別控除の利用条件は詳細に決められており、控除額の計算も入居年月日や建築・購入する建物性能によって控除額が変わるなど、なかなかすべてを把握することが難しい制度です。そのため、住宅を建築・購入する場合には、不動産会社に住宅借入金等特別控除のことを相談しながら進めていきましょう。
 
また、会社員でも1回目の住宅借入金等特別控除の申請は確定申告で行わなければなりません。初めての確定申告の場合には、なかなか申請が難しいという人もいるため、税務署などに相談して進めていくことをおすすめします。
 
住宅借入金等特別控除を理解し、専門家に相談したうえで、夢のマイホームを節約しながら手に入れるよう計画していきましょう。

浅見 浩

所属会社:
ライフサポート株式会社
保有資格:
ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士

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