グリーン住宅ポイント制度の要件を解説!対象期間やポイント活用法も
グリーン住宅ポイント制度をご存じでしょうか。
本記事では、グリーン住宅ポイント制度の要件をわかりやすく解説します。あわせて、ポイント活用法やポイント発行申請・完了後報告の期限などについても紹介しますので、制度の内容や特徴を知りたい人は、ぜひお役立てください。
グリーン住宅ポイント制度とは?対象となる要件や対象期間
グリーン住宅ポイント制度とは、グリーン化社会の実現と、ポストコロナで停滞ぎみの経済回復を図るために国が施策した制度です。
一定以上の性能を有する住宅を取得する人などを対象に、追加工事の充当や商品に交換できるポイントが発行されます。
2020年12月15日~2021年10月31日までが対象期間となっており、この期間中に契約締結と申請手続きをすることが、ポイント発行の一つ目の条件です。
ここでは、ポイント対象となる4つの要件を詳しく解説します。
注文住宅の建築もしくは分譲住宅購入
対象期間中に、一定の省エネ性能等を有する住宅を、自ら住むために建築もしくは購入した
下記の2つの新築住宅が対象です(変更契約は対象外)。
1.高い省エネ性能等を有する住宅
高い省エネ性能等を有する住宅とは、次のいずれかに該当する住宅です。
・認定長期優良住宅
・認定低炭素建築物
・性能向上計画認定住宅
・ZEH
このように、「断熱」・「省エネ」・「創エネ」という地球環境にやさしい住宅が対象です。
2.一定の省エネ性能を有する住宅
一定の省エネ性能を有する住宅とは、日本住宅性能表示基準で定める「省エネ基準」に適合する以下の住宅です。
・断熱等性能等級4以上
・一次エネルギー消費量等級4以上
ただし、断熱等性能等級4以上を満たさなくとも、建築物省エネ法で規定された外装や窓などの性能基準を満たしていれば、ポイント対象に含まれます。
(参照:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001427131.pdf)
既存住宅の購入
既存住宅の場合、対象期間内に所有者が自ら居住することを目的に、既存住宅を購入し、契約を締結することが条件です(変更契約は対象外)。
既存住宅とは、不動産登記事項証明書において、新築と記載された日付が2019年12月14日以前の住宅を指します。
売買契約額が100万円(税込)以上かつ、以下の内容に該当する住宅が対象です。
・東京圏に※1移住するための住宅であること
・災害リスクが高い区域から移転するための住宅であること
・空き家バンク登録住宅であること
・住宅の除却※2に伴い購入する既存住宅であること
※1東京圏から移住:一定期間、東京23区内に在住または東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県 条件不利地域を除く)以外への移住
※2住宅の除却:固定資産を取り壊したり、廃棄したりすること(2020年12月15日以降に除却したものに限る)
なお、空き家バンクについては、地方公共団体、災害リスクが高い地域については建築士による証明が必要です。
(参照:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001427133.pdf)
リフォーム工事
リフォーム工事の場合、対象期間内に所有者等が施工者に制度の対象となるリフォーム工事を発注し、契約を締結したものが対象です(変更契約は対象外)。
所有者等とは、マンションやアパートなどの全住戸のオーナーや、管理組合の人も含まれます。
制度の対象となるのは、「環境」、「安全・安心」、「健康長寿・高齢者対応」に資する
以下のリフォーム工事です。
・一定の省エネ性や耐震性
・バリアフリー性能等
住宅の所有者がポイントを有効に活用し、安全・安心で快適な住まいへとリフォームすることを目的としています。
工事内容の詳細は、以下の7つです。
1. 開口部の断熱改修
2. 外壁、屋根、天井又は床の断熱改修
3. エコ住宅設備の設置
4. バリアフリー改修
5. 耐震改修
6. リフォーム瑕疵保険への加入
7. 1~6のリフォーム工事の契約から3ヵ月以内の既存住宅を購入および契約
1~3は必須工事となっており、それとあわせて工事を実施することで、4〜6の工事もポイント申請の対象となります。
(参照:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001427135.pdf)
賃貸住宅の建築
賃貸住宅の場合、対象期間内に賃貸用の共同住宅等を建築する人が、契約を締結することが条件です(変更契約は除外)。
また、すべての住戸がトップランナー基準で床面積40㎡以上の住宅でなければなりません。
トップランナー基準とは、省エネ法(エネルギー使用の合理化に関する法律)に基づいた「機器のエネルギー消費効率基準」のことです。
これは、一次エネルギーの消費量を抑えるために設けられた基準で、この基準をクリアすることが求められています。
(参照:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001427136.pdf)
グリーン住宅で発行されるポイント数
グリーン住宅では、先にお伝えした4つのポイント対象や、その中身によって発行されるポイント数が異なります。
特に、ポイント加算の特例となっている住宅や工事は、60万ポイントも加算されることがあるので、活用しない手はありません。
ここでは、対象ごとの発行ポイント数を表にまとめ、わかりやすく解説します。
新築住宅の発行ポイント数
新築住宅の建築および購入の発行ポイント数は以下のとおりです。
住宅の性能 | 基本ポイント | ポイント加算 | 発行ポイント |
---|---|---|---|
高い省エネ性能等を有する住宅 | 40万pt/1戸 | 60万pt/1戸 | 60万pt/1戸 |
一定の省エネ性能を有する住宅 | 30万pt/1戸 | 30万万pt/1戸 | 60万pt/1戸 |
(参照:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001427131.pdf)
ポイント加算の対象となる住宅に該当すると、基本ポイントとポイント加算を足した合計数が発行されます。
ポイント加算に該当するのは、以下の内容です。
・東京圏から移住※1するための住宅であること
・18歳未満の子供が3人以上いる多子世帯が取得する住宅であること
・祖父母、※夫婦、子どもの三世代が暮らすために取得した住宅であること
・災害リスクが高い区域からの移住のために取得した住宅であること
※1 東京圏から移住:一定期間、東京23区内に在住または東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県 条件不利地域を除く)以外への移住
上記内容が一つでも当てはまると、最大で100万ポイントが発行されます。
既存住宅の発行ポイント数
既存住宅の発行ポイント数は、以下のとおりです。
住宅の性能 | 基本ポイント |
---|---|
1. 東京圏から移住するための住宅 2. 災害リスクが高い区域から移転するための住宅 3. 空き家バンク登録住宅 |
30万pt/1戸 住宅の除却を伴う場合は45万pt/1戸 |
・住宅の除却に伴い購入する既存住宅 | 15万pt/1戸 |
(参照:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001427133.pdf)
住宅性能が1~3に該当かつ、住宅の除却を伴う既存住宅の購入をすると15万ポイントが加算され、最大45万ポイントが発行されます。
リフォームの発行ポイント数
リフォームの発行ポイント数は以下のとおりです。
若者・子育て世帯 | 一般世帯(若者※1・子育て世帯※2以外) |
---|---|
既存住宅購入の加算あり:60万pt 既存住宅の購入なし:45万pt |
安心R住宅※3を購入しリフォーム工事を行う場合:45万pt 上記以外のリフォームを行う場合:30万pt |
※1 若者とは、2020年時点で40歳未満の世帯
※2 子育て世帯とは、2020年12月15日時点で18歳未満の子を有する世帯、またはポイント申請時点で18歳未満の子を有する世帯
※3 安心R住宅とは、耐震性があり、建物状況調査委等(インスペクション)が行われた住宅のこと
(参照:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001427135.pdf)
リフォームの場合、1申請あたりの合計ポイント数が5万ポイント未満の場合は、ポイント発行の対象外となります。
なお、制度を利用するには、リフォーム工事の施工会社にインスペクター(住宅診断士)が在籍していなければなりません。
また、点検記録を保管し情報提供することも必須条件となっています。
賃貸住宅の発行ポイント数
賃貸住宅の場合、1戸あたり「10万ポイント×総戸数」という計算です。
例えば、総戸数が6戸の賃貸住宅を取得した場合、「6戸×10万ポイント」となり、60万ポイントが発行されます。
(参照:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001427136.pdf)
グリーン住宅ポイント活用法
発行されたポイントは、菌・ウイルス対策になる家電製品などに交換できるほか、防災に対応するための追加工事にも利用できます。
詳しくはどのような内容になっているのでしょうか。ポイントの活用法を紹介します。
商品と交換する場合
交換商品は、以下の7つのテーマに分けられており、特徴的なのは新型コロナウイルス感染症の影響による生活洋式の変化に対応していることです。
1. 新たな日常に資する商品
2. 省エネ・環境配慮に優れた商品
3. 防災関連商品
4. 健康関連商品
5. 家事負担軽減に資する商品
6. 子育て関連商品
7. 地域の復興に資する商品
具体的には、パソコンやタブレット、空気清浄機などの商品と交換できます。
追加工事と交換する場合
発行されたポイントは、以下の追加工事に交換できます。
・ワークスペース設置:リビング、ダイニング、寝室などへのワークスペース設置など
・音環境改善:遮音タイプのドアへの変更や、外壁開口部の遮音性向上工事など
・家事負担軽減:ビルトイン食洗機、掃除しやすいレンジフード、浴室乾燥機など
・菌・ウイルスの拡散防止:タッチレス水栓、玄関回りの洗面所設置など
・換気設備:給気と排気を同時に行える換気設備、換気・通風機能付き玄関扉など
・災害対策:防犯シャッター、感知式リロック機能付き吊戸棚設置など
・停電・断水対策:非常用発電設備、蓄電池など
上記のように、発行されたポイントは、「新たな日常」や防災に対応した追加工事と交換が可能です。
ポイント発行の申請手続きと工事完了報告
ここでは、ポイント発行申請手続きと工事完了報告の詳細をお伝えします。
ポイント発行申請手続きは誰が行うの?
ポイント発行の申請を行えるのは、工事を請け負う「工事発注者」または「購入者本人」です。
冒頭でもお伝えしたとおり、ポイントが発行される条件は、対象期間内の契約締結ほか、申請手続きもしなければなりません。
申請は、基本的に工事完了後になりますが、下記のような大がかりな工事に関わるケースでは、工事完了前でも必要書類が整えば申請ができます。
・注文住宅の新築
・新築分譲住宅の購入
・賃貸住宅の新築
・リフォーム(請負金額が税込1,000万以上)
このようなケースに該当し、工事完了前に申請を行った場合は、工事完了後に「完了報告」の義務があります。
工事のビフォー・アフター写真の提出も求められるので、申請者は漏れのないよう対応しなければなりません。
ポイント発行申請期間
ポイント発行の申請期間は、2021年4月初旬~遅くとも2021年11月30日(オンライン申請は2021年12月15日)までが期限です(当初は、2021年10月31日まで)。政府が公表する経済対策は、予算の執行状況に応じて早まることが多く、グリーン住宅ポイント制度も例外ではありません。
完了前申請と完了後申請は申請の流れが異なる
「完了前申請」は、契約を締結してから建物の引き渡し・入居前に申請を行う流れとなっており、引き渡し後に「完了報告」の提出が必要です。
万が一報告を怠ると、利用済みポイントの返金が求められるので注意しなければなりません。
一方、「完了後申請」については、建物の引き渡し・入居後に申請する流れとなっています。
完了報告のスケジュール|住宅を対象に期限の延長が発表
2022年5月31日が完了報告の住宅を対象に、完了期限を2022年8月31日に延長することが発表されました。
その背景には、資材・設備の供給や工期の遅延があります。
事前に期限までに完了報告を提出するのが難しい場合は、その旨を申告することで延期が可能です。
完了報告のスケジュールは、工事内容ごとに提出期限が決まっていますので、スケジュールを把握しておくことが必要となります。
ポイント発行の申請が済んでおり、完了報告の提出がまだの人は、速やかに報告しましょう。
ここからは、工事内容ごとの完了報告の提出期限を表にまとめています。まだ、完了報告期限が過ぎていない工事もありますので、ぜひ参考にしてください。
1. 注文住宅、新築分譲住宅の完了報告期限
追加工事を伴う場合 | 2022年2月15日 |
戸建て住宅 | 2022年8月31日※1 |
共同住宅等で階数が10階以上 | 2022年11月30日 |
共同住宅等で階数が11階以上 | 2023年5月31日 |
※1:2022年5月31日→2022年8月31日に延長
2. 1,000万円以上のリフォーム工事等の完了報告期限
追加工事を伴う場合 | 2022年2月15日 |
戸建・共同住宅等(耐震改修ない) | 2022年8月31日※1 |
共同住宅等で階数が10階以上(耐震改修あり) | 2022年11月30日 |
共同住宅等で階数が11階以上(耐震改修あり) | 2023年5月31日 |
※1:2022年5月31日→2022年8月31日に延長
3. 賃貸住宅の完了報告期限
2022年2月15日 |
上記は、2022年6月中旬の情報です。速報が入る可能性もあるため、最新情報は定期的にチェックしましょう。
住まいづくりを応援する支援策は活用しよう
大きな買物の一つである住宅購入は、少しでもお得に取得できたら嬉しいですよね。環境に配慮した住宅や設備を取り入れることは、地球を守る一助となるほか、暮らしに大きなメリットをもたらしてくれます。
グリーン住宅ポイント制度に限らず、近年は環境配慮や落ち込んだ経済回復を図るためのさまざまな支援策が充実しています。
政府は、ポストコロナに向けた経済対策の柱として「グリーン社会の実現」というものを掲げており、その施策の一つが、グリーン住宅ポイント制度でした。
今後も、高い省エネ性能やCO2削減を実現するために、住宅取得者にメリットとなる制度が発表されるかもしれません。
活用しない手はないので、お得なポイントや補助などの支援策を見逃さないようにしましょう。
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平野 直子
- 所属会社:
- FPオフィスLife&Financial Clinic
- 所属会社のWEBSITE:
- http://www.mylifeplan.net
- 保有資格:
- CFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士、 貸金業務取扱主任者資格、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター2級
- 著書:
- 30代夫婦が働きながら4000万円の資産をつくる考え方・投資の仕方
- All about:
- 「夫婦FP・平野泰嗣と直子が応援!ふたりで学ぶマネー術」担当ガイド
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