住宅ローンの審査に落ちる理由とは?審査通過のポイントと落ちたときの対策
住宅ローンの審査に落ちる理由とは?審査通過のポイントと落ちたときの対策
住宅ローンの審査に落ちた経験のある人の割合が、全体の1割にも及ぶという事実をご存じでしょうか。
住宅ローンを組む人の多くは、入念に資金計画を練り、月々の返済金額のシミュレーションをしたうえで申し込みを行います。それにもかかわらず、審査に落ちてしまう人が1割もいるということに、驚く人も少なくないでしょう。
ほとんどの金融機関では、審査に落ちた場合の理由を開示していません。しかしながら、過去に住宅ローンの審査に落ちた人の状況や申込条件などから、審査に通りやすい人と通りにくい人の傾向を知ることは可能です。
そこで本記事では、住宅ローンに落ちる理由と、落ちた場合の対策について解説します。「事前審査」と「本審査」の審査内容にも着目しながら、希望に合った借入金額・返済プランで融資を受けるためのポイントを押さえておきましょう。
1.事前審査で落ちる理由
住宅ローンの審査は「事前審査」と「本審査」の2段階に分けて行われます。
「事前審査」とは、申込者から自己申告のあった内容を基に行われる簡易審査のことをいい、不動産の売買契約を締結する前に、申込人に支払能力があるかどうかを判断します。
事前審査で落ちる理由として考えられるのは、主に下記の4項目です。
1)個人信用情報に問題がある
2)完済時の年齢が80歳以上である
3)収入が不安定
4)返済負担率が高い
順を追って解説していきます。
1)個人信用情報に問題がある
金融機関が申込者に対して融資を行うかを判断する要素として重要なのが、「住宅ローンを滞納なく完済してくれる人か」ということです。
各個人が過去に組んだローン契約や、現在の借入状態、クレジットカードの返済履歴などは、「個人信用情報機関」と呼ばれる機関に登録されています。この個人信用機関には、ローンの返済を滞納したり債務整理が行われたりといった「金融事故」の記録も残されます。
ここで問題となるのが、過去の金融事故情報は、およそ5年間は記録として残るという点です。金融機関は個人信用機関に登録されている情報を基に、申込人が確実にお金を返してくれる人かを判断します。つまり、金融事故情報があると「融資をしても返済してもらえないかもしれない」と審査されてしまい、住宅ローンの審査が通らなくなってしまうのです。
なかでもクレジットカードの支払いが滞り、カード会社からの督促を受けてから返済するということを続けている人が、それを「支払滞納」と認識していないケースが目立ちます。クレジットカード利用料の返済が滞るのも立派な「支払遅延」です。「最終的にはちゃんと支払っているんだから、督促が来てからでも問題ないだろう」と軽く見ず、毎月期日までに返済するようにしましょう。
自身の信用情報に不安があるという人は、住宅ローンの審査申込の前に、自身の個人信用情報を取り寄せるという方法もあります。情報開示には手数料がかかり、また開示されるまでに2週間程度かかるため、必要な場合は早めに申請することをおすすめします。
2)完済時の年齢が80歳以上である
住宅ローンの多くは、30年や35年といった長い期間にわたって借入金を返済していくことになります。返済にかかる期間が長いと、そのぶん債務者がローン完済までに病気や怪我をしてしまったり、死亡してしまったりするリスクが高まります。そのため多くの金融機関では、「申込者がローンを完済するまでに80歳を迎えているかどうか」を審査基準としています。
ただし、申込者の年齢が若ければ審査に通りやすいかというと、そうでもありません。20代のうちは就業年数が浅かったり、融資開始後に転職する可能性があり、収入が不安定であると判断されることもあるためです。もちろん、20代のうちは住宅ローンを組めないということではありませんが、一般的にローンを組み始める適齢期は30代からと言われています。
3)収入が不安定
申込者に安定した収入があるかどうかも、住宅ローンの審査でよく見られるポイントです。住宅ローンは多くの人が20年・30年と長期にわたって借り入れを行うため、融資が実行されるタイミングだけでなく、その後も収入が途絶えないかという点も重要なのです。
勤続年数の長い正社員の人や公務員の人は、比較的住宅ローンの審査に通りやすい傾向にあります。一方で、非正規雇用の人や自営業の人は収入の安定性に不安があるため、ローン審査はやや厳しくなります。また、転職したばかりの人も審査に通りにくいと言えます。
4)返済負担率が高い
申し込む住宅ローン以外に借入を行っている場合も、住宅ローンの審査に通りにくくなります。その理由は、「返済負担率」が高くなってしまうからです。
「返済負担率」とは、その人の年収に占める「年間返済額」の割合のことをいいます。ここでいう「年間返済額」とは、審査を申し込んでいる住宅ローンだけではなく、他の金融機関から借り入れている分も含めての総額です。
返済負担率は、一般的には年収に対して20~25%程度におさめるようにすると、完済まで無理なく返済を継続できると言われています。逆に言うと、この割合を超えてローンを組んでしまうと、将来的に返済不能に陥る可能性が高くなるということです。
すでに他の金融機関で借入を行っているところに住宅ローンを申し込む場合、住宅ローンを組むことで、トータルの返済負担率が年収のどの程度を占めることになるかをチェックされる、ということを押さえておきましょう。
なお、他行からの借り入れ状況については、個人信用情報機関に記載されている情報を基に調査されることになります。
2.本審査で落ちる理由
事前審査を通過して不動産の売買契約を締結したら、いよいよ本審査に申し込みます。
本審査で見られる内容は主に2つ。1つは事前審査で申告された内容と相違がないか、もう1つは不動産の担保評価です。
本審査は事前審査で提出された内容を基に審査されるため、本審査の段階で落ちる可能性はそこまで高くはありません。しかしながら、事前審査を通過しても本審査で融資を断られた経験のある人も5%程度いることから、確実に融資を受けるためには対策を練っておく必要があります。
本審査に落ちる理由として考えられるのは、主に以下の4つです。
1)事前審査での申告内容と異なる部分がある
2)健康状態に問題がある
3)購入する不動産の担保価値が低い
4)本審査までに転職した
それぞれについて詳しく解説していきます。
1)事前審査での申告内容と異なる部分がある
本審査は事前審査で提出された内容を基にして、申込者や購入する不動産についてさらに詳細に審査していきます。本審査で提出された書類の内容と、事前審査時に自己申告していた内容に異なる部分がある場合、事実確認や追加書類の提出などで時間が余計にかかるだけでなく、最悪の場合融資を受けられない可能性もあるのです。
確実に住宅ローンの審査承認を得るためには、まず事前審査で虚偽の内容を申告しないことが重要です。そのうえで、記入する書類には事前審査で申告した情報と食い違いが起こらないように配慮し、その他の提出書類も不備なく揃えておくようにしましょう。
2)健康状態に問題がある
持病がある、または生活習慣病のリスクが高い申込者の場合は、住宅ローンの審査に通りにくい傾向にあります。その理由は、「団体信用生命保険(団信)」の加入要件を満たせない可能性があるためです。
「団体信用保険」は住宅ローン専用の生命保険で、万が一債務者が死亡したり高度障害になったりした場合に、債務者に代わってローンの残債を肩代わりしてくれるというものです。住宅ローンの借り入れを行う場合、多くの金融機関が団信への加入を義務付けています。つまり、団信の加入要件を満たしていない場合は、他の金融機関で住宅ローンを申し込んでも、審査が下りない可能性が高いということになります。
しかし、団信に加入できなければ住宅ローンを組めないのかというと、そうではありません。
一部の金融機関では、「ワイド団信」と呼ばれる団信への加入により住宅ローンを組めるとしています。「ワイド団信」は、一般的な団信よりも保険の引き受け範囲が広く、高血圧や糖尿病、肝機能障害などを理由として団信に加入できなかった人でも、加入できる可能性があります。ただし、ワイド団信を取り扱っている金融機関は少ないこと、また一般的な住宅ローンと比較して、金利が高くなる傾向にある点に注意が必要です。
ワイド団信にも加入することが難しい場合には、「フラット35」も検討する必要があります。「フラット35」は団信への加入は任意とされており、団信に加入できないことを理由に他の金融機関で住宅ローンを組めなかった人でも、融資を受けられる可能性がある点がメリットです。しかしながら、団信に加入しないぶん、万が一の場合でも住宅ローンの残債を肩代わりしてもらえません。ローン残債の返済は、遺族が引き継がなければならないというリスクがある、という点を覚えておきましょう。
3)購入する不動産の担保価値が低い
住宅ローンは購入する不動産を担保にするため、どれほどの担保価値があるかが重要になります。万が一債務者が返済期間中に返済不能になってしまった場合、担保である不動産を売却し、その売却金額をローン残債の返済に充てるためです。
金融機関によっては、事前審査の際に購入を検討している不動産の情報を提出する場合もありますが、一般的には本審査時に精査することになります。そのため、不動産の担保価値が融資金額に及ばない場合は、ローンの審査に落ちる可能性もあります。
4)本審査までの間に転職した
まれに事前審査と本審査の間に転職をする人がいますが、確実に住宅ローンの審査を通過したい場合はおすすめしません。
すでに解説したとおり、金融機関は申込者の返済能力を判断する材料として、審査時の年収だけでなく、勤続年数についても審査します。事前審査と本審査の間に転職してしまうと、せっかく事前審査で評価されていた収入の安定性が揺らぐことになりかねません。
なお、転職や退職を検討している場合は、本審査通過後ではなく「融資開始後」にする必要があります。住宅ローンの審査は「融資開始時に安定した収入があること」を条件に承認されます。つまり、融資が開始される前に転職・退職をして収入が変化してしまうと、「承認取消」により融資を受けられなくなってしまうのです。たとえ転職後のほうが収入が上がるという場合でも、金融機関は認めてくれません。
3.住宅ローンの審査に落ちた場合はどうする?
冒頭でも触れたとおり、ほとんどの金融機関では、住宅ローンの審査に落ちた理由を開示してくれません。そのため、万が一審査に落ちてしまった場合に、「自分はお金を借りられないのか」と肩を落としてしまう人もいます。
しかし、一度住宅ローンの審査に落ちたからといって、融資を諦める必要はありません。申込先や申込内容を変えたり、他の借り入れ状況を整理してから申し込んでみたりといった対策をとることが可能です。
1)申し込む住宅ローンを変える
希望していた住宅ローンの審査に落ちてしまったら、まずは他の金融機関の住宅ローンに審査の申込をしてみましょう。住宅ローンの審査基準は金融機関によって異なるため、ある金融機関では審査が下りなかった申し込み条件でも、他の金融機関では融資が受けられたというケースがよく聞かれるためです。
なお、一度に申し込む住宅ローンは、必ずしも1つでないといけないという決まりはありません。同時に複数の住宅ローンに申し込むことで、より自身に合った条件で融資を受けられる可能性があったり、希望していたローンの審査に落ちたときの滑り止めに使えたりもできます。
1)申込内容を変える
同じ住宅ローンに再度審査の依頼を出す場合は、申込内容を変えてみましょう。なかでも返済期間や借入金額は見直しやすい項目で、自身の収入や現在の他からの借り入れ状況に合わせて、返済プランを無理のないものに見直すことで審査に通る可能性があります。
それでも審査に落ちてしまう場合は、すでに解説したように、他の金融機関の住宅ローンに切り替えたり、担保にする不動産を変更したりといったことを検討する必要があります。
3)他の借り入れ状況を整理しておく
住宅ローンの審査に落ちる理由のなかで、他の金融機関からの借入があることを挙げました。同じ住宅ローンに再審査の申込をする場合でも、他の金融機関に切り替える場合でも、他からの借入がある人は一度整理してから申し込むことをおすすめします。
特にカードローンやリボ払いは金利が高く、借入金額が高いものと判断される傾向にあります。高利子のローンから可能な限り返済しておくことで、返済負担額を減らし、希望の借入金額で融資を受けられる可能性が高まるのです。
まとめ
各金融機関による住宅ローンの審査基準や、落ちた場合の理由などは、詳細に教えてもらうことはできません。しかしながら、過去に住宅ローンの審査に落ちた人には、本記事で解説したような傾向があり、それらを押さえることで審査に落ちるリスクを減らせる可能性があります。
住宅ローンの審査には、本審査だけでも1~2週間、状況によっては1ヶ月以上かかることも少なくなくありません。万が一審査に落ちてしまうと、不動産の売主に対して引き渡し日の交渉をしたり、場合によっては売買契約を解除しなくてはいけなくなる可能性もあります。そのためローン審査に落ちるリスクは極力減らし、確実に融資を受けられるように対策を練っておきたいところです。
住宅ローンの審査に通るためには、無理のない返済を提示する必要があり、そのためには自身の現在だけでなく、将来も見据えたライフプランを立てておくことが大切です。
向こう20年・30年のライフプランを一人で立てることが難しいと感じる人は、ファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。特にファイナンシャルプランナーが在籍している不動産会社であれば、不動産の購入資金だけでなく、不動産を所有することで必要になるランニングコスト、住宅ローンのプランの選び方など総合的にアドバイスを受けられます。
人生の半分近くを返済に充てることになる人も少なくない住宅ローン。長期的にゆたかな暮らしを送れるように、計画的かつ賢く活用するようにしましょう。
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