住宅ローン金利の相場とは?金利の種類と特徴を知って賢く借り入れよう
住宅ローンの借り入れを行う際について回る「住宅ローン金利」は、トータルの返済負担額を大きく左右する重要な要素です。
住宅ローンの金利タイプには「変動金利型」「固定金利期間選択型」「全期間固定金利型」の3種類があり、金融機関によって適用される最低金利・最高金利が異なります。また、各金融機関が提供している優遇割や、申込者の審査内容によっても融資実行時に適用される金利が大きく変わります。実際に審査の申し込みをして審査結果を比較することで、より条件のいい住宅ローンで借入を行うことが可能になるのです。
しかしながら、それぞれの金利タイプの特徴をしっかりと理解し、自身のライフプランや返済計画に合った住宅ローンを選ばないと、選んだ金利タイプによっては返済負担額が大幅に増額され、月々の返済が苦しくなってしまう可能性もあります。
そこで本記事では、2022年6月時点での金利相場を参考にしながら、どのような観点から金利タイプを選択し、どのようなポイントに着目して融資を受ける金融機関を決定すべきかについて解説します。
1.2022年6月現在の金利相場
住宅ローン金利の相場を把握するために、まずは2022年6月時点での住宅ローン金利幅を見てみましょう。
金利タイプ | 最低金利 | 最高金利 |
---|---|---|
変動金利 | 0.289% | 5.000% | 固定金利期間選択型(1年) | 0.850% | 2.850% |
固定金利期間選択型(2年) | 0.280% | 2.100% |
固定金利期間選択型(3年) | 0.340% | 2.200% |
固定金利期間選択型(5年) | 0.510% | 3.775% |
固定金利期間選択型(10年) | 0.550% | 4.875% |
20年固定 | 1.000% | 5.350% |
35年固定 | 0.850% | 6.000% |
(参照元:一般社団法人住宅金融普及協会『住宅ローンの金利情報』https://www.sumai-info.com/information/kinri.html)
2022年6月の金利相場は、変動金利で0.289%~、固定金利期間選択型で0.280%~、全期間固定金利・フラット35で0.850%です。
上記の表から見てわかるように、相場といえども最低金利と最高金利の間に大きな幅があり、金融機関によって適用される住宅ローン金利に開きがあります。また、変動金利と固定金利期間選択型、全期間固定金利のどれを適用するかによっても金利が大きく変わるというということを知っておきましょう。
2.日本の住宅ローン金利の現在と今後
住宅ローンの現在の相場は調べればわかるものの、みなさんが気になるのは「今住宅ローンを組むべきか」、そして「これからの住宅ローン金利はどのように変動するか」ということではないでしょうか。
1)日本経済低迷による約30年に渡る超低金利状態
日本ではこれまで約30年にもわたり、金利が著しく低い「超低金利」の状態が続いています。その原因は日本経済の低迷です。
1989年にバブルが弾け、1990年代から低金利に突入した日本では、2000年頃のITバブルの崩壊、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災と不況が続き、2020年以降は新型コロナウイルスの感染拡大により景気回復の兆しが見えずにいます。
景気が回復しないままでは、物を買う人が増えないためお金を借りる人も増えません。不景気な状況が続いているということは、長期にわたり人々の経済活動が活性化されず、住宅ローンをはじめとした融資への需要が低く、金利も低いままということになるのです。
2)コロナ収束後に住宅ローン金利上昇の可能性
新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから早2年、なかなか景気回復の兆しが見えないことから、向こう1~2年はこの低金利の状態が続くと予想する専門家もいます。
その一方で、新型コロナウイルスの感染拡大が収束を見せ、景気が回復してくると、これまで低水準だった金利が上昇する可能性もあります。
事実、アメリカでは2022年3月・5月に利上げが行われたことにより、住宅ローン金利も11年前と同等の水準まで上昇してきており、日本における固定金利型の住宅ローンも上昇し始めているのです。
数ヶ月以内に大幅に金利が上昇するということは考えにくいですが、今後は変動金利・固定金利ともに利率が上昇するということを念頭において、これからの行動を決めていく必要があります。
3)住宅ローン金利の変動は誰にも予測できない
住宅ローン金利の利率は経済状況に大きく左右される側面があるため、今後どれほどの期間低金利状態が続くのか、はたまた数ヶ月後には上昇の兆しが見えるのかは、誰にも予測できません。
しかしながら、現在の日本経済においては金利が非常に低い状況が続いており、確実に住宅を購入する・住宅ローンを組むことが決定している人にとっては、「今が借り時」という考え方もできるでしょう。
3.住宅ローン金利とは?
現在の日本における住宅ローン金利が非常に低いことがわかっていても、そもそも住宅ローン金利がどのようなものかがわかっていないと、賢い借り入れはできません。
「住宅ローン金利」とは、住宅ローンで借り入れたお金を返済する際に上乗せして支払う利息のことをいいます。
金利が高ければその分返済額の総額も増え、逆に金利が低ければ返済額に上乗せされる分も少なくなるという仕組みです。
1)住宅ローン金利が重要な理由は?
住宅ローンを借り入れる際に金利に注目すべき理由は、金利によってトータルの返済額が大きく変動するためです。
利率の差が0.1%というとわずかな差に見えるかもしれませんが、住宅ローンは数千万円単位での借入を行うことがほとんどです。さらに最大で35年にわたってローンを返済し続けるということも考慮すると、その差はとても大きいものになってしまいます。
借入を行う際は、各金融機関がHPやパンフレットに記載している利率だけに目が向きがちです。しかしながら、金融機関ごとに用意している返済プランだけでなく、各家庭ごとに適した金利タイプも異なります。目先の利率だけに惑わされることなく、20年30年後のライフプランを見据えたうえで、どの住宅ローンを利用するかを慎重に検討する必要があるのです。
2)住宅ローン金利の表示の種類
住宅ローンについて調べていると、「店頭表示金利」「適用金利」「優遇金利」といった種類があり、どれを参考に金融機関を選べばいいかわからない、という人も多くいます。これから住宅ローンを比較検討する人にとって大切な知識ですので、必ず押さえておきましょう。
(1)適用金利
「適用金利」とは、実際に住宅ローンを組む際に適用される金利のことで、審査結果などに応じた割引を最大限適用した数字です。金融機関のホームページやパンフレットで大きく記載されているのがこの「適用金利」と呼ばれるもので、その金融機関で適用できる最も低い金利のことを指します。
金融機関が表示する適用金利は、お得感を出すために最も借り入れ条件の良い状態の金利を、大きく掲載するケースがほとんどです。そのため、申込者の審査内容によっては表示されている適用金利ほど金利が安くならない場合があります。また、実際に適用されるのは、融資が実行されるときの金利です。
つまり、金融機関でローン契約を締結したときに適用金利が低くても、実際に借り入れが開始したときには他の金融機関のほうが金利が低い、ということも少なくないという点に注意が必要です。
(2)店頭表示金利
各金融機関が設定している、住宅ローンの金利水準のことを「店頭表示金利(店頭金利)」といいます。すでに解説した適用金利は、この店頭表示金利から優遇割やキャンペーン適用分を差し引いて算出されます。
実際に適用される金利ではないことから、あまり重要視しない人も多い店頭表示金利ですが、住宅ローンの借り入れを行う場合は、必ず確認しておかなくてはいけません。
その理由は、借入時に適用された優遇割りやキャンペーンがいつまでも続くとは限らないためです。金融機関や利用するローンの種類にもよりますが、ローンの返済が滞るとそれ以降の優遇割が適用されなくなる場合もあります。その場合は店頭金利が適用された金額を返済することになります。
住宅ローンを組む際は、適用金利だけでなく店頭表示金利が適用された場合の返済シミュレーションもしておくと安心です。
(3)優遇金利
「優遇金利」とは、住宅ローンを借りる際に適用される、金利の引き下げ幅のことをいいます。金融機関によっては「優遇金利」のほかに、「キャンペーン金利」や「金利の引き下げ」といった呼び方もします。
金融機関が優遇金利を適用して金利を引き下げる目的は、住宅ローンの申込者を多く獲得するためです。新規借入だけでなく、他の金融機関からの借り換えによる利用者を呼び込むために、大幅な金利の引き下げを行う住宅ローン商品が多くあります。
優遇金利には「当初期間優遇タイプ」と「全期間一律優遇タイプ」の2種類があります。
「当初期間優遇タイプ」は、一定期間のみ大きな引き下げ幅の優遇金利が適用され、「全期間一律優遇タイプ」は、借入全期間に優遇金利が適用されます。自身の返済プランに合わせた借入方法を検討するようにしましょう。
3)住宅ローン金利の種類とメリット・デメリット
住宅ローン金利には「変動金利型」「固定金利型」「固定金利期間選択型」の3種類があります。それぞれの特徴と、メリット・デメリットをしっかりと理解したうえで選択することが重要です。
(1)変動金利型
「変動金利型」とは、住宅ローンの返済期間中に住宅ローン金利が変動するタイプです。金利は年に2回、半年ごとに見直しが行われます。それに伴い住宅ローン金利も見直され、5年に1回返済額が増減します。
変動金利型を選択するメリットは、借入時の利率が「固定金利型」よりも低い傾向にある点。先々の金利の動きが読めないぶん、安く借りられるということもあり、短期的な借入の場合は変動金利のほうが返済額を抑えられる可能性が高いと言えます。
一方デメリットは、金利の見直しが行われるぶん、返済額が増額されるリスクがあるという点にあります。将来的に金利がどのような動きをするかは誰にも予測できないため、想像以上にトータルの返済額が増えてしまうことも考えられます。ただし、5年ごとに行われる返済額の見直し幅は、見直し前の返済額の1.25倍までというルールがあり、返済負担額の急激な上昇を抑えられるようになっています。(1.25倍ルール)
変動金利型は、こうした返済負担額の増額リスクがあるため、金利が上がっても返済できるだけの支払い能力がある人に向いていると言えます。
(2)固定金利型(全期間固定型)
利率が金融情勢に左右されず、返済期間中の金利を固定して借入を行うのが、「固定金利型」と呼ばれる金利タイプです。「全期間固定型」と呼ばれる場合もあります。
固定金利型でローンを組むメリットは、トータルの返済額が明確になるという点です。変動金利型と異なり、金利の上下による返済額の変動がないため、融資が開始された時点で「いつまでにいくら返済する」という金額が確定します。そのため計画的に返済でき、繰り上げ返済の計画も立てやすくなるのです。
一方デメリットは、変動金利と比較して、同時期の金利が高い傾向にあるという点です。金融情勢の影響を受けず返済額が安定しているぶん、融資開始後に金利が下がった際に「損をした」と感じる人もいます。
固定金利型が向いている人は、金利の上昇により返済負担額が増えると返済が滞る可能性があったり、子供の教育費など別に準備する資金がある人です。
(3)固定金利期間選択型
変動金利型と固定金利型の中間ともいえるのが「固定金利期間選択型」と呼ばれる金利タイプです。この金利タイプは、融資開始から一定期間は固定期間が適用され、金利固定期間経過後は変動金利に移行します。
固定金利が適用される期間は、金融機関の提供するプランによっても異なりますが、2年・3年・5年・10年・20年などが選択可能です。
固定金利期間選択型は、変動金利型と固定金利型のメリットとデメリットを、良くも悪くもバランスよく持ち合わせているのが特徴。
融資開始時の金利は固定金利ほど高くありませんが、変動金利ほど低いということでもないので、安くお金を借りたいという人には物足りなさがあるでしょう。
この金利タイプを活かせるのは、ローンを組むのが始めてで、返済や貯蓄のペースがいまいちわからないという人。最初は固定金利にして、住宅ローンを返済しながら貯蓄もするという感覚を掴み、それから変動金利に切り替えるという方法があります。
また、融資開始時は産休・育休でお仕事をお休みしているものの、数年後に復職して収入が増えることが見込まれているなど、ライフスタイルの変化が見えている場合も、固定金利期間選択型の住宅ローンを選ぶことにより得られるメリットがあると言えます。
住宅ローンを決めるときのポイントは?
住宅ローン金利の種類や違いについてわかっていても、各金融機関が提供している住宅ローン商品の比較方法を知らない状態では、自身に合った住宅ローンを選ぶことはできません。
住宅ローンを比較する際に意識して欲しいポイントは、「できるだけ多くの金融機関を比較する」ことと、「複数の住宅ローンに申し込む」ことの2つです。
1)できるだけ多くの金融機関を比較する
住宅ローンを組む際は、できる限り多くの金融機関を比較することをおすすめします。
トータルの返済額を抑えたいがために、どうしても利率だけに目が向きがちですが、金融機関によって用意されている融資の形態(返済期間など)が異なります。また、各家庭の状況や将来のライフプランによっても、選ぶべき金利タイプが異なったり、審査の結果適用される利率が変動したりすることがほとんどです。
自身の収入の状況や将来的なライフイベントなども考慮したうえで、どのような返済プラン・金利タイプが向いているかをしっかりと比較し、判断することが大切です。
2)複数の住宅ローンに申し込む
最終的に住宅ローンを組むのは1つの金融機関ですが、審査の申し込みは同時に複数の金融機関に対して行うことをおすすめします。
すでに解説したとおり、各金融機関がホームページなどに表示している適用金利は、あくまでもさまざまな優遇金利が適用された場合の最低金利です。実際に借り入れを行う際に適用される金利は、金融機関のルールだけでなく審査の内容によっても変動するため、実際にローン審査を受けてみないとわからないというケースがほとんどです。
一度に複数の住宅ローンに申し込んで審査を受けることで、自分に適用される実際の金利がわかり、より条件のいい住宅ローンを選ぶことが可能になります。さらに、返済プランは自分にぴったりだけど金利が少し高い、といった場合に、ほかの住宅ローンの条件を提示して交渉し、金利を下げてもらえる場合もあるのです。
住宅ローンの審査には平均で1~2週間、長いと1ヶ月以上かかることも少なくありません。複数の金融機関に同時に申し込むことで、金利を比較できるだけでなく、万が一審査に落ちてしまったときのすべり止めにもなるということを覚えておくといいでしょう。
まとめ
住宅ローン金利は経済状況によって変化します。借入開始時は低金利で借りられてお得感があっても、あとから金利の上昇によって返済額も増額され、月々の返済が厳しくなってしまうケースも少なくないのが現実です。
住宅ローンで失敗しないためには、まずは住宅ローン金利の種類や特性、メリットやデメリットをしっかり把握することが大切です。そのうえで自身のライフプランや理想とする返済ペースと照らし合わせて、ゆとりのある生活を送りながら返済できる方法を見つけるようにしましょう。
住宅ローンを購入する際は不動産会社に相談するのが一般的ですが、住宅ローンの返済計画や金利タイプの選び方については、ファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。住宅の購入資金だけでなく、住宅取得にかかる諸費用や、住宅取得後に発生する税金なども踏まえて、その人に合った資金計画や住宅ローンの決め方のアドバイスも受けられます。
ファイナンシャルプランナー事務所のほかに、ファイナンシャルプランナーが在籍する不動産会社もありますので、上手に活用しながら無理のない範囲で融資を受けるようにしましょう。
ブログ:
皆の笑顔に我が笑顔あり
徳本 友一郎
- 所属会社:
- 株式会社スタイルシステム
- 所属会社のWEBSITE:
- http://www.style-system.net
- 保有資格:
- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書:
- 初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント
おすすめ記事
-
24.08.12住宅ローン
-
24.07.22住宅ローン
-
24.07.01住宅ローン
-
24.02.26住宅ローン
-
24.02.10住宅ローン
-
24.01.20住宅ローン