親からの住宅支援金を非課税にする方法とは? 支援金を受け取る場合の注意点も解説
住宅を購入したり新築したりするときには、親が資金面を手伝ってくれるケースがあります。ありがたい話ですが、これは贈与税が課税される行為です。ただ単に住宅を購入する場合、親からの支援金を受け取るだけでは贈与税が課税され、支援金が少なくなってしまいます。そのため、贈与税が課税されないように対策を考えておく必要があります。
本記事では、贈与税の基礎から、贈与税を納税しなくてもよくなる方法や注意点などを解説します。親が住宅購入の支援をしてくれる場合は、贈与税の納税をしなくてもいいように税金対策を行いましょう。
親からの援助はどのくらいもらってるの?
一般社団法人不動産流通経営協会が実施した、2021年度不動産流通に関する消費者動向調査によると、親からの贈与を受けた人の贈与平均額は、新築住宅購入者が1036.7 万円、既存住宅購入者が 639.7 万円でした。
また、親からの贈与を受けた世帯の割合は住宅購入者全体の14.9%でした。世帯主の年齢別にみると、29 才以下から40~44 才以下までの不動産購入者で、親から贈与を受けた割合が20%前後となっています。親からの贈与額が1,000 万円超の割合は、贈与を受けた人全体で 21.0%となっています。
住宅購入のための親からの資金は税金が課税される?
親から住宅購入のために資金を受け取るという行為は、贈与になるため贈与税が課税されます。
贈与税とは
贈与税とは、個人から財産をもらったときに課税される税金です。会社など法人から財産をもらったときは、贈与税は課税されませんが、所得税が課税されます。
贈与税は累進課税制度を取っており、贈与額が多くなるほど課税額が増えます。贈与税には毎年110万円の基礎控除が認められています。また、贈与により財産を取得した者(贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者に限る)が、直系尊属から贈与により取得した財産には特例税率も適用できます。
贈与税の一般税率を図表1に、特例税率を図表2にまとめました。
図表1 贈与税の一般税率
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ー |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
図表2 贈与税の特例税率
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ー |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
贈与税の計算例(一般税率)
1,000万円 - 110万円 = 890万円(基礎控除後の課税価格)
890万円 × 40% - 125万円 = 231万円(贈与税額)
住宅購入のための親からの資金を非課税にする方法
贈与税は税率が高く、多額の贈与を行った場合、贈与税額はとんでもなく高い課税額になってしまいます。そのため贈与する場合には、贈与税の非課税制度などを利用します。贈与税の非課税制度などとはどのような制度があるのか解説します。
贈与税の110万円の基礎控除
贈与税の計算をするときに、110万円の基礎控除があります。この基礎控除を利用して贈与すると110万円までの贈与は非課税になります。贈与税は、1月1日~12月31日までの贈与合計額に対して課税する暦年課税です。そのため、110万円の基礎控除を毎年利用することができます。
例えば、1,100万円を贈与したい場合、1,100万円を一括で贈与してしまうと271万円課税されます(一般税率の場合)。しかし、1,100万円を毎年110万円、10年間にわたり贈与した場合は、贈与税は課税されません。そのため、長年贈与をすることができる場合は、贈与税の110万円の基礎控除を利用します。
住宅取得資金贈与の非課税
2023年12月31日までに、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住目的の住宅における家屋の新築、取得または増改築を行うための資金を贈与された場合においては、一定の要件を満たすとき非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。
住宅取得資金贈与の非課税制度の利用可能条件
住宅取得資金贈与の非課税制度の利用可能条件は、次のとおりです。
・父母や祖父母など直系尊属からの贈与であること
・自宅として使う住宅家屋の新築や取得または増改築を行うための資金であること
・贈与を受けた人の年間合計所得金額が2,000万円以下であること
・日本国内にある住宅であること
・住宅の登記簿上の床面積が50㎡(または40㎡)以上240㎡以下であること
・建物の床面積の2分の1以上を居住用として使うこと
・中古住宅の場合は1982年1月以降の新耐震基準に適合している住宅であること
住宅取得資金贈与の非課税限度額
住宅取得資金贈与の非課税限度額は、建築または取得するなどした住宅用家屋の区分に応じて金額が変わります。非課税限度額の住宅用家屋区分は、次のとおりです。
・耐震や省エネまたはバリアフリーの住宅用家屋は1,000万円まで非課税
・上記以外の住宅用家屋は500万円まで非課税
住宅取得資金贈与の非課税制度を利用するときの注意点
住宅取得資金贈与の非課税制度を利用するときには、注意しなければならないことがあります。主な注意点を2つ紹介します。
1.贈与税が0円でも贈与を受けたという申告が必要
前年に金銭などの贈与を受けた人は、前年分につき、翌年の2月1日から3月15日までの間に、贈与税を申告する必要があります。住宅取得資金贈与の非課税制度の非課税枠内だったり、110万円の基礎控除内の贈与だったとしても、非課税になる金額しか贈与してないから申告しない、ということはできません。もし、非課税内の贈与だったとしても申告しなければ、税務署から追徴課税などをされてしまいます。
2.相続の小規模宅地等の特例が使えない
相続の小規模宅地等の特例とは、相続時に一定の条件を満たした場合に相続税額を大きく抑えることができる相続税の特例です。
小規模宅地等の特例の利用要件の1つに、原則として亡くなった被相続人と同居していた親族がその自宅を相続するときに適用できるという要件があります。それに加え、同居していなくても持家がない子供であれば、例外として適用が認められます。
しかし、生前の住宅資金贈与で子供が自宅を取得した場合、被相続人との同居の要件だけでなく、持家がないという要件も満たしません。そのため、小規模宅地等の特例を適用することはできなくなり、相続税の節税が行えなくなります。
住宅取得資金贈与を利用するための手続き
住宅取得資金贈与の非課税制度を利用するためには、期間内の申告に加え必要書類の提出が必須になります。
住宅取得資金贈与の非課税制度を利用するために必要な書類は、次のとおりです。
・戸籍謄本
・源泉徴収票などの合計所得金額が制限額以内であることを証明する書類
・取得や新築または増築した家屋とその敷地の登記事項証明書
・取得や新築した際の売買契約書や建築請負契約書の写し
上記のほかに、住宅性能証明書、建設住宅性能評価書の写し、増改築等工事証明書などがあれば、提出する必要があります。
相続時精算課税制度とは
2,500万円までの贈与であれば贈与税が課税されない、相続時精算課税制度という制度もあります。正確に言うと非課税ではありませんが、一定金額の贈与まで課税されない制度であるため、相続時精算課税制度についても解説します。
相続時精算課税制度の内容
相続時精算課税制度とは、贈与を受ける人が2,500万円までの贈与であれば、贈与税が非課税となる制度です。しかし、財産を贈与した人が亡くなったときに、贈与した財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税として納税しなければなりません。つまり、贈与の際には贈与税は課税されませんが、代わりに相続税として課税されるということです。
相続時精算課税制度の利用可能条件
相続時精算課税制度の利用条件は、原則として、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫へ贈与される場合です。
贈与財産の種類や金額、贈与回数に制限はありません。つまり、合計金額が2,500万円に達するまでなら、複数年にわたって何回贈与をしても贈与した時点では非課税です。
また、贈与する人は1人1回利用できるため、両親2人が1人の子どもに対して、合計5,000万円まで贈与することが可能です。
相続時精算課税制度の注意点
相続時精算課税制度を利用する場合には注意点がいくつかあります。相続時精算課税制度を利用する場合の注意点は、以下のとおりです。
・贈与税の110万円の基礎控除が利用できなくなる
・2,500万円以内の贈与でも相続時精算課税制度を利用することを申告しなければいけない
・相続の小規模宅地等の特例が使えなくなる
・相続時に相続時精算課税制度で贈与された財産は物納することができない
・節税にならない場合がある
相続時精算課税制度を利用するための手続き。
贈与を受けた際に相続時精算課税制度を選択しようとする人は、相続時精算課税制度を利用する贈与財産を受け取った年の翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与を受けたことを記載した相続時精算課税選択届出書とともに贈与税の申告をします。
相続時精算課税選択届出書の添付書類は、次のとおりです。
・特定贈与者、受贈者の関係がわかる戸籍謄本類
・受贈者の戸籍の附票または住民票の写し
・特定贈与者の住民票の写し
・特定贈与者の戸籍の附票の写し
※この特定贈与者とは、相続時精算課税制度を利用できる条件を満たした、贈与をする人のことです。
贈与を受けたことは税務署にバレる?
贈与したことは、税務署にはバレないだろうと思うかもしれませんが、高い確率でバレてしまい、贈与を申告しなかったことに対し罰則を受けるため、贈与があったことを隠すのは絶対にやめましょう。
なぜ税務署にバレる?
税務署は不動産の購入などをした場合に、お尋ねを送付してくることがあります。
その中に、不動産を購入した資金についてなどを記載して送り返さなければなりません。
例えば、20代の人が1億円の不動産を現金で購入したとします。そうなると、20代で1億円の現金を支払うのはおかしくないかということで税務調査を開始する可能性があります。
なお、この場合はローンで購入したと虚偽申告しても、購入した不動産の登記簿謄本を見れば現金で購入したことがすぐにバレてしまいます。
税務署に無申告がバレた場合
申告期限までに申告をしていなかった場合、無申告加算税が課される可能性があります。
申告をしなかったことについて、書類を偽造するなどの不正行為があった場合は、無申告加算税に代えて、さらに税率が高い重加算税が賦課されるおそれもあります。たとえば税務署から送付されたお尋ねに対して、虚偽の回答をして申告を免れようとした場合も重加算税の対象となります。
その他、納税をしていなかったことに対するペナルティもあり、延滞税を課税されることもあります。
親から住宅支援を受ける場合には専門家に相談をしましょう
親からの住宅購入の支援金は、贈与にあたるため贈与税が課税されます。しかし、親からの住宅購入の支援には、住宅取得資金贈与の非課税という制度が利用できます。また、相続税のことまで考えて相続時精算課税制度を利用することも可能です。
ただし、どちらの制度も一長一短のところがあり、本当の意味での節税になるかは利用する人やその親族の状況によります。節税になるのかどうかは、必ず専門家に相談をしてから制度を利用するか判断してください。
専門家に相談する場合は「住まいの無料相談」がおすすめです。「住まいの無料相談」には、ファイナンシャルプランナーが多数在籍しており、贈与税に関する相談から相続税に関する相談まで受けてくれます。
贈与は相続まで含めて考えないといけないため、専門家に相談して、住宅購入のための贈与をするようにしていきましょう。
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皆の笑顔に我が笑顔あり
徳本 友一郎
- 所属会社:
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- 保有資格:
- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書:
- 初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント
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