1,000万円で注文住宅は建てられる?価格を抑えるポイントを紹介
1,000万円で注文住宅は建てられるでしょうか。マイホームの購入は人生の三大支出に数えられますが、子どもの教育費や夫婦の老後資金などを多く確保するために、マイホームの購入資金を抑えたいと考える人もいるでしょう。
本記事では、1,000万円で注文住宅を建てるメリット・デメリットや価格を抑えるポイントなどを紹介します。
注文住宅にかかる費用 1,000万円は可能?
1,000万円で注文住宅を購入した実例があるため、可能ではあります。ただし、改めて相場を確認するとよくわかりますが、1,000万円での注文住宅はかなりコストを抑えないと実現しないと言えるでしょう。
ここでは、注文住宅にかかる相場と費用について解説していきます。
注文住宅の相場
国土交通省のホームページにあるデータによると、注文住宅の相場は3,510万円でした。以下の表は首都圏の注文住宅の建築費に関するデータです。
調査年 | 建築費(万円) | 延床面積(㎡) | 建設費単価(万円) |
---|---|---|---|
平成23年度 | 2,847 | 118.6 | 24.0 |
平成24年度 | 3,321 | 122.6 | 27.1 |
平成25年度 | 2,951 | 120.9 | 24.4 |
平成26年度 | 3,206 | 132.7 | 24.2 |
平成27年度 | 2,964 | 113.7 | 26.1 |
平成28年度 | 3,061 | 113.3 | 27.0 |
平成29年度 | 2,958 | 120.4 | 24.6 |
平成30年度 | 3,558 | 116.9 | 30.4 |
令和元年度 | 3,301 | 117.2 | 28.2 |
令和2年度 | 3,510 | 113.1 | 31.0 |
参照:国土交通省|住宅市場動向調査
1,000万円の注文住宅を建てようとする場合には、平均の3割弱の費用に抑える必要があります。延床面積を狭くすると建築費を抑えられますが、建設費を1,000万円に抑えるための延床面積を単純計算で求めると33.7㎡です。国が定める最低居住面積水準は、3人世帯で40㎡、4人世帯で50㎡となっています。最低居住面積水準とは、健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠な面積水準です。そのため、マイホームの住みやすさを考えると、延床面積を狭くし過ぎることはあまりおすすめできません。1,000万円で注文住宅を建てるためには、延床面積以外で大幅 なコストカットが必要と言えます。
土地代
所有している土地にマイホームを建てる場合を除くと、土地代がかかります。土地代は面積や形状、駅からの距離、周辺にある施設などによって変動します。使いやすい土地や駅から近い土地、スーパーやコンビニ、学校などの周辺施設が充実している土地は、価格が高いです。公益財団法人全国宅地建物取引業協会が行った「土地・住宅に関する消費者アンケート調査(2017 年)」によると、新築注文住宅の土地購入費用の平均は1,633.47万円でした。
建築費
家を建てる際にかかる費用が建築費です。建築費は建物の広さや設計、建材などによって変動します。
また、依頼する業者によっても建設費は変動します。注文住宅を建てるときの依頼先は主に「ハウスメーカー」と「工務店」です。両者の大きな違いは会社の規模と対応エリアです。ハウスメーカーは、独自ブランドを広範囲に展開しています。仕様や規格が統一されており、仕上がりの品質が安定していて、工務店よりも建築期間が短い傾向にあります。工務店は、特定のエリアを対象としていて、地域密着型が多いです。その地域の特色にあった家を建てることができたり、工務店によって得意分野やこだわりが異なる点が特徴です。
外構工事費
外構工事とは、家の外側の工事のことです。カーポートや駐車スペース、門扉、門柱、玄関アプローチなどの工事にかかる費用が外構工事費です。家を建てる際に必ずしも同時に行う必要はなく、住み始めてから外構工事を行うという選択肢もあります。外構工事費の目安は建築費の10%ほどですが、設置する設備や面積によって費用は変動します。
住宅ローンの金利
マイホームを購入する際の直接的な費用ではありませんが、住宅ローンの金利も注文住宅にかかる費用として挙げられます。住宅ローンを借りた際は、借入金額と金利に応じた利子が発生するからです。利用者が負担する利子は以下の要素によって変動します。
● 借入金額
● 返済期間
● 金利タイプ
● 団体信用生命保険の種類
● 借入先
住宅ローンを利用した際に負担する費用は、住宅ローンの組み方によって大きく変動します。例えば、頭金を多く準備して借入金額を減らすと、発生する利子を減らせます。
諸費用
マイホームを購入する際には、土地の購入費用や注文住宅の建築費のほかに付随して発生する費用があります。このような費用のことを諸費用と言います。主な諸費用は、土地を購入する際に付随する諸費用、建築時に付随する諸費用、住宅ローンの契約時に付随する諸費用の3種類です。以下、それぞれの諸費用の代表例を紹介します。
【土地を購入する際に付随する諸費用】
● 仲介手数料
● 登記費用
● 固定資産税・都市計画税
● 印紙税
【建築時に付随する諸費用】
● 地盤補強費
● 上下水道ガス引込費用
● 印紙税
● 登記費用
● 水道加入金
【住宅ローンの契約時に付随する諸費用】
● 保証料
● 登記費用
● 火災保険料
● 地震保険料
諸費用の目安は、土地の購入費用と注文住宅の建築費の合計の10〜12%前後と言われています。1,000万円の注文住宅の場合は100〜120万円ほどです。マイホームの購入にあたって発生する諸費用は、一括で請求されるのではなく、各諸費用が発生したタイミングで都度支払いが必要になります。そのため、諸費用の発生タイミングによっては、住宅ローンで賄うことができず、手持ちの現金からの支払いを求められる可能性もあります。
1,000万円の注文住宅を建てるポイント
注文住宅の相場から考えて、1,000万円で家を建てるためには、大幅なコストカットが必要です。 ここでは、コストを抑えて注文住宅を建てるポイントを紹介します。理想のマイホームのために、コストを抑えられる点と妥協できない点をご家族と相談しながらお考えください。
家の形をシンプルにする
家の形をシンプルにすると、建築費を抑えられます。複雑な形の家の場合、壁や柱が多くなるため、建築費がかかります。意識していただきたい点は以下の3点です。
● 間取りを正方形・長方形にする
● 部屋数を少なくする
● 屋根の形をシンプルにする
間取りを正方形・長方形にすることで、外壁の表面積を少なくすることができ、コストダウンにつながります。二階建てを希望する場合は、一階と二階の面積が同じ設計の「総二階建て」にするとコストを抑えられます。
部屋にはドアや窓、収納などの設備が必要です。そのため、部屋数を少なくすると設備を減らせるため、コストカットにつながります。また、和室はコストがかかる部屋であるため、コストを抑えた い場合はマイホームにどうしても和室が欲しい人を除き、部屋は洋室で統一した方がいいと言えます。
屋根の形もコストに影響を与えるポイントです。複雑な形の屋根にすると、仕上がるまでの時間が長くなり、工費や人件費が高くなります。コストを抑えたい場合は、同じ大きさの2つの面で構成された、屋根が二等辺三角形の形をした「切妻屋根」や一枚の屋根が一方向に傾いている「片流れ屋根」がおすすめです。
水回りを固める
水回りの設備を固めることで、コストカットできます。水回りの設備が集中していると、配管工事の費用を抑えられます。また、配管設備には定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスの際も配管が集中しているほうが楽になるため、住み始めてからのことを考えても、水回りは固めた方がいいと言えます。
グレードを抑える
設備のグレードを抑えるとコストを抑えることができます。例えば、キッチン・洗面所・バスルームなどの水回りの設備や浴室乾燥機・床暖房などの電気設備、照明器具などのグレードを抑えることを検討してみてください。ただし、グレードを落としすぎると、メンテナンス性が低くなってしまうことも予想されるため、価格を抑えることだけに捉われない方がいいでしょう。有名メーカーの設備を選ぶと価格が高くなる傾向があるため、有名メーカー以外のコストパフォーマンスがいい設備を探してみるのもいいかもしれません。また、グレードを抑えるほかにも、設備を自身で用意する方法でも価格を抑えられます。
安い素材を使う
屋根や外壁、断熱材などを安い素材にすることでもコストを抑えられます。ただし、住宅購入時のコストを抑えることに力を入れるあまり、入居後の生活の質が落ちたり、メンテナンス費が高くなる可能性がある点には注意が必要です。例えば、安い断熱材を使用したことで、外気の影響を受けやすくなることが予想されます。そうなると、冷暖房コストが大きくなる可能性が十分に考えられます。
コストを抑えるために、安い素材を使うこと自体は悪いことではありませんが、コストを抑えた結果、マイホームでの生活にどのような影響をもたらすか、という点も確認しましょう。
土地選びを妥協しない
住宅を建てる予定の土地によっても、建築費は左右されます。駅までの距離や周辺施設、日当たり、風通しの良し悪しなど、人によって土地選びに重視するポイントは異なるでしょう。コストに 関連する事項としてチェックしていただきたい点は以下の2点です。
● 形
● 古家付きか否か
正方形や長方形の形の土地が「整形地」です。一方で、「不整形地」と呼ばれる土地は同エリアの整形地と比較すると価格が安い傾向にあります。不整形地には、L字型・三角型の土地や道路に接する部分が細長く、敷地が奥にある形状の旗竿地、崖地や傾斜地・高低差のある土地などが該当します。土地代を抑えられる不整形地ですが、建築費が高くなる可能性がある点には注意が必要です。
古家付き土地とは、経済的な価値がほとんどない住宅がある土地のことです。価格が安い土地ではありますが、古家の解体費用や整地、住宅の消失登記費用などが別途かかります。日当たりや建物の配置などを確認できる点はメリットですが、注文住宅を建てるために、余計な費用がかかる点がデメリットです。
土地代の安さだけで土地選びを済ませると、購入後に思わぬ費用が発生する可能性があるため、全体でかかる費用をしっかりと想定したうえで土地を選びましょう。
建築単価が安い工務店を探す
建築を依頼する住宅会社によっても価格は変動します。住宅会社によって建築単価が異なるからです。また、住宅会社によって建築単価の算定基準が異なります。そのため、建築費を安く抑えたい場合は、複数社に見積もりを出してもらい比較することが大切です。
1,000万円で注文住宅を建てるメリット
1,000万円で注文住宅を建てるメリットは安さです。住宅ローンを借りてマイホームを建てようと計画している人であれば、住宅ローンの借入額が少なく済むため、購入後の経済的な負担も小さくなります。
また、借入金額が少ないため、頭金なしで住宅ローンを借りやすい点もメリットです。例えば、注文住宅の相場である3,510万円で、頭金を用意する場合、10%では351万円、20%では702万円 を準備する必要があります。収入にもよりますが、多くの人にとって、すぐに準備できる金額とは言えません。頭金なしでも、住宅ローンを借りることはできますが、審査が厳しくなったり、毎月の返済額が大きくなったりします。借入金額が1,000万円であれば、金利や返済期間にもよりますが、頭金なしでも返済額がそこまで大きくならないため、マイホームの購入資金がない人でも住宅ローンを借りやすいのではないでしょうか。
1,000万円で注文住宅を建てるデメリット
1,000万円で注文住宅を建てると、費用が安く済む点がメリットですが、住み始めてからかかる費用が高くつく可能性がある点がデメリットです。ここでは、想定されるデメリットを3点紹介します。
キッチンなどの設備や間取りの選択肢が狭い
コストを抑えるために、設備や間取りを自由に選べない、といったデメリットがあります。設備のグレードを落とすと、使いにくかったり、設備の寿命が短いといった問題が発生する可能性があります。間取りの選択肢が狭いことで、理想のマイホームの実現が難しくなる可能性もあるでしょう。
ランニングコストがかさむ可能性も
屋根や外壁には劣化があります。熱や紫外線、雨・風、経年劣化など、劣化の要因はさまざまです。壊れてしまったり、雨漏りしてしまっては困りますし、劣化により見た目が悪くなる点も見過ごせません。そのため、屋根や外壁には定期的なメンテナンスが必要です。安い素材を使用したことで、メンテナンスの頻度が多くなるとマイホーム購入後にかかる費用が増えてしまいます。
また、先ほども解説しましたが、安い素材を使用したことで、冷暖房コストが大きくなる可能性もあります。
アフターサービスが細かく受けられない場合がある
定期点検や補修、保証期間など、住宅購入後のアフターサービスが細かく受けられないケースがあります。依頼する住宅会社によって、利用できるアフターサービスの内容や対応は異なります。建築費を抑えつつ、アフターサービスを充実させたい、と考える人が多いかと思いますが、現実的には両方を取ることは難しいため、どちらを重視するかを選択する必要があるでしょう。
1,000万円で注文住宅を建てる時のローン
注文住宅の相場と比較すると1,000万円は少ないですが、事前に現金で準備できる人は少ないでしょう。そのため、1,000万円で注文住宅を建てる場合であっても多くの人は住宅ローンを組んでマイホームを購入するかと思います。ここでは、住宅ローンについて解説します。
住宅ローンが申し込める金融機関の種類
住宅ローンを申し込める金融機関は主に以下の4種類です。
● 銀行
● 信用金庫
● モーゲージバンク
● 生命保険会社
モーゲージバンクとは、抵当や担保を意味する「モーゲージ(Mortgage)」と銀行を意味する「バンク(bank)」を組み合わせた言葉で、土地や住宅といった不動産の抵当権を担保にした貸付を行う金融機関です。住宅ローンを専門に扱う金融機関、というイメージです。
申し込む金融機関によって、金利や事務手数料、団体生命保険の保障内容、付帯サービス、審査の厳しさなどが異なります。そのため、複数の金融機関を調査したうえで、いくつかの金融機関に絞り、仮申し込みをしてみましょう。
金利の種類
金利の種類は大きく分けると「変動金利」と「固定金利」があります。どちらにもメリット・デメリットがあるため、一概にどちらがおすすめとは言えません。
変動金利は、借入期間中に住宅ローンの金利が変動する可能性がある金利タイプです。メリットは固定金利と比較した際に金利が低い点です。例えば、三井住友銀行の住宅ローンの店頭金利は、変動金利は2.475%、固定金利(5年)は3.60%です(2022年5月現在)。ただし、変動金利は半年ごとに金利が見直しされるため、途中で金利が上がる可能性があります。金利が上がると返済額が増加する点や借入時に返済額が確定されない点が変動金利のデメリットです。
固定金利は、一定期間の金利が固定されるタイプと完済までの金利が固定されるタイプがあります。固定金利の期間が長いほど、適用される金利は高いです。5年・10年など、一定期間の金利が固定されるタイプの場合、固定金利の期間が終了すると、その時の固定金利の金利で再設定するか、変動金利に自動的に切り替わります。
返済期間
返済期間が短い場合は、毎月の返済額が増える代わりに、返済総額は抑えられます。一方で、返済期間が長い場合は、毎月の返済額が減る代わりに、返済総額が増えます。収入や毎月の支出をもとに、住宅ローンの返済が家計を圧迫しない額を算出しましょう。
住宅ローンの返済総額を抑える方法としては、ボーナスの時期に返済額を増やす「ボーナス払い」や毎月の返済額とは別で元金の一部、あるいは、全額を前払いする「繰り上げ返済」があります。注意点としては、住宅ローンを借りる金融機関によっては、繰り上げ返済に手数料が発生する点です。金融機関を選定する際は、繰り上げ返済の手数料の有無にも着目しましょう。
1,000万円で注文住宅を建てたい人は「住まいの無料相談」を利用してみましょう
注文住宅の相場は3,510万円であるため、1,000万円で建てる場合は大幅なコストカットが必要です。予算を抑えるために設備や素材のグレードを落とし過ぎてしまうと、住んでからの日常生活に不満を残したり、メンテナンス費用が高くなる、などの問題が生じる可能性があります。
満足のいくマイホームを1,000万円で建てるために「住まいの無料相談」を利用してみてはいかがでしょうか。ファイナンシャルプランナーと宅建の資格を持つレジデンシャルアドバイザーが住宅と資金計画の悩みにお答えします。具体的なプランが決まっていない人でもご遠慮なくご相談ください。
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徳本 友一郎
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- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書:
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