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家・住宅購入コラム

抵当権抹消登記をするべき人とは?手続きの方法や費用も解説!

住宅ローンをすべて返済すると、銀行などの金融機関から抵当権抹消登記にかかわる書類が届きます。

しかし「手続きをするべきなのかわからない」「なんだか難しそう…」という理由で、ついつい放っておいてしまう人も少なくありません。

抵当権抹消登記をしなくても、とくに罰則はありませんが、デメリットが生じます。

この記事では、そんな抵当権抹消登記について、以下の6点を解説します。

・抵当権抹消登記とはなにか
・どんな人が手続きするべきなのか
・抵当権抹消登記をしない場合のデメリット
・手続きの方法(流れ・費用・用意する書類)
・自分で出来るのか
・注意点

ローンをすべて返済した人はもちろん、返済している途中の人も、将来に向けて知識を付けておきましょう。

抵当権抹消登記とは

抵当権抹消登記とは、土地や建物などの自身が所有する不動産に付けられた抵当権を、登記簿上から消すことです。

抵当権は、不動産を担保にしてお金を借りる際に、不動産に対して付けられます。

ローンをすべて返済してしまえば、抵当権の効力は消滅しますが、登記簿上から抵当権が消えるわけではありません。登記簿上から抵当権を消すためには、抵当権抹消登記をしなければならないのです。

抵当権とは

抵当権とは、銀行などの金融機関からお金を借りる際に、担保にした不動産に対して付けられるものです。

ローンの返済ができなくなってしまうと、抵当権が実行され、担保である不動産は強制的に競売にかけられてしまいます。

不動産の売却によって得たお金をローンの残金として、金融機関が回収する仕組みです。

抵当権によって、金融機関は融資金を回収できなくなるリスクを避けられます。

どんな人が手続きするべきなのか

以下のような状況の人は、抵当権抹消登記をするべきです。

・ローンをすべて返済した人
・不動産を売却する予定の人
・新たにローンを組む予定の人

ローンをすべて返済したら、抵当権抹消登記を行うのが一般的な流れです。
抵当権抹消登記を行わず、登記簿上に抵当権が付いたままの物件は、売却する際にデメリットが生じます。

また、不動産を担保にするローンを新たに組む際にも、抵当権を消しておかなければなりません。

抵当権抹消登記をしない場合のデメリットについては、次の章で詳しく見ていきましょう。

抵当権抹消登記をしない場合のデメリット

抵当権抹消登記には期限がなく、ローンをすべて返済してから何年後であっても手続きが可能です。
また抵当権抹消登記をしなくても、とくに罰則はありません。

しかし抵当権抹消登記をしないことで、以下のようなデメリットが生じます。

・不動産の売却が難しくなる
・新たにローンを組む際に、審査が通りにくくなる
・将来的に抵当権抹消登記を行う際に、手続きが面倒になる

デメリットを1つずつ見ていきましょう。

不動産の売却が難しくなる

抵当権抹消登記をしていない不動産は、登記簿上に抵当権が残るため、売却が難しくなります。

抵当権が付いている不動産は、抵当権の実行により差し押さえられるリスクがあることから、買い手が付かない可能性が高いためです。

不動産に付けられた抵当権の効力は、ローンをすべて返済した時点で消滅します。しかし、登記簿上に抵当権が残っていると「抵当権が付いている不動産である」と判断されてしまうのです。

新たにローンを組む場合、審査が通りにくくなる

不動産を担保にする住宅ローンなどを新たに組む場合、抵当権抹消登記を行わず登記簿上に抵当権が残っていると、審査が通りにくくなります。

なぜならローンを融資する金融機関は、すでに抵当権が付いている不動産を担保として認めてくれない可能性が高いためです。

すでに抵当権が付いている不動産を担保にする場合、新たに抵当権を付けた金融機関は、抵当権の優先順位が低くなってしまいます。

抵当権の優先順位が低いと、抵当権を実行しても融資金を回収できないリスクが高まるため、抵当権が付いている不動産は担保としての信用度が低いのです。

将来的に抵当権抹消登記を行う場合、手続きが面倒になる

抵当権抹消登記は、遅くなるほど手続きが面倒になります。

抵当権抹消登記に必要な書類のうち、住宅ローンをすべて返済した後に金融機関から届くものは、時間が経つと失くしてしまうリスクがあります。将来的に売却などで抵当権抹消登記をする際に書類が無いと、再発行しなければなりません。

とくに、この後解説する「登記識別情報」もしくは「登記済証」は、失くしても再発行してもらえないため、注意してください。万が一失くしてしまった場合は、本人確認の書類を用意しなければならないなど、手続きが面倒になってしまいます。

また、不動産の抵当権抹消登記をしないまま子供に相続する場合も、必要な手続きが増えてしまいます。

将来的に抵当権抹消登記を行う場合を考えて、ローンをすべて返済したら、早めに抵当権抹消登記をしておきましょう。

手続きの方法【流れ・費用も解説】

この章では、抵当権抹消登記における手続きについて、以下の4点を解説します。

・手続きの流れ
・用意する書類
・必要な費用
・手続きは自分で出来るのか

すべて大切なポイントなので、詳しく見ていきましょう。

手続きの流れ

抵当権抹消登記における手続きの流れは、以下のとおりです。

①住宅ローンをすべて返済する
②金融機関から抵当権抹消登記にかかわる書類が届く
③法務局のホームページから登記申請書のテンプレートをダウンロードする
④登記申請書を作成する
⑤書類一式を法務局に提出する
⑥法務局による審査が行われる(1日〜10日間)
⑦申請内容に不備があれば修正する
⑧登記が完了する(審査を通過した1週間〜10日後)
⑨法務局から登記完了証を受け取る

⑤で書類一式を提出する法務局は、住んでいる地域の法務局ではなく、抵当権が付けられている不動産を管轄する法務局です。

また書類の提出や、登記完了証の受領は郵送でも対応してもらえます。
マイナンバーカードを使用すれば、オンラインで申請をすることも可能です。

用意する書類

抵当権抹消登記に必要な書類は、以下のとおりです。

必要書類 取得方法
抵当権抹消登記申請書 法務局のホームページからダウンロード
登録免許税の収入印紙 法務局や郵便局で購入
登記識別情報、または登記済証 住宅ローンをすべて返済した後に、金融機関から送られてくる
登記原因証明情報
金融機関の資格証明情報
金融機関の委任状

 
それぞれの書類について、詳しく解説していきます。

・抵当権抹消登記申請書
抵当権抹消登記を法務局に申請するための書類です。
法務局のホームページからテンプレートをダウンロードして、内容を記入したうえで提出します。

・登録免許税の収入印紙
登録免許税を納付したことの証明です。
必要な税額分の収入印紙を購入し、台紙に貼り付けて抵当権抹消登記申請書とホチキスどめして提出します。

・登記識別情報、または登記済証
登記識別情報とは、不動産の名義人に割り当てられる12桁の文字列のことです。
不動産の名義人であることを証明してくれるもので、元々は登記済証として発行されていました。
2005年の法改正により、登記済証が登記識別情報に切り替わりましたが、どちらも役割は同じです。

・登記原因証明情報
どのような原因で抵当権を抹消するのかについて、証明する書類です。
金融機関によって「抵当権解除証」「弁済証書」「抵当権放棄証書」など名称が変わります。

・金融機関の資格証明情報
住宅ローンを組んでいた金融機関が、正当な会社であることを証明する書類です。
発行から3ヶ月間の有効期限があります。

・金融機関の委任状
抵当権者である金融機関が、抵当権抹消登記の手続きを不動産の所有者に委任するための書類です。
抵当権抹消登記の手続きは、原則として金融機関と不動産の所有者が共同で行います。

必要な費用

抵当権抹消登記に必要な費用は、以下のとおりです。

項目 金額(相場)
登録免許税 1,000円
登記の事前調査手数料 335円
登記事項証明書の請求費用 600円
司法書士に支払う手数料(依頼した場合) 10,000円〜20,000円

 
「登録免許税」「登記の事前調査手数料」「登記事項証明書の請求費用」は、1つの物件や1つの土地に対して上記の金額がかかります。

たとえば、土地と建物がある一戸建て住宅の場合、登録免許税は建物と土地で合わせて2,000円(1,000円×2)の支払いが必要です。

手続きは自分で出来るのか

抵当権抹消登記の手続きは、他の登記手続きと比較して簡単だと言われており、不動産の所有者自身で出来ます。

代理人として、司法書士に手続きを依頼することも可能です。

司法書士に手続きを依頼する場合、以下のメリットがあります。

・書類の不備を減らせる
・手間を省ける
・仕事などで動けない平日に、手続きを進めてもらえる

抵当権抹消登記は郵送で手続きできますが、書類の不備があった場合は法務局まで行かなければなりません。

抵当権抹消登記をする不動産が遠くにある場合は、司法書士にあらかじめ依頼しておくことで手間を省くことができます。

司法書士に手続きを依頼するデメリットとしては、手数料がかかることが挙げられます。
手数料の相場は、10,000円〜20,000円ほどです。

また司法書士に手続きを依頼する場合、金融機関からの委任状と、不動産の所有者が作成する委任状が必要になります。

抵当権抹消登記における注意点

抵当権抹消登記の手続きにおいて、以下の3点に注意しましょう。

・氏名に変更はないか
・住所に変更はないか
・金融機関が無くなっていないか

以下に詳しく解説していきます。

氏名や住所に変更はないか

氏名や住所が登記簿に記載されているものから変わっている場合、変更の申請が必要です。

氏名の変更は「氏名変更登記」といい、住所の変更は「住所変更登記」といいます。

住所変更登記や氏名変更登記に必要な書類は、以下のとおりです。

・登記申請書
・登記原因証明情報(住民票の写し、もしくは戸籍の附票の写し)
・登録免許税の収入印紙

1つの物件や1つの土地に対して、登録免許税が1,000円かかります。司法書士に手続きを依頼する場合、手数料の相場は5,000円〜10,000円ほどです。

氏名変更登記と住所変更登記のどちらも、マイナンバーカードを使用すればオンライン申請が可能です。

金融機関が無くなっていないか

抵当権者である金融機関が何らかの理由で無くなってしまった場合、抵当権抹消登記以外の手続きも必要になる可能性があるため、注意が必要です。

手続き内容は、金融機関が無くなった理由や、金融機関の現在の状況によって異なります。

金融機関が廃業により無くなった場合は、金融機関の清算を行った「清算人」と共同申請することで、抵当権抹消登記が可能です。

また住宅ローンの返済が終わる前に、吸収や合併により金融機関が無くなった場合は、抵当権の移転登記をする必要があります。

住宅ローンの返済期間は数十年に及ぶことが多いため、金融機関の状況を改めて確認しておきましょう。

まとめ【抵当権抹消登記は速やかに行うことが大切】

住宅ローンの返済が終わったら、抵当権抹消登記の手続きを行い、不動産の登記簿上から抵当権を消しておくことが大切です。

しかし聞き慣れない言葉が多く「なんとなく難しそうだから」と、手続きを先延ばしにしてしまう人も少なくありません。

抵当権抹消登記の手続きは、他の登記手続きに比べて簡単だと言われており、自身でも手続きが可能です。時間が取れない人や、抵当権が付けられている不動産が遠くにある人は、司法書士に代理手続きを依頼する方法もあります。

抵当権抹消登記をしない場合、多くのデメリットがあるため、金融機関から抵当権抹消登記に関する書類が送られてきたら速やかに動きましょう。

また抵当権抹消登記の手続きを行う際の注意点は、氏名や住所の変更状況と、金融機関の存続状況です。

不安な点があれば、法務局のホームページや法務局の相談窓口も活用してください。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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