不動産購入の基礎知識!資金計画の組み立て方!
不動産はとても高額なため、購入には多額の費用が必要になります。
不動産購入のためには綿密に資金計画を練らなければなりませんが、具体的にはどのようなことを検討すれば良いのでしょうか。
本記事では以下の内容を解説します。
・資金計画について
・住宅ローンの組み方
・不動産の諸費用
・不動産売却時の資金計画
これから不動産購入を検討している人は資金計画について確認し、購入にお役立てください。
調達・支払い・返済の3つの要素から成り立つ資金計画とは
資金計画というと不動産を購入するための住宅ローンなど、購入資金について着目しがちですが、資金調達は資金計画の一部でしかありません。
ここでは資金計画を調達、支払い、返済の3つの要素に分けて解説します。
どうやって用意する?調達計画を検討する
不動産購入資金をどうやって用意するのか計画することが調達計画です。調達計画は単純に自己資金と住宅ローンの割合だけを考えれば良いのではありません。
将来のために残すお金や引っ越し後にかかる家具や家電の購入資金、引っ越し費用なども検討する必要があります。
そのために以下の順序で調達計画を検討しましょう。
1.自己資金総額を計算する
2.将来のためや緊急時のために残しておくお金を自己資金総額から差し引く
3.不動産購入費用を設定する
4.頭金に使える金額を検討する
5.住宅ローンの借入額を検討する
この順序で検討すると無理なく調達計画を立てられますが、実際に物件探ししていると思うようにいかないことや、考え方が変わることもあるでしょう。
その場合、調達計画にこだわらず、変更できるものと考えることをおすすめします。自己資金総額は変わらないと思われがちですが、時期を変えれば自己資金を増やすこともできるはずです。どこかで計画に無理があり、そのまま突き進むと住宅ローンの支払いで苦しむことにもなってしまいます。
柔軟に考え、安全に購入できる計画を組み立てましょう。
いつ・誰に・何を支払う?支払い計画
どんな不動産を購入するのかで支払い計画は大きく変わるので、いつ、誰に、何を支払うのかの把握はとても重要です。
たとえば土地を購入して注文住宅を建てる場合と、分譲マンションを購入する場合では支払条件や諸費用の内訳まで変わります。
それぞれの特徴を一覧で確認しましょう。
種類 | 支払い条件 | 諸経費の特徴 |
---|---|---|
新築建売住宅 | ・契約時手付金 ・残代金 |
・仲介を利用したならば仲介手数料 ・建物の表示登記費用が必要な場合もある |
新築マンション | ・契約時手付金 ・残代金 |
・仲介を利用したならば仲介手数料 ・修繕積立基金が必要 ・建物の表示登記費用が必要な場合もある |
注文住宅 | ・手付金(土地) ・残代金(土地) ・契約金(建物) ・中間金(建物) ・残代金(建物) |
・建物完成の表示登記費用が必要 ・住宅ローンで対応しない場合にはつなぎ融資を利用する必要がある ・仲介を利用したならば仲介手数料 |
中古戸建て・マンション | ・契約時手付金 ・残代金 |
・仲介を利用したならば仲介手数料 |
諸費用の内容については後述しますが、支払い条件や諸費用は不動産の種類によってこれだけの差があります。購入したい物件を定め、支払条件を明確にすることで調達計画も変わってくるでしょう。
無理のない返済が重要な返済計画
住宅ローンを組んで不動産購入した場合、無理のない返済計画を建てることが大切です。
最長35年の長期にわたる返済なので、不動産購入前にしっかりとした計画を検討しておく必要があります。
以下の内容が検討すべき計画です。
・繰り上げ返済やそのための貯蓄計画
・固定資産税や都市計画税、不動産取得税の納税額
・修繕費用やリフォームの計画
・子どもの教育資金
・老後の生活費や貯蓄の計画
時代の変化が慌ただしく、10年先を想定することも難しいからこそ、正しい順序で未来を見据えて無理のない不動産購入をしましょう。
住宅ローンの組み方
不動産購入する多くの人が住宅ローンを利用しますが、ローンを組むためのポイントを知っているでしょうか。
ローンを組む流れ、審査で重要視される項目、借り入れ目安について解説します。
ローンを組むときの流れ
一般的に住宅ローンを組むためには事前審査、不動産売買契約、本審査、住宅ローン契約、決済の流れです。
購入したい不動産が決まれば事前審査を申し込みます。
事前審査では物件の種類や価格、申込者の職業や収入、自己資金を含めた属性を確認されます。事前審査で融資承諾がおりれば不動産売買契約ののち本審査や本申込に進みます。
本審査では事前審査よりも細かく物件や申込者の属性をチェックされます。基本的に事前審査に通過していれば本審査で落ちることはありませんが、絶対はありません。
本申込に通過すれば住宅ローン契約、決済で融資が実行されます。
審査で確認される項目
事前審査や本審査で重視される項目は、物件の価値よりも申込者の属性が重視され、特に返済比率が重要です。
返済比率とは収入に対する借入金を支払う割合のことで、借入金には住宅ローン以外にも車のローンや教育ローンなど他債務の支払いも含まれます。
他からの借り入れが多い場合には住宅ローンの審査が承諾されづらいですが、その理由は返済比率が高くなるからと言えます。
また、収入や勤務先も重要ですが、属性のなかでも自己資金の有無によって融資のとおりやすさが変わります。
収入が少なくても自己資金が多い人は堅実だと金融機関に思われ、収入が多くても自己資金がなければ、ちゃんと返済が続けられるのか金融機関も疑問符を付けます。
ただし、融資条件は金融機関によって大きく異なります。事前審査の前に不動産会社によく確認することをおすすめします。
自分で月々の目安を確認する方法
インターネット上には借入額を調べるエクセルファイルなどを配布しているところもありますが、返済比率の仕組みを覚えれば目安の確認は難しくありません。
返済比率とは収入に対する他債務も含めた支払いのことで、金融機関の審査では収入の20%から35%の間で審査されます。
年収が600万円、返済比率が20%ならば600万円×20%÷12か月=10万円が月々の住宅ローン支払いの限度です。
借入額を調べるためには借入期間、金利なども情報が必要ですが、月々10万円の支払いで金利が1%、35年ローンを組む場合の借入限度額は約3,600万円です。年収のおおよそ6倍から7倍程度が借入限度額の目安と言えます。
購入費用以外にもこれだけある!不動産購入の諸費用
不動産購入では購入代金以外に以下の諸経費が必要です。
・仲介手数料
・税金関連
・住宅ローン関連
・その他の費用
詳細を解説します。
仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼して不動産購入した場合には仲介手数料が必要です。
仲介手数料は以下の計算式で計算します。
仲介手数料=(不動産売買金額×3%+6万円)×消費税
不動産売買金額が400万円以下の場合には計算式が変わりますが、まずはこの計算式を覚えておきましょう。これで計算した仲介手数料の金額は不動産会社が受け取れる金額の「上限」なので、これより高くなることはありません。
税金
不動産の購入では以下の税金が必要です。
・登録免許税
・消費税
・印紙税
・固定資産税・都市計画税
・不動産取得税
登録免許税
登録免許税は登記手続きに必要な税金です。
所有権の移転登記、建物を新築した場合には建物の表示登記、住宅ローンを組んだ場合には抵当権の設定登記などの登記手続きが必要です。
一般的には司法書士に依頼し、司法書士報酬と登録免許税を合わせて支払い、司法書士に代行して納税してもらいます。
消費税
不動産売却における消費税は法人が売主で建物がある場合に、建物にだけ課税される税金です。
個人・法人を問わず土地に対しては消費税がかからず、また、個人間での売買では消費税がかかりません。法人から購入する不動産で建物がある場合に、建物に対して消費税が課税されます。
印紙税
印紙税は不動産売買契約書や住宅ローンの契約書に貼り付けする収入印紙のことで、売買代金によって納税する金額が変わります。
収入印紙は郵便局や法務局で購入し、売買契約書に貼り付けて消印することで納税したこととして扱われます。印紙を貼らないまま契約書を作成したり、契約書の消印を忘れたままにした状態で税務署から指摘を受けると、2倍、3倍の過怠税を徴収されることになるので注意しましょう。
固定資産税・都市計画税
固定資産税と都市計画税は不動産を所有していれば課税される税金です。
1月1日時点の所有者に課税され、4月から5月ごろに通知書が届きます。不動産購入時には売主に納税義務がありますが、365日の日割計算で精算することが一般的です。
不動産取得税
不動産取得税は不動産を購入すると1回だけ課税される税金で、不動産所在地の都道府県が課税します。
基本的には不動産購入したことを都道府県に申告し、その後、税金の通知が送られてきます。申告しなくても取得税の通知は送られてきますが、申告しなければ控除などが適用されません。
住宅ローン
住宅ローンでは以下の諸費用がかかります。
・住宅ローン契約用印紙税
・事務手数料
・住宅ローン保証料
このなかで額面の比率が大きいものは住宅ローン保証料で50万円から100万円の費用が必要です。
住宅ローンを借りる際に一括で支払う場合や、住宅ローンの金利に上乗せして毎月少しずつ支払う方法があります。保証会社の保証を利用することが融資条件の金融機関もありますが、融資条件にしていない金融機関もあります。その場合には保証料は不要です。
その他の費用
不動産購入にともなう諸経費として、火災保険料、水道加入金、修繕積立基金などがあります。
火災保険料は火災保険加入時に支払う費用で、建物に万が一の事態があった場合のために加入します。住宅ローンを組んだ人やそうでない人も、建物が火災や災害の被害にあってしまったら大変なので、加入することが多いです。
水道加入金とは水道負担金や水道供託金など行政によって名称が異なりますが、新しく水道メーターを設置した新築住宅などで必要になる費用です。費用は行政によって違いますが、10万円から30万円ほどの金額です。
修繕積立基金は新築分譲マンションを購入した場合にかかる費用です。
マンションでは修繕積立金を毎月少しずつ管理組合で積み立てます。分譲されたばかりのときは積み立てられた金額が僅かなため、もし、天災地変に遭ってしまったら修繕の対応ができません。そのため引き渡し時に多めの積立金を預かることにより、引き渡し時当初のリスクに備えています。それが修繕積立基金の目的です。
不動産売却の資金計画
資金計画は不動産の購入だけに目が行きがちですが、不動産売却でも資金計画を検討する必要があり、売って終わりではありません。
不動産売却でかかる税金と、税金の計算方法、売却によって住宅ローンを返済する場合の資金計画について触れたいと思います。
不動産売却によって納税する税金の譲渡所得税と印紙税
不動産売却により納税義務が生まれる税金は譲渡所得税と先述した印紙税です。
譲渡所得税は不動産売却によって売却益がでた場合に納税する税金です。
売却益は譲渡所得という所得のひとつなので、給与所得や事業所得と同じように所得税や住民税の対象になります。不動産を売却した場合、その翌年の確定申告に時期に申告が必要で、自分で譲渡所得税を計算して申告・納税しなければなりません。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税の計算方法は以下の計算式で算出します。
譲渡所得税={不動産売却価格-(取得費-減価償却費)-売却諸経費}×税率
とてもシンプルな計算方法ですが、補足を解説します。
取得費とは不動産を購入した際の金額のことです。
購入時の売買契約書や領収書、住宅ローンの契約書などが根拠になります。
もし、相続などで取得した不動産で、取得費が分からない場合には売却価格の5%を概算取得費として計算可能です。しかし、概算取得費で計算すると譲渡所得税が高額になることが多いので、可能ならば取得費が分かる根拠を探すことをおすすめします。
減価償却費は建物がある場合に必要で、建物が経年劣化によって失った価値を示すものです。売却時点での建物の価値を計算することで、売ったときと買ったときの不動産価格の変動を確認するために計算します。
売却諸経費は仲介手数料や印紙税、建物を解体していれば解体工事費、測量していれば測量費などが該当します。注意事項として購入時には諸経費だったものでも、売却時に諸経費になるとは限りません。売却によって住宅ローンを完済した場合、住宅ローン関連の費用は諸経費に含められないので気を付けましょう。
自分で計算して申告・納税が必要なので、間違えてしまうと修正申告や追徴課税の対象になる可能性もあります。不動産会社や税理士などの専門家に頼るのもひとつの方法ですが、計算方法の概要だけでも把握しておきましょう。
住宅ローンを完済した場合
売却によって住宅ローンを完済した場合には、返済手数料と抹消登記費用が必要です。
返済手数料は金融機関によって定められている事務手数料で、繰り上げ返済では不要でも一括返済では必要な場合があります。住宅ローン契約書に詳細が記載されているので、そこで確認しましょう。
また住宅ローンを完済したことで、不動産に設定されていた抵当権を抹消しなければならないので、司法書士に依頼して抹消してもらいましょう。
まとめ
資金計画では調達・支払い・返済の3つの返済計画を検討し、無理なく支払うことや、将来を見越した計画が重要です。
住宅ローンを組むならば、審査で確認される返済比率や自己資金の金額が重要で、どれくらい借りられるのかあらかじめ確認しておきましょう。それにより購入できる不動産の金額が明確になり、物件探しの指針として役立ちます。
また、諸費用を把握して総額でどれくらいの自己資金や借り入れが必要なのかを把握することも忘れないようにしましょう。
さらに、不動産売却の場合にも資金計画が重要です。
不動産を購入するということは、いつか売却する可能性もあるので、譲渡所得税だけでも覚えておいてください。
資金計画は重要なことですが難しいことでもあります。
不明な点は曖昧にせず、専門家に確認しながら計画を進めるのも方法のひとつです。
ブログ:
皆の笑顔に我が笑顔あり
徳本 友一郎
- 所属会社:
- 株式会社スタイルシステム
- 所属会社のWEBSITE:
- http://www.style-system.net
- 保有資格:
- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書:
- 初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント
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