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家・住宅購入コラム

心理的瑕疵の指針案

国土交通省は、不動産取引における心理的瑕疵(かし)の取り扱いに関するガイドライン案を作成し、5月20日からパブリックコメント(意見公募)を開始しました。宅地建物取引業者の責務の判断基準として位置付けるもの。買主、借主に対して宅建業者が告げるべき事案と行うべき調査などを示しました。パブコメ募集期間は6月18日まで。国交省では幅広い意見を基に必要な検討と見直しを行い、今夏の公表を目指す考えです。
不動産取引に際して、当該不動産で過去に生じた人の死に関する心理的な瑕疵について、宅建業者が宅地建物取引業上負うべき責務の解釈についてとりまとめたのが同ガイドライン案です。
同ガイドライン案では、取引対象の居住用不動産において生じた人の死に関する事案を対象としました。実際に告げるべき事案は、「他殺、自死、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合」としました。買主・借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性が高いと考えられるためです。
他方、「自然死または日常生活の中での不慮の死」に関しては、自宅における死因の大多数が老衰や病死による死亡であることから原則、告知の必要なありません。ただし、取引対象の不動産で過去に人が死亡し、長期間放置されたこと等に伴って、いわゆる特殊清掃等が行われたケースでは原則として告知が必要となります。
同ガイドライン案では賃貸借契約について、告知の範囲を事案発生からおおむね3年間と定めました。

ガイドライン案作成の背景には、不動産取引に際して、当該不動産で過去に生じた人の死に関する心理的な瑕疵について、適切な告知や取扱いに係る判断基準がなく、取引現場の判断が難しいことで、円滑な流通、安心できる取引が疎外されているという指摘があります。そこで、国交省では有識者検討会を発足。議論を重ね、同ガイドライン案をまとめました。トラブルの未然防止の観点から、現時点において判例や取引実務に照らし、妥当と考えられる一般的な基準として整理しています。
宅建業者は、媒介・販売活動に伴う通常の情報収集等の中で、「売主・貸主や管理業者から人の死に関する事案の存在を知らされた場合」や「自ら認識した場合」に、買主・借主に対して告知の必要性を判断しなければなりません。告知の必要があるのは前述の通り、買主・借主が契約締結の判断に重要な影響を及ぼす可能性が高い「他殺、自死等」の事案を知った場合ですが、周辺住民への聞き込みやインターネットサイトなどで自発的な調査を行う義務はありません。また、留意すべきは、契約後の訴訟リスク等を回避するためにも、媒介を行う宅建業者は、売主・貸主に対して告知書への適切な記載を求め、これを買主・借主に交付することが望ましいとしています。

告知すべき内容と範囲については賃貸借契約、売買契約に係る事情の違いを考慮して分類しました。具体的には、賃貸借契約では事案の発生時期、場所、死因について貸主・管理業者に照会した内容をそのまま告知します。事案発生からの経過期間はおおむね3年間。自然死、不慮の事故死等のケースでも長期間の放置等によって特殊清掃等が行われた場合、事案発生からおおむね3年間は借主に告げるものとしました。また売買契約においては、告げるべき内容は賃貸借契約と同様。一方で、当該事案の存在を告げるべき範囲を検討するための判例や取引実務等が不足していることから、当面の間は調査を通じて判明した範囲で、買主に対して告げるものとしています。国交省では「実務視点での気付きなど、幅広い意見を求める」とし、必要な修正を加え、今夏の公表を目指します。

金綱 利幸

所属会社:
株式会社リアルテクト
所属会社のWEBSITE:
http://realtect.co.jp/
保有資格:
AFP(日本FP協会認定) 宅地建物取引士

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