固定資産税評価額とは?初心者でも簡単な調べ方をわかりやすく解説
「どうやったら調べられるんだろう?」
「固定資産税評価額ってどうやって決まるの?」
固定資産税評価額についてこのような疑問を持っている人が大勢います。
固定資産税評価額は税金を計算する際に基準となる価格のため、私たちが普段目にする購入価格や販売価格と一致することはほとんどありません。
このように、初心者にとって法律や税金は専門性が高く非常に難解です。
本記事では、固定資産税評価額の概要や役割を確認しつつ、4つの調べ方と評価額が決定する仕組みについてわかりやすく解説します。
固定資産税評価額とは?
固定資産税評価額は、以下の順で考えると理解しやすいです。
- 固定資産税:所有している土地や建物にかかる税金
- 固定資産税評価額:固定資産税の金額を計算する際に、基準となる価格
- 固定資産税=固定資産税評価額×標準税率(1.4%)
少し回りくどいようですが、固定資産税の金額を求めるには、まず固定資産税評価額を知る必要がある、ということです。
固定資産税評価額が必要となるケース
所得税の計算の他にもさまざまな場面で固定資産評価額が必要になります。
例えば以下のようなものです。
- 不動産取得税:不動産を取得するときに支払う税金
- 都市計画税:所有する土地や建物が、都市計画区域内にある場合に支払う税金
- 登記免許税:不動産を登記するときに支払う税金
このように、固定資産税評価額は各税金の計算において重要な役割を担っています。
固定資産税評価額の3つのルール
固定資産税評価額には3つのルールが定められています。
- 固定資産税評価額は、各市区町村が決める(東京都の場合は都が算定)
- 3年に一度見直しが入る
- 土地の固定資産税評価額の目安は以下のとおり
土地:公示価格の70%が目安
建物:再建築価格の約70%、工事請負契約の50〜70%が目安
このようなルールとなっているため、固定資産税評価額に紐付いている税金は3年毎に金額が変わる可能性があるのです。
なお、「公示価格ってなに?」という点については、記事の後半でまとめて解説しています。
固定資産税評価額は土地の売却価格の目安にもなる
土地の時価はおよそ「固定資産税評価額÷70%」で算出した金額と言われています。
とても簡単なので、3,000万円の土地を例に計算してみましょう。
- 3,000万円÷70%=4,285万円
これは、固定資産税評価額3,000万円の土地の売却価格はおよそ4,285万円、ということです。
正確な数字ではないものの、所有している土地の時価を知りたい場合にはこのように簡単に目安を確認することができるのです。
課税標準額とは何が違う?
固定資産税評価額とよく混同されるのが「課税標準額」です。
結論から言うと「両者は別物」ですが、固定資産税評価額と課税標準額が同額になるケースがあるのが混乱を招いている原因でしょう。
- 建物の課税標準額=固定資産税評価額(同額)
- 土地の課税標準額<固定資産税評価額
上記のとおり、建物の場合は両者は同額となります。
土地の場合は特例措置や負担調整措置がある関係で、課税標準額のほうが少なくなります。
固定資産税評価額の調べ方4パターン
続いて、固定資産税評価額を知る方法について解説します。
なお、調べ方が簡単な順は以下のとおりです。
- 固定資産の課税証明書を見る
- 固定資産評価証明書を取得する(郵送が楽)
- 役所に行き証明書を発行するか、帳簿を閲覧する
- 固定資産税額から逆算する
「手間」という点では4も楽ではありますが、固定資産税額がわかる状況で固定資産税評価額だけがわからないケースは稀なので、上記の順位としています。
それでは手順が簡単なものから1つずつ見ていきましょう。
1.固定資産の課税明細書を見る
一番簡単な方法は、郵送で届く「課税明細書」を見ることです。
課税明細書の「価格」または「評価額」という欄に書かれている金額が、そのまま固定資産税評価額となります。
課税明細書は、4〜6月頃に納税通知書と一緒に届く書類ですが、項目名が異なるのは明細書のフォーマットが各自治体によって異なるためです。
各市町村のサイトで課税明細書の詳しい見方を掲載している場合もありますので、一度確認してみると良いでしょう。
2.固定資産評価証明書を取得
「固定資産評価証明書」とは、自分が所有している土地や建物の評価額を証明する書類です。
調べたい不動産の所在地を管轄している市区町村役場で発行してもらえます。
発行の方法は、直接役所に取りに行く方法と郵送で取り寄せる方法があり、それぞれの場合で必要になるものが異なるので注意しましょう。
郵送で取り寄せる場合
- 申請書(各市区町村のホームページからダウンロードできます)
- 手数料分の定額小為替
- 切手を貼った返信用封筒
役所に行く場合の持ち物
- 申請書(現地に用意されています)
- 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
- 手数料分の現金
役所で発行してもらう公的な書類なので、本人以外で固定資産評価証明書を取得できる人も限られます。
- 不動産所有者の同居家族
- 相続人
- 借地人
- 代理人
また、不動産の所有者以外の人が申請する際には委任状が必要となりますので、この点にも注意が必要です。
3.固定資産課税台帳を閲覧
「固定資産課税台帳」とは、課税の対象となっている土地や建物に関する様々な情報が記載された帳簿で、各市区町村役場に行けば閲覧できます。(東京23区の場合は、不動産所在地を管轄する区役所の都税事務所)
固定資産課税台帳は「閲覧のみ」となり持ち帰ることはできません。
どうせ役所に出向くのであれば、2の方法で固定資産評価証明書を発行してもらうほうが良いでしょう。
4.固定資産税額から逆算
もし固定資産税額がわかるなら、以下の方法で計算することもできます。
- 固定資産税額÷1.4
固定資産税額は「固定資産評価額×1.4」という計算式で算出されているため、逆の計算をすれば評価額を求めることができます。
正確な固定資産税評価額は自分で算出できない
上記4のケースを除き、基本的に固定資産税評価額を自分で算出することはできません。
後述しますが、固定資産税評価額は土地の面積だけではなく、立地や設備、建材など様々な要素で変わるからです。
これから購入する家の固定資産税評価額を知りたい場合
ここまでに解説した4つの方法は、自分で所有している不動産の固定資産税評価額を知りたい場合の方法です。
一方で、これから家を購入する場合に「他人名義の不動産」の固定資産税評価額を知りたいというケースもあるでしょう。この場合の調べ方は新築と中古で異なります。
- 新築物件の場合
新築の場合はモデルハウスやモデルルームなどに足を運び、担当者に聞くと大体の評価額を教えてもらえるはずです。
とはいえ、この段階ではまだ家が建っておらず登記もしていない状態だと思うので、あくまで「大体」の金額であって実際の価格とは異なる可能性がある点に注意しましょう。
- 中古物件の場合
中古の場合はすでに固定資産税評価額が確定しているので、不動産仲介業者の担当者に聞けば教えてもらえます。
固定資産税評価額の決まり方と基準
たとえば、床面積が全く同じ建物でも固定資産税評価額が異なる場合があります。
なぜこのような違いが生まれるかというと、固定資産税評価額の算出には面積以外の要素も影響するからです。
以下では、このような評価額の決まり方や基準について解説します。
固定資産税評価額はどのように決まる?
意外と知られていませんが、固定資産税評価額は「固定資産評価基準」というガイドラインに沿って自治体の担当者が1軒ずつ計算するという、至ってアナログな方法で算出されています。
冒頭でも触れたように、この評価額は3年に一度見直されます。
固定資産税評価額が決まるのはいつ?
1月1日時点を基準に決まります。
繰り返しになりますが、これは毎年ではなく3年に一度のスパンです。
土地と建物は別々に評価される
固定資産税と同じく、土地と建物は別物として扱います。
従って、土地と建物の所有者が違う場合はそれぞれの持ち主に納税義務が課されます。
また、建物には「経年劣化」の概念があるので、新しい建物と年数が経った建物では当然その価値が異なります。
一方、土地は経年劣化の概念がないので、経過年数は価値に影響しません。
ただし、地価は再開発や近隣に大型商業施設が建設されるなど、様々な外的要因の影響を受けて変動します。
構造・建材・設備の質でも税額が異なる
一般的に固定資産税評価額は、建てるときのコストに比例する傾向があります。つまり、建築費が高ければ評価額も高くなるということです。
- 鉄筋コンクリート造(RC造)>木造
- 高価な設備>一般的な設備
- 水回りの面積が広い>狭い
- トイレが2つ>1つ
「評価額」というくらいなので、よりコストが高い建物のほうが価値が高くなるのはある意味当然と言えるでしょう。
木造一戸建てとマンションはどちらが高い?
固定資産税の場合は、ほぼ同条件のエリアであればマンションのほうが高くなる傾向があります。なぜなら、固定資産税は土地よりも建物の割合のほうが大きいからです。
では固定資産税評価額はどうでしょうか。
結論は「ケースバイケース」で、一戸建てかマンションかは決め手になりません。
こちらの理由も前項で解説したことと同様で、建材や設備の質が大きく影響するためです。
評価額の申し出制度
もし決定された評価額に疑問を持ったり、不当な評価だと感じた場合は、各市町村に対して「不服審査」を申請できる制度があります。
とはいえ、根拠のない増額交渉のようなことができるというわけではありません。
各市町村(東京都は区役所)には、自分の不動産と同じエリアの他人が所有する不動産の固定資産評価額を閲覧できる「縦覧制度」というものが設けられています。
(これらの情報が載っているものを「縦覧帳簿」という)
つまり、縦覧帳簿を参照することで周囲の不動産と価格を比較することができ、その結果あまりにも価格差がある場合に再審査を申請できる、という具合です。
全く同じ土地に5つの価格がある
土地の評価額についてはやや複雑です。
土地の評価額はシチュエーションによって異なり、用途に合わせて以下の5つの価格が設定されています。
- 固定資産税評価額
- 時価(実勢価格)
- 公示価格(公示地価)
- 基準地価
- 相続税評価額(路線価)
1つの土地に対して5つの価格があることから、これを「一物五価」といいます。
固定資産税評価額を除く4つの価格について、それぞれもう少し解説します。
時価(実勢価格)
実際に取引が成立した価格のこと。
または周辺で成立した取引事例などから推定した価格を時価、または実勢価格と呼びます。
先述のとおり、固定資産税評価額はこの時価の70%程度が一般的です。
逆に固定資産税評価額がわかっていれば、時価を算出することも可能です。
なお、この価格は国土交通省のWebサイト「土地総合情報システム」で閲覧することもできます。
公示価格(公示地価)
国土交通省が毎年1月1日時点の地価を評価し、3月に公開している標準地の価格。
公示価格は全国で約3万か所の土地価格が対象になっており、金融機関の担保評価などに使われている価格です。
公示価格も時価と同様、国土交通省のWebサイト「土地総合情報システム」で閲覧可能です。
基準地価
政府の評価した公示地価に対して、基準地価は各都道府県が地価を評価した価格。
基準地価は毎年7月1日に公示されます。
全国で約2万か所が対象になっており、なかには公示価格と同じ場所を設定している場合もあります。基準地価は主に土地取引の指標として使用されています。
相続税評価額(路線価)
その名のとおり、相続税や贈与税を計算する際に基準となる価格。
国税庁が選定した標準地の道路の価格を基に、その土地の価格が算出されています。
この中には、固定資産税の計算に使われる「固定資産税路線価」というものも含まれます。
固定資産税評価額まとめ
以上、固定資産税評価額について解説しました。
その役割や他の税金との関わりを見ていくと複雑であることは否めませんが、固定資産税評価額を調べて確認するのは意外と簡単です。
また、固定資産税評価額を理解できれば、他の税金の理解が進み、自分で算出できるケースも増えてきます。
ブログ:
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徳本 友一郎
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- 株式会社スタイルシステム
- 所属会社のWEBSITE:
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- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書:
- 初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント
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